2026年が始まりました。
2024年は能登半島地震と続く羽田空港地上衝突事故により、
お祝いムードに水を差す厳しい幕開けでした。
2025年は少数与党に転落し、トランプ次期大統領を控える
社会的不安感の中で新年を迎えましたが、
今年は天候にも恵まれ、社会的にも非常に穏やかな正月らしい正月となりました。
昨年、石破政権から久しぶりの保守政権である高市政権に代わり、
積極財政政策に市場は好反応を示し、「高市トレード」により株価は上昇。
この前向きな雰囲気は日本にとって非常に良かったと思います。
一方で2022年のロシアのウクライナ侵攻以来の
不安定な国際情勢は、未だ終息していません。
2025年の情勢
昨年、親イスラエル、親ロシアのトランプ大統領が復活し、
ウクライナやガザでの和平外交を買って出ましたが、
ウクライナでは合意に至らず、
ガザでは1月に停戦が結ばれたものの、
わずか2カ月で事実上崩壊し、完全停戦とは言えない状況が続いています。
イスラエルは国境封鎖によってガザのほとんどを掌握し、
停戦で相手の攻撃の手を緩めつつ、
「停戦違反」と言ってはハマス残党の掃討を正当化しています。
そして、ネタニヤフは狙いの的をハマスから
ハマスを支援するレバノンのヒズボラやイランのハメネイ政権に徐々に切り替えました。
ガザ紛争は2024年10月にはレバノン侵攻、
昨年6月にはイラン・イスラエル戦争へと拡大しました。
イランとイスラエルと言う軍事大国同士の直接衝突は
中東全域の平和と安定を脅かしました。
トランプ政権はイランの核の脅威の根絶を訴えるネタニヤフに応じて
バンカーバスターでイランの複数の核施設を攻撃しました。
最終的にはこの攻撃を持ってイスラエル、イラン双方が停戦に合意し、
大規模な戦闘は12日で終了しましたが、
イランでは昨年末より西側の制裁による物価高騰で
反ハメネイの反政府デモが広がりを見せており、
イラン革命により失脚し、アメリカに亡命している
パフラヴィー朝のパーレビ元皇太子が
体制転覆を呼びかけるなど火種は依然くすぶり続けています。
また、4月から5月にかけて
領有権を争うカシミール地方で起きたテロ事件をきっかけに
インドとパキスタンという核保有国同士による武力衝突が起こり、
7月にも同じく領有権を争う国境紛争からタイとカンボジアが武力衝突。
いずれもトランプ大統領の仲介により停戦となりましたが、
ヨーロッパで始まった武力による現状変更の試みは、
中東から南アジア、東南アジアへと波及し、
その波は我が極東に刻一刻と近づいている地政学的事実からは逃れようがありません。
事実、高市政権発足直後の11月から
台湾を巡って日中の外交摩擦が過熱しているのは、
高市発言一つに集約されるものではなく、
これら地政学的ダイナミズムの延長線にあると言えます。
トランプ大統領はノーベル賞発表を前に
「9カ月で8つの戦争を止めた」と自画自賛しました。
この発言自体には賛否がありますが、
10月に行われた日米首脳会談で、
高市総理が「トランプ大統領をノーベル平和賞に推薦する」と発言したのは
アメリカの抑止の力を信じているからです。
就任当初の高市総理は唯一の同盟国であるアメリカのトランプ大統領と
蜜月関係を強調する事で、その後の日韓、日中首脳会談を成功させました。
アメリカのベネズエラ侵攻
しかしながら、年明け早々に世界を驚かせたのは
アメリカのベネズエラ侵攻です。
1989年のパナマ侵攻以来の大規模なアメリカによる直接的な武力介入です。
1月3日未明、アメリカ軍は大規模な軍事作戦
「オペレーション・アブソリュート・リゾルブ(断固たる決意作戦)」として
ベネズエラに武力攻撃を実施し、
麻薬密輸の容疑としてアメリカ司法の裁きを受けさせる名目で
現職大統領ニコラス・マドゥロと妻シリア・フローレスを拘束し
アメリカに身柄を移しました。

昨年、ノーベル平和賞を受賞したのはトランプ大統領ではなく
ベネズエラの野党党首である民主運動家のマリア・コリナ・マチャド氏でしたが、
ベネズエラは以前より、マドゥロ政権下で独裁が進み、
人権侵害や反体制派の弾圧など国際的批判が集まっていました。
また、アメリカは昨年8月から南カリブ海における軍備拡張を進める中で
国内にフェンタニルを始めとする
麻薬を流出させている密輸船を警戒していました。
トランプ政権はこの麻薬密輸組織を動かしているのがマドゥロ政権であると敵対視、
アメリカ軍は麻薬密輸船だとして、相次いでベネズエラ船を攻撃、
アメリカとベネズエラの緊張関係が続いていました。

