ミャンマー問題。

お久しぶりです。
安倍・トランプ時代が終わった途端に投稿数が落ちてしまい申し訳ありません。
たまたま個人的に多忙になったタイミングという事もありますが、
何だかんだで安倍・トランプ時代は
外交が活発に揺れ動いた時代だったなと思います。
昨年から続く新型コロナウイルスによるパンデミックが常態化してしまっており、
人との交流が制限される中、
当然外交も鈍化しており、何となく政治的にはパッとしない時期が続きました。

一昨日、東京で日米2+2の会議が対面で行われ、
4月には菅総理の訪米が予定されているという事で
非常事態宣言解除を目前に
ようやく2021年の外交が始まったという感じです。
今回の2+2にはアメリカから国務長官と国防長官が参加。
バイデン政権の閣僚の初の外国訪問であり、
会議後の共同声明では中国を名指しで批判し、
中国海警局(日本における海上保安庁)に外国船舶に対する
武器使用を含む権限の拡大を認める中国海警法を巡って、
アメリカは対日防衛義務の尖閣での適応を改めて確認し、
日本は日米同盟強化のための能力向上を宣言しました。
親中派と見られていたバイデン政権ですが、
トランプ政権よりも踏み込んだ強いメッセージです。
それほどまでにパンデミックの裏で
中国は看過できないほどに海洋進出を強めていたのです。

さて世界中がコロナ禍に飲み込まれている間に
日本でも最近、アイヌ問題が取り上げられていますが、
各国では国内問題が激しくなっている側面があります。
トランプが選挙戦で執拗に新型コロナウイルスを
「中国ウイルス」と呼んだ事もあり、
国を分断した大統領選から未だに立ち直れず、
アジア人に対するヘイトクライムが続く移民国家アメリカや
香港で国家安全法を適応し、
新疆ウイグルジェノサイドを行う中国もそうですが、
最も深刻なのは軍事クーデタが発生したミャンマーでしょう。

Flag of Myanmar

昨年の大統領選でアウンサンスーチー率いる国民民主連盟
圧倒的大差で勝利しましたが、
軍が不正であると訴えて、スーチー氏らを拘束し全権を掌握したのです。
軍は大した政治的成果を上げておらず、
イスラム教徒(ロヒンギャ)の弾圧によって
国際的非難を浴びたスーチー政権が
これほどの大差で勝利するとは考えていなかったのでしょう。
ミャンマーは1988年のクーデタ以来23年間軍事政権でしたが、
2010年にスーチー氏の軟禁が解かれ、民主化プロセスが始まりました。
わずか10年で再び軍政に逆戻りです。
国民の多くが軍政に反対し、スーチー氏らの解放を求めデモを行っていますが、
軍は当初は憲法を順守すると言っていたものの、
一部地域では戒厳令を敷き、武力によるデモ鎮圧を図り、
これまでに少なくとも180人が犠牲となっています。

Aung San Suu Kyi visited Japan 2016 (1)
(出典:首相官邸)

スーチー氏はイギリス人と結婚したり、
イギリスに留学し、ニューヨークに住むなど海外歴が長いため
欧米はスーチー氏の民主化運動を全面的に支持していますが、
ロヒンギャの一件でスーチー政権とは関係が冷え込んでおり、
バイデン政権は軍事政権に対して制裁を仄めかしていますが、
そもそも軍事政権とかかわりが薄いため効果は限定的です。
日本は軍事政権ともスーチー氏ら民主化勢力ともパイプを持っており、
クーデタ自体は批判していますがどちらかというと玉虫色の姿勢です。
2007年に日本人ジャーナリストが反政府デモの取材中に
ミャンマー軍に射殺された時も面だった制裁を行いませんでした。
しかし、ここは関係各国がしっかり態度を決めるべきだと思います。
軍事政権が中国と強い関係にあるからです。

もちろんミャンマーは中国の属国ではありませんし、
軍政時代も含めて中国寄りのバランス外交でした。
そして民政に移ってからは欧米との関係改善が一挙に進みました。
ビルマ建国の父であり、スーチー氏の実父であるアウンサン将軍
大東亜戦争で日本軍と協力関係にあり
宗主国であったイギリスを追い出してビルマ国を独立させましたが、
日本敗戦の色が濃くなるとイギリスに寝返り
日本を撃退したため敗戦国のそしりから逃れることができました。
このように強かな面を持つのがミャンマー含め東南アジア各国です。

Aung San in uniform
建国の父アウンサン将軍

しかし今度のクーデターによって
主要国がミャンマーの民主化を諦めてしまったら
その隙が必ず付いてくるのが隣国の中国です。
軍政時代、人権問題で国際的非難が高まったときに
中国との結びつきが強くなったのは歴史的事実です。
このままミャンマーが新たな援蒋ルートとなるのか、
それとも中国の牙城を崩す一角となるのかの瀬戸際と言えるでしょう。

そもそも軍事政権の源流は大東亜戦争時に
日本の南機関が創設したビルマ国民軍であり、
スーチー氏の父であるアウンサンも国民軍の司令官でした。
また日本は同じ仏教国として
仏教の慈悲による非暴力主義を唱えるスーチー氏とも共通の価値観を持っています。
軍事政権ともスーチー政権とも独自のパイプを持つ日本だからこそ
欧米とは違うアプローチができるはずです。

欧米が懸念するロヒンギャ問題に対して
民主主義国家から批判にさらされるスーチー政権ですが、
ミャンマー国内の仏教徒とイスラム教徒(ロヒンギャ)の対立は
ビルマ占領時の日本とイギリスの代理戦争の側面があり、
日本とイギリスにも大きな責任があると言えます。
香港同じく日英が協力して
これらの問題に積極的にコミットする必要があると思います。

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