戦争の波及。

こんばんは。どうもお久しぶりです。
5月に開催された核なき世界の理想を共有したG7広島サミットから
世界ではいろんなことが起こりました。

ウクライナ侵攻では6月にウクライナの反転攻勢が始まり、
ロシア国内では6月23日にプリゴジンの乱が起こりました。
また日本の福島第一原発の廃炉に向けて始まった処理水の海洋放出
それに対する中国の日本全土からの水産物禁輸措置。
そして再び始まったイスラエルとハマスの戦争など
コロナ戦争(第三次世界大戦)4年目にして
この不安定な世界はさらに混迷を極めようとしています。

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プリゴジンの乱(ワグネルの反乱)

Yevgeny Prigozhin (13-06-2023)
ワグネルの創設者プリゴジン
(出典:УлПравда ТВ

バフムートの戦いで中心的な働きをした
ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者である
プリゴジンはロシア軍がウクライナ侵攻で苦戦する中、
軍上層部を公然と批判するようになっていましたが、
ついに「正義の行進」と称してモスクワへの進軍を始めました。
このロシア軍に対して起こした反乱は
第一次世界大戦中に起きたロシア革命を思い起こし、
プーチン政権崩壊、ウクライナ戦争終結を期待した人も多いでしょう。

Prigozhin rebellion Rostov tank with flowers in the muzzle June 24
砲口から花を出したワグネルの戦車
(出典:Fargoh

しかし、プーチン大統領とプリゴジン、
両氏とパイプを持つベラルーシのルカシェンコ大統領の説得により
ワグネルは撤退、プリゴジンはベラルーシへ亡命。
プリゴジンの反乱はわずか二日で終了しました。
その後、8月23日にプリゴジンは旅客機の墜落事故により死亡
大方の見方通り、プーチンに楯突いたプリゴジンは暗殺されたのでしょう。

反乱は抑えられたもののプーチン政権にとって大きな痛手です。
フィンランドとスウェーデンのNATO正式加盟が決まった中、
ロシアが主導する旧ソ連国家の軍事同盟CSTOの会合では
ベラルーシのみがウクライナに対してCSTOの結束を呼びかけましたが、
他国はウクライナ紛争について言及すらせず
旧ソ連圏の経済ブロックユーラシア経済同盟の首脳会議では
プーチンの挨拶を遮って
アルメニアとアゼルバイジャンの首相が口論を始めるなど、
東側メディアから流れる映像だけでも
ロシア、プーチンの求心力の低下は疑いようがありません。
ロシアは中国が表向きの支援を拒んでいる中で最貧国の北朝鮮に接近。
プーチンはわざわざロシア極東に赴いて金正恩と会談し、軍事協力を求める始末です。

アメリカは主力戦車M1エイブラムスを前倒しで今秋にもウクライナに引き渡し、
ウクライナの戦場にはドイツのレオパルト2、イギリスのチャレンジャー、
アメリカのM1エイブラムス、西側の主力戦車が揃い踏みとなります。
ウクライナの反転攻勢は東部で膠着状態に陥ってはいますが、
9月22日にクリミア半島セバストポリにあるロシア黒海艦隊の司令部へミサイル攻撃を行い
司令官を含む34人の幹部クラスが死亡するなど
南部のクリミア半島奪還に力を入れているようです。
戦争の出口はまだ見えていません。

日本の処理水放出と中国の反応

Fukushima Daiichi 04780015 (8388174045)
(出典:IAEA Imagebank

8月24日、福島第一原発のアルプス処理水の海洋放出が始まりました。
2011年の原発事故から12年、
汚染水を人体に無害なまでに十分にろ過して
IAEAによる国際的なお墨付きを得た上での放出でしたが、
中国がこれに反発し、科学的な根拠のないままに批判し、
日本の水産物を全面輸入禁止にしました。
中国はあきらかに政治的な攻撃材料として処理水放出を利用しています。
あの韓国でさえ海洋放出に理解を示している事からより一層中国の過剰反応が際立ちます。

昨年12月に萩生田光一政調会長世耕弘成参院幹事長が相次いで訪台、
8月7日には断交後最高位の麻生副総裁が訪台し、蔡英文総統と会談、
台湾有事について戦う覚悟が必要と力強く演説し、
10月9日からは萩生田政務調査会長が昨年に続き再度訪台しています。
政府要人が相次いで台湾を訪問し、
連帯を示す日本を何とか攻撃できないものかと中国は待ち構えていたように思います。
核汚染物を公共の海に流すという動きは
日本を攻撃する格好の外交カードになると踏んだのでしょうが、
中国は自らが開発援助を行うソロモン諸島などの一部の国に
日本の処理水放出を批判、もしくは懸念を表明するように仕向けさせたものの
ロシアでさえ明確な批判をしていないように
国際的な日本包囲網の構築に失敗しています。

それどころか8月末に中国が発表した新たな中国の地図を巡って
台湾、インド、ベトナム、フィリピンなどが相次いで抗議しており、
周辺国では日本の処理水放出よりも中国の地図からの侵略の方が問題視される状況です。
インドネシアでのASEAN関連首脳会議や、
インドでのG20を控える中での発表であり、
結局、両会議とも李強首相が参加し、習近平主席は欠席しました。
G20を習近平主席が欠席するのは就任以来初めてで、
上記の批判を交わすためともバイデン大統領との接触を拒んだだの
いろいろと言われていますが、
地域において中国の影響力に陰りが見えていることに違いはありません。

