第5次中東戦争。

2月28日、アメリカとイスラエルが共同で
イランに対して大規模な武力攻撃を始めました。
イランの最高指導者であるハメネイ師が爆撃によって殺害されたことから
完全にイスラム政権の体制転覆を狙ったものであり、
昨年までの攻撃とはレベルが違います。
今度は12日では絶対に終わらない、
イスラエルとイランの国家存亡をかけた戦いの始まりです。

イランは報復としてイスラエルのみならず、
サウジやUAEにある米軍関連施設もミサイル攻撃し、その脅威は中東全域に及びます。
親イラン組織のヒズボラもイスラエルへ応戦し
イスラエルは2024年の侵攻に続き、再びレバノンへの地上侵攻を開始しています。
これはイラン戦争というより
中東世界を丸ごと飲み込む第5次中東戦争が始まったも同然です。

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オリンピック後の奇襲

1月下旬からアメリカは大規模艦隊を中東に集結させており、
攻撃が近いと噂はされていましたが、
アメリカとイランは直前まで核協議を行っている最中であり、
いつものトランプ流の軍事力を誇示した圧力外交と考えられました。
直近のスイス、ジュネーブでの話し合いでは前進があったと見られ、
双方の協議者の和やかな様子まで出ている状況でした。

次の協議の日程まで決まっていたのに、
ミラノ・コルティナオリンピック閉会を待っていたかのようなタイミング、
4年前のロシア軍によるウクライナ侵攻同様、またしても
オリンピックが終わり、パラリンピックが始まる間に攻撃は実行されました。

イスラエルの狙い

背景にはイスラエルのネタニヤフの狙いがあります。
それはイスラエルの作戦名でも分かります。
昨年はライジング・ライオン(立ち上がる獅子)作戦と名付け、
今回はライオンズ・ロアー(獅子の雄たけび)作戦と名付けています。
これらは連続した計画です。

ライオンとはパフラヴィー朝時代のイランの象徴であり、
イラン国民に対してハメネイ・イスラム政権を倒して
王政復古による体制転覆を促しているのです。

第一段階が昨年の大規模攻撃でした。
トランプがネタニヤフに応じて
イランの核関連施設をバンカーバスターで破壊した後に停戦合意。
戦闘は12日で終了し、一旦は休戦となりましたが、
昨年末からイランでは西側の制裁に起因する物価高から反政府デモが起こり、
これをイスラエルが扇動しました。
そして今回第二段階でまさに「雄たけび」を上げ
牙をむいたライオンがハメネイを倒すという物語なのです。

ネタニヤフは昨年から
イスラエルに対する脅威が取り除かれるまで攻撃を続けると明言しており、
直接的にはイランの核開発をやめさせることですが、
核施設へのバンカーバスターの攻撃では満足しなかった
イスラエルに対する脅威は革命イランそのものだったのです。

殺害された最高指導者ハメネイ師
(出典:Khamenei.ir
アメリカ亡命中のパーレビ元皇太子
(出典:European Union, 1998 – 2026)

この流れのおぜん立てをアメリカは行ってきました。
イラン革命以来、イランとアメリカは長年に渡り対立しており、
経済制裁により、幾度となく通貨安やインフレによる経済難を起こして、
民衆の不満をイスラム政権に集中させ、反体制運動を焚きつけてきましたが、
今回、今までと違うのはイラン革命以来アメリカ亡命中の
パフラヴィー朝の元皇太子パーレビ氏
積極的に安全圏であるアメリカからメディアを通して
イラン国民にイスラム政権に対する武装蜂起を呼びかけた事です。

イスラエルファースト

昨年のイランへの奇襲攻撃はイスラエル単独のものでしたが、
今回は最初からアメリカ軍も攻撃に参加しています。
アメリカ側ではエピック・フューリー(壮絶な怒り)作戦と名付け、
中東における最大にして最後の障害を除去しようとしています。

アメリカにとっては2003年イラク戦争以来の
本格的な戦争になると考えられますが、今のところは地上軍は派遣しない方針です。
イラク戦争では国連決議に反して
フセイン政権が大量破壊兵器の保有しているとしてイラク攻撃を始めましたが、
最終的に大量破壊兵器は見つからなかったため、
その後のイラクの混乱も含めて、アメリカの世論としても評価されません。

それを踏まえてか今回は核ミサイル開発問題に加え、
ハメネイ政権によるイラン国民に対する弾圧をやり玉に挙げて
攻撃を正当化していますが、
ベネズエラの件と同様に、やはり他国の国家元首を殺害し、
外国から一方的に国家転覆を誘発させるという試み
内政干渉であり国際法違反である事に疑いの余地はありません。

ルビオ国務長官はイランに攻撃の予兆があったと指摘していますが、
イスラエルを認めない革命イランは
たしかにイスラエルにとっては潜在的な脅威であり、
昨年は大規模なミサイル攻撃にもさらされているので
攻撃に踏み切るのはまだ理解できますが、
イランはアメリカに届く長射程のミサイルを持っていません。
アメリカにとって、
自衛権を発動するまでの危機的状況であったかは議論の余地があります。

昨年の12日間戦争でネタニヤフから
ハメネイ師暗殺計画を聞かされたトランプはそれを拒否したとされますが、
今回打って変わって、ハメネイ師殺害という一線を越えた事は
もはやアメリカ・ファーストではなく
イスラエル・ファーストでしかありません。

