ユダヤ人のイメージと言うと思い浮かべるのは黒装束で黒い帽子をかぶり
もみあげと髭を伸ばし「嘆きの壁」に手をつき祈りを捧げる姿と、
ナチスの迫害という歴史的背景だろう。
日本人にとって遠い存在に思えるユダヤであるが彼らは何者なのであろう?
このユダヤというものを正しく認識しなければ中東紛争もなかなか理解できない。
様々なユダヤ人の定義
- イスラエル人=現在のイスラエル国籍を持つ人々、または古代北朝イスラエル王国の人々
- ユダヤ人=現在のユダヤ教信者、または古代南朝ユダ王国の人々
- ヘブライ人=イスラエル王国とユダ王国を合わせた古代ユダヤ民族の総称
- シオニスト=イスラエル建国を実現させたシオニズム運動の支持者
- パレスチナ人=パレスチナ地方に住むアラブ人(≠ユダヤ人)シオニストと対立
ユダヤという言葉の示す範囲は非常に広く血統や民族ではなく
ユダヤ教を信仰するユダヤ教徒を指すことがある。
日本人でもユダヤ人である場合もあれば、
逆にイスラエル人であってもユダヤ人でない場合もある。
またユダヤ人であってもシオニストでないケースもあれば
パレスチナ人でありイスラエル人のケースもある。
血統という意味で言えばさらに2つのユダヤに大別できる。
- アシュケナージ系ユダヤ人=白人系(欧米系)
- スファラディ系ユダヤ人=非白人系
※これはイスラエルによる行政区分で
厳密にはスファラディ系ユダヤ人はスペインに起源を持ち、
褐色の肌を持つ南欧系の見た目の人々で
アラブ系であるミズラヒ系やエチオピア系ユダヤ人もスファラディ系に組み込まれている。
ユダヤと聞いてまず思い浮かべるのは白人系のアシュケナージ系である。
アインシュタイン博士やスティーブン・スピルバーグ監督、
デーブ・スペクターもアシュケナージ系である。
一般的に110~115など高いIQを持ち、
ノーベル賞受賞者は世界中の民族の人口比で150倍も多いとされる。
スペインに起源をもつスファラディ系の著名人は
ピーター・ドラッカーやニール・セダカがいる。
しかしイエス・キリストや聖書に出てくるユダヤ人(ヘブライ人)は
本来アラブ系である。
ここに「人類史上最大の嘘」がある。
西洋画などで白人風に描かれるイエス・キリストも
白人でなくアラブ系の顔つきをしたユダヤ人だった。
だが、現在イスラエルの中枢にいるユダヤ人は白人系のアシュケナージ系ユダヤ人である。
一般にユダヤ人は世界中に離散しており、混血が進んではいるが、
中東に残留し、もっとも血縁的に古代ヘブライ人に近い
アラブ系のミズラヒはイスラエル国内で少数派であり、
アシュケナージ系から社会的差別を受けている現状がある。
ナチズムのアーリア至上主義の最下層に置かれたユダヤ人たちだが、
迫害を乗り越え建国したイスラエル国には現在、
アシュケナージ系>スファラディ系>ミズラヒ系(アラブ系)>エチオピア系という
社会的ヒエラルキーが存在している。
アシュケナージ=ハザール起源説
イエスがアラブ系であったように
中東を舞台にした聖書に出てくるユダヤ人は皆アラブ系であるため、
今支配層にいるアシュケナージ系は「偽ユダヤ人」と言う意見もある。
彼らは7世紀から10世紀にかけて
カスピ海の北からコーカサス、黒海沿いに栄えた
遊牧民族のハザール王国の子孫であるという説がある。
ハザールはビザンツ帝国のキリスト教勢力と
イスラム帝国のイスラム教勢力に挟まれたため
国家戦略としてその両方の宗教の母体であったユダヤ教に改宗した。
その後、ハザールはロシア人国家に滅ぼされ、
ロシア国内や欧米諸国に散りつつもコミュニティを作ってユダヤ教を堅持した。
ユダヤ人=ユダヤ教徒という定義に当てはめれば立派なユダヤ人である。
このアシュケナージ=ハザール起源説は
