神々の島国の奇跡と悲劇

日本は世界有数の先進国でありながら
国土の約70%が山岳地帯であり、約67%の森林率である。
かつて古代文明が栄えた地中海沿岸や
中近東、インド、中国などの大陸はほとんど砂漠となり
近代文明の発祥地である欧米が
新たに砂漠化の懸念にさらされている中で日本は緑を維持している。
これは奇跡的なことである。

世界の砂漠
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自然の恵みと天災

西洋が石の文化だとすれば日本は木の文化である。
西洋は石を削って永遠に崩れない建物を作り森を切り開いたが
日本は木造の家を立てて、伊勢神宮でさえ20年毎に建て替えるのである。
多くの民族にとって自然を開拓することが生存圏を拡大することであったが、
大和民族は古来から自然と共存することを考えてきた。

神社の杜は「森」のことである。
キリスト教的世界観では家畜や植物などの自然は
人間のために唯一神「GOD」から与えられたものとされる。
だが「神道」は自然を神そのものと崇めてきた。日本はまさに万物に神が宿る神々の島である。
古代ローマ文明は水道や道路を広げて大発展を遂げたものの
キリスト教の布教、帝国の拡大とともに行われた大規模な森林破壊の末、
文明が後退し、中世の暗黒時代を迎えることになるが、
日本は各地に神社を作り守ることでどんな街でも緑があり、
あの大東京でさえ皇居中心に大きな森ができているのである。
これは近代には大日本帝国の支配地域にも及び
荒野だった朝鮮半島や満州大陸に緑を蘇らせた。

こういった文化が築き上げられた根底には悲しい一面もある。
台風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火などの
自然災害は世界的にも多く毎年のように犠牲者を出すのだ。
これは悲劇的なことである。

日本人は自然災害を「天災」と呼ぶ。
周りを海に囲まれた海流の合流地点であり、
海底のプレートがぶつかり合う境目に日本列島は存在する。
それは美しい四季や自然の恵みを与えると同時に厳しい自然の脅威も与えてきた。
神道における荒魂(あらみたま)・和魂(ににぎたま)のように
日本の神々に善悪二面の性格があるのはこうした歴史的背景がある。
海外で一度災害が起こると混乱の中で略奪や暴動が蔓延り、無秩序が生まれる。
一方で日本では秩序が保たれるどころか、より強固なものとなる。
これは繰り返し起こる災害の歴史の中で鋼のように鍛えられてきた日本文化であると言える。

平和国家と人災

「天災」が神(自然)が起こすものであれば「人災」は人が起こすものである。
最大の人災戦争による「戦災」であろう。
日本は長い歴史の中で幾度の戦災を経験している。

縄文時代は比較的平和だったと言われているが
弥生時代後期(2世紀後半)には
倭国大乱と呼ばれる戦乱があったことが、中国の史書で記されている。
古代大和政権は勢力圏を広げるために東北や九州などに進攻し、
朝鮮半島にも支配地域を広げた。(三韓征伐)
大和政権は冊封から抜けて中国王朝と朝鮮半島で対立し敗北。
半島から撤退したことで以後の日本は大陸の歴史とは違う島国としての文化や歴史を歩む。
遣隋使と白村江の戦い参照)

中世に入ると律令国家から王朝国家へと変貌する中で
朝廷内の抗争が起こり、武士が台頭する。
武士によって貴族支配が終わり武家政権の鎌倉幕府ができる。
鎌倉時代から江戸幕府まで日本は朝廷と幕府の2重構造の統治体制となる。
日本の国防意識の形成で決定的な役割を果たしたのが
日本最初の国難とも言われた「元寇」である。
海を越えてきた外国勢力による侵攻は「神風」と呼ばれた嵐によって救われた。
この時、自然災害は日本に味方した。
これ以降、元寇を予言させた日蓮の日蓮宗が興り、
日本を神の国とする「神国思想」が生まれた。

元寇の後、権威の低下した幕府に対して
後醍醐天皇が再び権力を取り戻すべく倒幕を行うが、
倒幕後、天皇親政を目指したため武士と対立、
仲間の離反に会い2つの朝廷が存在する南北朝時代に入る。
その後統一され鎌倉幕府に次ぐ武家政権の室町幕府ができる。
鎌倉幕府に倣って全国に守護大名をおいて地方支配を進めるが、
「応仁の乱」で幕府の権威が失墜すると
各地の守護大名は戦国大名となって日本統一を目指して互いに戦い始めた。

近世西洋の南蛮文化が入り、
外来の武器(鉄砲)を手に入れた織田信長が統一寸前に迫るが、
皇室を軽んじ、自身が日本の王になろうとしたため
手下でありながら朝廷派であった明智光秀の謀反に会い本能寺で死亡。
その後、明智光秀を討伐した豊臣秀吉により日本はついに統一される。
秀吉の死後、再び内紛が起こり、
「関ヶ原の戦い」に勝利した徳川家康によって江戸幕府が誕生する。

近代に入り江戸幕府は鎖国体制を敷くことで
外国の影響力を防いで約260年の間、
大規模な対外戦争や内乱のない「奇跡の平和」を実現する。
これは世界的にも極めて異例であった。
その頃、全世界は欧米列強による植民地化の波に飲まれていた。