見えない出口戦略

パーレビ元皇太子が呼びかけ、
初日にハメネイ師を殺害したにもかかわらず体制転覆には至っていません
これはイラン国民がハメネイ政権を拒絶していると宣伝する
アメリカやイスラエルの主張が誤りであり、
大半のイラン国民は体制転覆を望んでいない証左です。

テレビではハメネイ師死亡を喜び、
アメリカとイスラエルに感謝するイラン人の報道もありますが、
ほとんどが海外の西側で生活基盤を持っている人々です。
パーレビ元皇太子も革命時は19歳で人生の大半をアメリカで過ごしており、
イラン国民には全くと言っていいほど支持されていません
実際にイランに住んでいる、
イランの選択に責任を持つ人々が身内を殺されて喜ぶはずがありません。

たしかに革命後のイランの政治体制は
一応の大統領制を取り選挙が行われるものの、あくまで行政の代表者であり
三権すべてを掌握しているのが最高指導者のハメネイ師です。
専制主義的な側面がある事は事実であり、
厳格なイスラム国家として宗教裁判の名の元、人権侵害が行われている面もあります。

しかし、北朝鮮のような完全な独裁国家ではなく、
また他の中東諸国と比べ、
西側の制裁がある中でもこれまで、国内経済は非常に安定していました。
それは国民の大半がペルシャ人でシーア派であり、
民族も宗教も比較的まとまっている一体感が、この国を強固にしていたのです。

トランプ大統領は「次の指導者は現政権下で出すべき」と発言していますが、
次の指導者候補は爆撃により次々と殺害されています。
アメリカやイスラエルは
自らに従順な指導者が現れるまでこれを続けるつもりかもしれません。

アメリカは長期戦を覚悟しなければなりません。
1978年のイラン革命から50年近く
安定的な国家運営を行ってきたイスラム政権に対して、
アメリカやイスラエルの言いなりにさせるのは至難の業であり、
完全にそれを達成するには
やはりイラク戦争同様に地上軍による占領が必要でしょう。

ただ、最強のアメリカ軍とは言え、
イランはイラクのように簡単に占領できるような国ではありません
2003年のイラクは既に湾岸戦争後のあらゆる経済制裁や国連決議によって
軍事力も疲弊しており、国土の大半も平野にあり侵攻が容易でしたが、
イランは、はるかに軍事強国であり、
国土も高い山脈に覆われた山岳国家で攻略が非常に難しい。
しかも、レバノンのヒズボラやイエメンのフーシ派など
中東各地に親イラン組織が存在しており、彼らによるテロ活動も頻発するでしょう。
アメリカ史上最長の20年に及んだアフガン戦争よりも長期化する恐れがあります。
なぜアメリカの若者が
イスラエルのために血を流さなければならない
のでしょうか?

まとめ

SNSではAIによるフェイク映像が大量に拡散されています。
今までにないほどの情報操作が行われていると考えるべきで、
冷静に情報の信ぴょう性を見る必要があります。

この戦争は長期化する恐れがあり、
日本にとっては全く対岸の火事ではなく、エネルギー安全保障上の危機です

日本が輸入する原油の80%以上がホルムズ海峡を通って運ばれますが、
イラン革命防衛隊は海峡の封鎖を宣言し、
世界中の石油タンカーがペルシャ湾で足止めを食っています。
6年前に恐れていたことが現実になってしまいました。

高市内閣は南鳥島でのメタンハントレード採掘
実用化に向けて動き出していますが、これは未来への投資であり、
すぐに中東の石油の代替にできる話ではありません。
国内の備蓄は254日分との事ですが、
多角的なエネルギー外交を進めるべきでしょう。

やはり高市総理が2月に衆議院解散を行ったのは
日本のインテリジェンスも中東危機を察知していたからではないでしょうか?
ここで与党が大勝できたかどうかで、今後の外交政策も大きく変わったでしょう。

引き戻せない戦争が始まってしまったことを受け、
やはり何度も考えてしまうのが安倍元総理が存命であれば
このような決定的破壊は避けられたのではないかという事です。

そもそも論で言うとイラン核合意を一方的に離脱したのは
一次政権時代のトランプ大統領であり、
イランが再度核開発に舵を切った原因はトランプでした。
そんなトランプを手懐け、
イラン危機が迫る中、危険を顧みず革命イランに乗り込み、
ハメネイ師と対面し、中東和平に尽力した安倍総理は、
まさに中東にとっては平和の使者でした。
ハメネイ師を救う唯一の人物だったでしょう、

昨年末より、対日圧力を強める中国にとっても
今年の年初にベネズエラ、3月にはイランと
相次いで石油の輸入先をアメリカに抑えられており、
中国もエネルギー危機に直面しています。
関連して台湾に対する軍事的威圧行動が急激に減っており、
アメリカの一連の行動は
2027年と噂される中国の台湾侵攻の野望を挫くためのものかもしれません。
実際にトランプ大統領は習近平を前に
「台湾侵攻を行えば北京を爆撃する」と警告しています。

これが日本にとって良いか悪いかはまだ判断できません。
石油の中東依存については中国よりも日本の方が深刻です。
また、3月末にトランプ大統領が訪中し、
習近平国家主席と米中首脳会談が行われることから
ここで日本を頭越しに何らかのディールを行う可能性があります。
なので、3月19日に高市総理が訪米し、
ワシントン行われるトランプ大統領との日米首脳会談は非常に重要です。
高市総理にはぜひ安倍元総理の遺志を継いで
国際平和に向けて尽力していただきたいと思います。

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