パレスチナに築かれたユダヤ国家「イスラエル」の正統性を揺るがすもので
主に中東アラブ諸国など反イスラエル感情の強い地域で支持を集めていたが、
最近のDNA研究ではアシュケナージの多くにも
中東由来の遺伝子がある事が分かっており、学術的には否定されている。
ただ、ハザールのユダヤ教改宗は歴史的事実であり、
ヨーロッパのユダヤ人の一つのルーツであることを否定するものではない。
アラブ系ユダヤ人はイスラムとの共存が可能だったのに対し、
アシュケナージ系ユダヤ人はカトリックによる迫害の中で選民思想を強くした。
彼らがそのままシオニストとなり、宗主国であったイギリス相手にテロを繰り返す中で
第二次世界大戦におけるナチスの迫害を乗り越えた後に
聖書における約束の地カナン(パレスチナ)に祖国イスラエルを建国する事になる。
ユダヤ迫害の歴史
ユダヤの迫害というと第二次世界大戦のアドルフ・ヒトラー、
ナチスドイツの行ったアウシュビッツに代表されるような
ホロコーストのイメージがあるが、
そもそもユダヤ迫害はヒトラーに始まったわけでなく、
西洋世界で歴史的に繰り返されたものである。
なぜ西洋世界でユダヤ人が迫害され続けていたのか?
理由は意外と単純で、ユダヤ人はイエスを殺した民族と考えられたからだ。
そもそもユダヤ教というユダヤ人の民族宗教は
キリスト教を生んだ土台であり世界宗教の母的存在だが、
ユダヤ教はユダヤ人のみが神に選ばれた祝福の民である
という独善的な選民思想があった。
そしてユダヤ人だけでなく
全ての人々に救いを与えようとしたのがイエスというユダヤ人だった。
イエスは反発したその他大勢のユダヤ人によって異端とされ磔にされ処刑された。
この出来事が後にキリスト教を国教として認めたローマ帝国の流れをくむ
西洋世界でユダヤ人という少数民族が迫害される根本原因となった。
古代ユダヤ国家、イスラエル王国とユダ王国は
それぞれアッシリアとバビロンの捕囚で滅ぼされ、
以来、ユダヤ人は亡国の民として世界中に散っていった。
中世以降からヒトラーのナチスドイツの時代まで、
迫害の目に合ったユダヤ人は東欧に移り住んだアシュケナージ系が大半である。
なぜならスファラディ系はコミュニティをあまり作ることなく、
西洋から逃げるように新大陸や
アジアなどに散り散りになって現地の人や文化に溶け込み吸収されたが、
アシュケナージ系は東欧を中心に住み、
強力なコミュニティを作り、ユダヤ教を頑なに守ったからである。
またシェークスピアの「ベニスの商人」に出てくる
シャイロックに象徴されるように、
中世ヨーロッパにおいてユダヤ人は高利貸しを主な生業としていた。
他人に貸した金から利子をとることはキリスト教が禁止していたため
ユダヤ人は欲深い罪人という悪いイメージが作られてきた。
ユダヤ教はキリスト教と違い他宗であれば利子を許されていた。
こうして現在の銀行システムを築き上げたユダヤ人は世界の金融を支配した。
イギリスのロスチャイルド家などがその代表格と言われており、
フリーメイソンなどのユダヤ系結社はアメリカ独立、
さらにはフランス革命、ロシア革命にまで関与するほどの巨大な勢力となる。
(明治維新ユダヤ陰謀説参照)
これらの出来事から反ユダヤ思想がますます盛んとなり、
いずれユダヤ人が世界を支配するという陰謀論が巻き起こった。
(シオン賢者の議定書参照)
世界大戦を巡る永久中立国の秘密
第一次大戦後、敗戦国ドイツは天文学的賠償金を負わされたが、
それによってユダヤ人は私腹を肥やしたと考えたヒトラーはユダヤ人に敵意を持った。
ナチスのユダヤ迫害の根拠もここにある。
多くのアシュケナージ系ユダヤ人が住んでいた
ヨーロッパでは二度に渡る世界大戦が起こるが
その中でスイスは永久中立国として戦災に巻き込まれなかった。