日本が独立を保って奇跡の平和を維持できた理由はいくつかある。

権威と権力を分断させる統治体制
倒幕して天皇親政を目指した後醍醐天皇や、天皇を倒して自ら皇位を得ようとした織田信長それぞれ謀反に合い失敗している。互に牽制しあい監視しつつ政治的中立を保ち独裁者を出さないシステムが構築される。
②島国という地理的条件
自然の防壁となり外国勢力からの進撃を食い止めた。例えばモンゴル軍は強力な騎馬軍団でユーラシア大陸全土にその名を轟かせたが海を隔てた日本に馬を連れて行くことはできず地の利のある鎌倉武士に惨敗する。当時の技術では海を越えるのも命懸けである。また鎖国による海禁政策を取ることで西洋の植民地侵略の時間稼ぎができた。

江戸時代の日本は華やかな文化が発展し、人々は平和を愛した。
しかし科学文明の到来は自然の防壁を簡単に越えてきた。
ペリーの黒船来航により鎖国は解かれ、徐々に外国勢力の紛争に巻き込まれるようになる。
権威の低下した江戸幕府は大政奉還により政権を朝廷に返上するが、
戊辰戦争によって幕府が滅ぼされ、明治天皇を立てた薩長新政府による明治維新を迎える。

明治時代となり、日本は西洋化を目指すとともに
欧米植民地支配に対抗するため、
再び朝鮮半島、そして大陸へと海外に目を向けざるを得なくなり
清やロシアといった大国相手に近代戦争を経験する。

大正時代に入ると近代国家が成熟し、
普通選挙や政党政治など民主的な大正デモクラシーを迎え、
第一次世界大戦後は平和共存に向けて国際協調路線となった。

だが昭和時代はロシア革命による共産主義への対抗から再び抗争となり、
世界恐慌に続けて第二次世界大戦が勃発。世界のブロック化が起こる。
この頃、政党政治の行き詰まりから昭和維新によって天皇親政を目指す
皇道派の陸軍将校らによるクーデター226事件が起こるが、
昭和天皇自らが将校らを反乱軍とし鎮圧を指示したため未遂に終わる。
その後も政府の意図しないクーデターや中国大陸での戦闘が起こり、
ついに政党は解散され大政翼賛会が起こる。
国民の支持は満州国を建国し、権益を確保した軍部に集まり、
連盟の脱退により国際的孤立化を深めた日本は中国政策の違いから米英との対立となり、
自存自衛とアジアの欧米植民地解放を掲げ大東亜戦争に至る。

当初、周辺のアジア太平洋地域を次々と制圧するが、アメリカの物量を前に次第に追い詰められる。
戦災の脅威は海のみならずからも訪れ、サイパン陥落以後は制海権、制空権を相次いで失い、
B-29爆撃機による連日の空襲により街は焦土化し、国土に壊滅的な被害を与えた。
ドイツ降伏後、日本は一国で全世界と対決することになり、
元寇再びという危機感を持って「神風」特別攻撃隊を編成し体当たり攻撃を行うものの
奇跡は起きず、広島、長崎の原爆投下をもって敗戦を経験する。
大東亜戦争は銃後の民間人を巻き込む悲惨な国家総力戦だった。

日本が悲劇の破滅に至った原因もいくつかある。

権威と権力を分断させる統治体制
政府、陸軍、海軍など意見の食い違いや国家としての責任の所在がハッキリしない状況は中央の意思とは別に現場の判断が優先されたり軍部の行動を後から政府が追認するような事態を引き起こした。一つの判断ミスから修正ができず、結局誰も暴走を止める事ができなかった。統帥権干犯の問題も顕著。
②島国という地理的条件
日本は近代文明で重要な石油石炭など化石資源の少ない島であり、1億国民を養うためには経済活動の活発化と、その土台となる土地と資源は必須である。経済制裁や移民規制を行って島に日本人を閉じ込めて海上封鎖をしてしまえば近代日本は終わる。それを防ぐために隣の朝鮮半島や中国大陸に進出し、独自に資源を確保するため東南アジアに行かざるを得なかった。

奇跡の平和も悲劇の破滅も同じ原因。
奇跡と悲劇は紙一重であり、日本はこれを繰り返してきた。

宿命の民族

未曾有の大戦や原爆投下を経験し、
戦後、再び平和国家を目指し歩みだした日本。
70年間対外戦争を経験していない事も世界を見れば奇跡的なことである。
しかし、この間でもテロや相次ぐ自然災害の被害を受けており
2011年、3月11日には史上最大の天災東日本大震災史上最悪の人災福島の原発事故も起こった。 (大量破壊兵器の実験場参照)

そして中国や北朝鮮は核ミサイルを日本に照準を合わせている。
国防は今や海、空を超えて宇宙規模になっており、
島国という地理的条件はもはや有利に働かず、一国では平和を維持できない状態となっている。
この平和が江戸時代のように260年続く保証はない。尖閣事件第2の黒船となるかもしれない。

神によって運命づけられたとしか思えない歴史の数々、
日本人はユダヤ人に匹敵するほどの宿命の民族なのかもしれない。 (ユダヤと日本参照)

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