北朝鮮の存在価値。

Flag of North Korea

今年に入ってからの国際ニュースで
サウジとイランの断交と共に話題に上ったのが北朝鮮核実験です。
北朝鮮は6日、原爆より強力な水爆実験の成功」発表。
2006年、2009年、2013年に続き4度目となる核実験です。

北朝鮮といえば2014年に
「拉致被害者再調査」で合意したストックホルム合意がありました。
日朝の接近はその後の日中、日韓関係の改善にある一定の効果を与えましたが、
結局、拉致問題は解決されずじまいです。
そして北朝鮮にとって核は対アメリカ戦略なのです。
長射程のテポドンはアメリカ本土も射程圏内に入るので
この核兵器による脅しによって金正恩政権の保全
つまり朝鮮戦争終結への譲歩を引き出したいのです。

核実験は金正日政権時代から行われていましたが
徐々にエスカレートさせ今回はついに水爆実験を発表しました。
周辺国はデータから水爆説は懐疑的でハッタリだとする見解が占めていますが、
問題は実験を強行した金正恩政権の内情でしょう。

ほとんどの共産国が自由経済を取り入れているのに対して
北朝鮮は完全な統制経済であり、偏った資源投入によって疲弊しています。
それに加え、2011年に金正日総書記が死去し、
金正恩という若い指導者を快く思ってない勢力も存在し、
政権内部でも権力抗争が起こっています。
水爆開発を強調することは対米圧力であると共に
党内、国内統制を強化する狙いがあるのです。

たしかに核実験強行は国際的孤立化に進むもので
北朝鮮は自らの首を絞めていると言えますが
「拉致」のカードを使い切った北朝鮮には
「核」一枚しか残されてない事も事実です。

いつ崩壊してもおかしくない北朝鮮ですが、
今回の実験は北朝鮮よりも
むしろ東アジアの周辺国に大きな意味があった気がします。

通常、北朝鮮は中国にとっては共産主義の仲間であり、
日韓にとっては朝鮮戦争や自国民拉致を行った敵国です。
しかし、「北朝鮮問題」において
中国はアジアのリーダーを自称する立場として
核開発も金一族の世襲も容認できない側面があり、
平和主義を標榜する日本は
平安法審議の中でも仮想敵として名指ししたように
右左共通のはけ口となってます。
また日本とアメリカから見放され
孤立化する韓国にとっては当事国問題です。

Mansudae Grand Monument 08
親子三世代に渡る金一族の偶像化(出典:Nicor)

つまり、北朝鮮に非難を集中させることによって
中国は南シナ海などにおける批判を遠ざけて
東アジアにおいて再び影響力を誇示できます。
常任理事国である中国の協力には日米も賛同せざるを得ない。
日本は防衛力向上の正当化、
韓国は対日対米関係改善のきっかけにする事ができる。

一方、北朝鮮の崩壊が現実になれば
中国にとっては共産党支配の連鎖的崩壊に繋がりかねないし、
日韓にとっては難民による更なる経済的負担が待っている。
北朝鮮が暴走すれば朝鮮戦争が再開され
ソウルや東京が火の海になる可能性も否定できない。
力の均衡が破られ、
アジアの地図が大きく変更されるのは間違いないでしょう。

北朝鮮は東アジア最大の不安定要素と言われていますが
現在の交錯する極東情勢を鑑みれば
皮肉にも安定をもたらしていると言えるかもしれません。
各国の思惑の上で存在を認められているのが北朝鮮です。
しかしそれに苦しめられているのは一般朝鮮人であり拉致被害者なのです。

明日行われる中華民国(台湾)総統選挙から始まり
4月に韓国総選挙、5月にフィリピン大統領選挙
7月に日本でも参院選(18歳投票権開始)が行われ
そして、11月アメリカ合衆国大統領選挙が行われます。

台湾は独立志向の民進党による政権交代が濃厚で、
韓国では核武装の議論も加熱しています。
北朝鮮問題や中台問題など2016年は
東アジア太平洋地域の政治がダイナミックに動く可能性が高いです。

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