スイス第二の都市ジュネーブには国際連盟の本部が置かれていた。
それにはカラクリがある。スイスは世界中の大富豪がお金を預けている
スイス銀行を有する国際金融国家でもある。
戦争が起きる一方でユダヤ資本を守るため
誰も手を出すことのない安全な国が必要だったという説がある。
しかし、第二次大戦では独立の担保としてスイスはナチスに協力し
一般のユダヤ難民の受け入れは拒否していた。

あまり知られてないが、
大戦前は欧米でも経済に苦しむドイツに同情的で
アメリカではナチスは人気のある政党だった。
一方のナチスのユダヤ人迫害はほぼ無視されていた。
連合国側でもユダヤ人の入国は厳しく制限された。
多くのユダヤ人を救った日本
戦前のユダヤ人にとって厳しい時代に
最も多くのユダヤ人に救いの手を差し伸べた主要国は日本と評価されている。
日本陸軍や外務省の一部では政治的・戦略的発想ではあるものの
「河豚計画」としてユダヤ人を満州国に誘致する計画を持っていた。(河豚計画参照)
また、ナチスの魔の手が迫る中、リトアニアの外交官だった杉原千畝は
外務省の方針に反して約6,000人のユダヤ人に通過ビザを発給し、
多くのユダヤ人がシベリア鉄道経由で日本を経て
日本占領下の上海へと逃れることができた。
その上海にはユダヤ人区「上海ゲットー」があり、
大戦期にナチスから逃れた約2万人のユダヤ人がそこで生き延びた。
欧州の中立国スウェーデンもユダヤ人保護が行ったが、
日本はナチスドイツの同盟国である点が特筆される。
日本はナチスのユダヤ人排斥政策には同調せず、
八紘一宇の国是を守り全ての人種を平等に扱った。
シオニズム運動を利用したアメリカ
今のようにユダヤ人虐殺が
国際的な問題として取り上げられたのは戦後になってからである。
「悲劇の民族に安住の地を」というスローガンを与え、
欧米をはじめとする国際社会の同情を誘いイスラエル建国に結び付いた。
世界最大の経済都市ニュー・ヨークが「ジュー・ヨーク」と揶揄されるように、
アメリカ経済が多くのユダヤ資本で成り立っていることから、
第二次世界大戦後、アメリカの力により人工国家イスラエルが建国された。
そこには石油利権も複雑に絡んでいるが、ユダヤ人が大量に入居し、
今度は長らくパレスチナの地で暮らしていたアラブ人が迫害され
土地を追われ多くのパレスチナ難民を生んだ。
アラブ諸国はイスラエルを認めずユダヤを追い出すために中東戦争が起こり、
現在に至るまで中東は政情不安となっている。
世界史の歪み
歴史的なヨーロッパでのユダヤ人迫害は宗教的対立の背景があったが、
戦後、イスラエルが建国されてからはナチズムの反省の元、
欧米(キリスト教)とイスラエル(ユダヤ教)の関係は比較的良好である。
一方で最後の預言者として
アラブ人のムハンマドを崇拝するイスラム教に対しては
キリスト教、ユダヤ教ともにこれを認めておらず、対立関係が続いている。
過激派のテロばかり取り上げられ、
欧米やイスラエルから非難されるイスラム教だが、
旧約、新約聖書もコーランと共に聖典とされ、
イエスキリストも預言者の一人として認められており、
イスラム帝国の政策を見てもユダヤに対して寛容だった。
トルコ人も白人もアラブ人もユダヤ人も共存できていたのである。
第二次世界大戦後、冷戦、そして現代と
イスラム圏、中東アラブ諸国と対立してきた欧米とイスラエル。
イスラム教VSキリスト教+ユダヤ教という中東における戦後構造は
実際はイエスがアラブ系なので奇妙な構図であるが、
白人であるという嘘がまかり通っているためだ。
「イエスを白人として描いてきた歴史の歪み」が、
今もなお、中東の歪みとして残っているのである。
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