ロシアの後に控える中国。

連日、話題のウクライナ情勢ですが、
ロシア軍はついに超音速兵器を投入してきました。
これが世界初の超音速兵器の実戦使用例となります。
侵攻前、早々にロシア軍が制空権を支配すると言われていましたが、
今に至ってもロシア軍はウクライナ国内の制空権を獲得できていません。
超音速兵器の投入で一気に勢いづけたいという意志を感じます。

2018 Moscow Victory Day Parade 66
ロシア軍が使用したKh-47M2 キンジャールを運ぶMiG-31K
(出典:The Presidential Press and Information Office
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中国の動向

西側はウクライナ支援を行いつつ、
ロシアに対しては共同歩調で強力な経済制裁を行っていますが、
一方のロシアはロシア寄りの姿勢を示す中国に
ドローンの提供などの軍事支援を申し入れており、
実際、中国は対ロシア経済制裁に否定的であり、
世界第二位の経済大国である中国
西側の制裁の抜け穴になっている現状があります。
オンラインで行われた米中首脳会談で
バイデン大統領は中国のロシア支援をけん制しましたが、
今後のウクライナ情勢を占う大きな要素となることは間違いありません。

ロシアのウクライナ侵攻というインパクトで
米ソ冷戦時代に逆戻りした印象はありますが、
やはり新冷戦の主役は西側のアメリカと東側の中国であり、
経済的に力不足のロシアは今回の侵攻で
逆に圧倒的軍事力に対しても懐疑的な見方が広がりつつあり、
今後の情勢次第では中国が経済のみならず軍事的にも
ロシアを吸収してしまいそうな勢いさえ感じます。

岸田総理の初外遊

安倍元総理のマレーシア外遊に続いて、3月19日から21日にかけて
岸田総理はインドとカンボジアへ初外遊に出かけましたが、
その背景にはG7唯一のアジアとして
アジアでの対ロシア制裁網を構築したい思惑があります。
インドもカンボジアも西側でも東側でもない第三世界であり、
インドは経済的成長が著しく、
いずれは人口もGDPも中国を超すと言われる潜在的大国
またカンボジアはASEANの議長国であり、
ロシアによるウクライナ侵攻を議題に挙げながら
中国の海洋進出(台湾侵攻)を念頭に
アジアでの現状変更の試みに対して協力を取り付けたい所です。

しかしインドは民主主義国家でありながら、
ロシアとは歴史的な友好関係があるため、
中国同様にロシアへの制裁は消極的であり、国連のロシア非難決議案でも棄権しています。
特に軍事装備品の分野でロシアとのつながりが強いのですが、
この二国間関係にはお互いに長い国境を接する中国に対するけん制でもあります。
対中国という意味で言うと日本とインドも共通の問題があり、
これが日米豪印のクワッドの結成に繋がる訳ですが、
対ロシアとなると話が変わってきます。
日本は戦後のソ連侵攻を受けて北方領土を支配されていますが、
インドはロシアと国境を接していなければ領土問題も存在していません。
共同声明では一方的な現状変更に反対と表明しましたが、
インドに配慮してロシアと名指しで批判する事はありませんでした。
ロシアと友好関係を維持し続けるインドを
クワッドに繋ぎ止めるという部分では意味のある会談だったでしょう。
カンボジアでは国軍が支配するミャンマー問題についても協議し、
ウクライナ問題と併せて力による現状変更に反対する姿勢を示す機会でしたが
ここでも名指しを避ける共同声明となりました。

アジアにおける対ロシア圧力と言う部分では物足りない印象ですが、
少なくともG7における日本の役割を果たすというアピールと、
ロシアを批判しつつ、中国をけん制するという目的は果たされたと思います。

北方領土奪還に向けて

21日、ロシア外務省は
日本との平和条約交渉を中止すると発表しました。
岸田総理も以前、当面は領土問題などについて申し上げることは控えなければならない
と発言していましたし、この状況で交渉進展は望めない事は分かっていました。
元島民のビザなし交流なども一切停止され、
元島民の心境を考えると複雑な想いもあるでしょう。

プーチンは1960年の日米安保改定以来、
日ソ共同宣言の有効性を認めた唯一の大統領だったので
日本も平和条約交渉に前のめりになっていたところもありますが、
この考えは完全に捨て去る必要があります。
プーチン政権のロシアと平和条約を結ぶ事は今後一切ありません。

日本が軍事的オプションをロシアに対して使う事は考えにくいですが、
もしロシアが倒されてウクライナがクリミアを取り戻したのならば
当然、北方領土も返して欲しいという民意が沸くでしょう。
どういった戦後処理が行われるのかは分かりませんし、
現状はウクライナとロシアの二国間交渉ですが、
世界大戦となれば話は変わってきますし、
日本が欧米と共に講和交渉に参加するなど発言力を上げるためにも、
今のうちに出来る限り曖昧な態度は捨てて
全面的なウクライナ支援を行う必要があるのです。
国際的な経済制裁により追い込まれたロシアが
戦後に経済を立て直すために北方領土を投げ売りする可能性はあります。
今はロシアに対して最大限の圧力を与えるのが日本の国益です。
世界的な対ロシア制裁網が強まれば強まる程、
一帯一路で欧州との経済関係を維持したい中国は動きづらくなります。

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