そして、ベネズエラは有数の石油埋蔵国でもあり、
アメリカの裏庭であるカリブ海で中国はベネズエラに接近し、
中国製の武器を輸出し、石油取引を行っていたという背景もあります。
域内から中国を追い出すため、石油タンカーの拿捕から
最終的にはベネズエラの石油利権の完全掌握を狙ったものでした。
一連の出来事は西半球中心のトランプ流のモンロー主義が表面化した出来事といえます。
しかし、一国の国家元首を拉致するという前代未聞の出来事は
どういう理屈を付けようが、国際法違反の指摘から免れることはできません。
アメリカ帝国の復活
ベネズエラ侵攻後、トランプは新大陸の覇権について
その野望を隠さなくなってきました。
アメリカはベネズエラを保護国化すると宣言し、
隣国のコロンビアにも警告しました。
また、カナダのカーニー首相はスイスで行われたダボス会議で
「大国に迎合しても安全は買えない」と
アメリカ抜きの中堅国による安全保障を提唱し、
最も密接な2国間関係と言われた米加関係は急激に冷え込みました。
トランプ大統領はカナダが中国との貿易協定を実行に移した場合、
カナダに100%の関税を課す考えを示しました。
そして、デンマーク領グリーンランド領有についても改めて意欲を表明。
欧州各国はこれに反発、グリーンランドの要請を受け、
デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、
フランス、ドイツ、オランダ、フィンランド、英国が少数の派兵を行いました。
トランプはこれら欧州8カ国からの輸入品に対して
アメリカがグリーンランドを購入できるまで2月から10%の追加関税をかけ、
6月より25%に段階的に引き上げると表明。
後に、トランプ大統領はNATOのルッテ事務総長とのやり取りの中で
グリーンランドの将来の枠組みに合意し、関税を撤回したものの
米欧関係に深い傷がついたことは否めません。
極めつけに、トランプ政権は国連関連の31組織を含む
計66の国際機関や条約からの脱退・資金提供停止を表明しました。
その規模や性格の差はあれど、
アメリカはもはや西側の主導者、法の支配の信奉者ではなく、
ロシアや中国と同じ、
新帝国主義国家になったと言われても仕方がありません。
日本のゆく道
日本はこれまで「法の支配」という世界のルールに基づいて
開かれたインド太平洋(FOIP)などで、
日米、G7の枠組みで中露北による現状変更の試みに対抗してきましたが、
その盟主たるアメリカまでもが国際法を無視し、
力による現状変更を引き起こしているのが現状です。
日本の立場は非常に複雑になりつつあります。
昨年、世界各地で火種が爆発し、短期間で停戦になったケースがありますが、
これは国連による国際秩序が戦争を止めたのではなく、
アメリカの抑止力を背景とした外交によって表面的な停戦に至っただけです。
アメリカ、ロシア、中国という常任理事国自ら国連を否定し、
法の支配の根拠とする国際法そのものが有名無実化、
その影響力は事実上無くなりました。
結果、均衡が少しでも崩れれば爆発するという危うい世界となっているのです。
この困難な中において、高市総理は日韓シャトル外交の一環として
昨年10月の韓国慶州での初会談に続き、
1月13日、李大統領の提案に応えて地元奈良に李大統領を招きました。
直前の1月4日に日本と対立を深める中国、
習近平が日米韓の切り崩しを図り、
突如、新年初の首脳会談として、李大統領を北京で国賓級にもてなしましたが、
「一つの中国政策を支持する立場に変更はない」と定型的発言を行うのみで
日中の紛争については「一方の肩を持つことは対立を激化させる要因になる」
と取り合わず、李大統領は終始冷静でした。
一方、高市総理は李大統領とK-POPでドラムセッションを行うなど
中国に対して、高市外交ならではの演出で友好関係を見せつけました。

(出典:内閣広報室)
また続く1月15日には
イタリアのメローニ首相が愛娘を連れて初来日し、
高市総理は49歳の誕生日を日本で迎えたメローニ首相を祝福し、
サンリオ好きという娘に対してサンリオグッズをプレゼントするなど
G7の女同士で交流を深めました。
イタリアはグリーンランド買収問題で米欧の対立が深まる中でも
冷静な態度を取り、派兵を行いませんでした。
そして軍事安保分野では日本とイタリアはイギリスと共に
新世代戦闘機共同開発(GCAP)の仲間でもあり、
安全保障上の結びつきも非常に強い存在となっています。

(出典:内閣広報室)
韓国もイタリアも半島国家であり、
アメリカ、日本という海洋国家とEU、中国、ロシアという大陸国家の間での
バランス外交には共通したものがあります。
日本の未来を決める衆院選挙
新年の外交日程を終えた高市総理は
1月19日に突如として衆議院解散を宣言し、
23日に解散、投開票まで16日と言う史上最短の選挙戦が始まりました。
毎度解散は批判されるのが常ですが、
解散権は総理大臣の専権事項であり、最大かつ唯一の武器です。
政権支持率が高いとはいえ、衆参両院で少数与党の現状は変わりませんし、
新年早々、アメリカのベネズエラ侵攻と言う新たな変数が加わった中で
しっかり腰を据えて外交安全保障を含め、
様々な政策を実行していく必要があります。
今年の冒頭に解散に打って出て
政治空白を最小に抑えたこの決断は最も合理的と言えます。
日本はまだ法の支配による秩序の回復を諦めてはいませんが、
来年2027年と噂されている中国の台湾侵攻を前に
覚悟を決めて行動をしていく、
2026年はそういう1年になると思います。





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