存在感を増すインド

習近平、プーチン不在のG20では
代わりに議長国インドモディ首相の存在が目立ちました。
西側先進国のみのG7と違い
今回のG20では西側、ロシア、中国も参加しているため
ウクライナ問題についての意見が割れ、
首脳宣言の採択は難航すると言われてきましたが、
西側ともロシアとも友好関係を築いているインド
自国開催のG20を何としてでも成功させるため、取りまとめに奔走し、
会議初日で首脳宣言を採択する異例の対応を取りました。
ロシアへの直接的な批判を避け、後退した文面でありウクライナは失望しましたが、
西側もロシアもインドを自陣に引き入れたいため、首脳宣言を歓迎しました。
またモディ首相はアフリカ連合のG20常任メンバー入りを認めさせる事に成功し、
このG20によってインドはグローバルサウスのリーダーとして
一躍国際舞台に躍り出たと言えるでしょう。

インドはこの国際会議の場で
唐突に「Bharat」(バーラト)の国名プレートを使用しました。
多宗教多民族国家であるインドにとって、
バーラトはヒンドゥー教に由来するため他宗派からは反対の声が上がっています。
モディ首相はヒンドゥー至上主義団体に所属していた過去があり、
熱心なヒンドゥー教信者です。
インドのこれら宗教に関する問題としては
6月18日にカナダで起きたシーク教指導者の殺害事件において
カナダ政府がインド政府の関与を訴え、インド政府が強く反発、
両国間で外交官の追放合戦が展開され、
インドとカナダ民主国家同士のまさかの対立となっています。
殺害されたハーディープ・シン・ニジャールは
インド北部でシク教徒のための独立国家「カリスタン」の樹立を目指してきた人物であり、
インド政府によりテロリストに指定されていました。

Flag of India
Flag of Canada

2018年にサウジアラビアのムハンマド皇太子が指示したとされる
トルコのサウジ領事館内で起きたジャーナリスト殺害事件によって
スンナ派国家同士であるサウジとトルコの対立がありましたが、
宗教が絡む問題は本当に根深いものがあります。

カースト然り、度々起こる人権の問題を抱えてはいるものの
今年、インドは中国を抜いて人口世界一の国になりました。
GDPは旧宗主国のイギリスを抜いて5位、今後さらに順位を上げていくと見られています。
インドの影響力、発言力は今後さらに大きくなっていくでしょう。

第五次中東戦争

10月7日の早朝、ガザ地区を実効支配するイスラム過激派のハマス
突如イスラエルに2000発に及ぶミサイル攻撃を行いました。
イスラエル側の死傷者は700人以上に上り、建国以来最大の犠牲となっています。
イスラエルのネタニヤフ首相は戦争状態を宣言し、
早速ハマスへの報復としてガザ空爆を行い、両国で犠牲者は1200人を超えています。
これまでの流れを考えてもイスラエルは被った犠牲の何倍、何十倍の反撃をするでしょうし、
今後同じことが起きないようにテロリストを一人残らず完全に駆逐する魂胆でしょう。
つまりそれはガザからパレスチナ人を消し去るという事です。

しかし、ハマスは国境から車両やパラグライダーを使ってイスラエルに侵入し、
野外ライブを襲撃するなどイスラエルから100人規模の兵士や民間人を人質として連行し、
空爆の度に人質を殺すと声明しています。

2年前の2021年5月に起きたパレスチナ危機の時に予言した通り、
再び戦いは起きてしまいました。
パレスチナ問題は本当に複雑で根深いものがあります。
イスラエルが長年行っているガザ地区への経済封鎖などの嫌がらせ、
東エルサレムで進められているユダヤ人の入植とパレスチナ人の排斥。
こうした中でパレスチナでは民衆の不満が溜まっていました。
またアラブの盟主たるサウジアラビアとイスラエルとの国交正常化に向けた話し合いが
外交的孤立を恐れたハマスを動かしたと言えます。
ユダヤ教の祭日を狙ったハマスの奇襲攻撃は見事に成功したと言えるでしょう。
しかしロシア同様に核兵器を持つイスラエルが降伏する訳もなく、
これまでも散々に叩かれ、どれだけの犠牲を払おうとも屈しなかった
ハマスが簡単に壊滅する事も無く戦いに終わりが見えません。
そしてその犠牲となるのは常に両国の無辜の民です。

2年前はエジプトの仲介によって停戦となりましたが、
今回は長期化する恐れもあります。
空爆だけではハマスを壊滅できない事はイスラエルも承知のため、
今後、地上軍をガザに派遣するかが焦点となっており、
もし大規模な地上戦が始まれば、レバノンなど周辺のアラブ国、
ハマスを支援するイランやその背後にいるロシア
イスラエルとの和解を進めるサウジも巻き込んだ第三次世界大戦の中東戦域、
第五次中東戦争の始まりとなるかもしれません。

アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアは共同で声明を出し、
イスラエル支持を表明しましたが、
欧米諸国がウクライナ戦争で頭を悩ませる中、
イスラエルにどれだけのことが出来るのかが不透明であり、
西側の戦力の分散はロシアや中国に利する事になり、
戦争はヨーロッパ、中東だけでなく、極東(台湾有事)にまで波及しかねません。

波及を止めるために

開催が遠のいている米中首脳会談が11月で調整されているとの事ですが、
今後の情勢はまさにこの米中と
G20を取りまとめたインドの手にかかっていると言えます。
エリザベス女王亡きイギリスはパレスチナ問題の当事者でありながら影響力を失い、
安倍元総理亡き日本は世界のリーダーとして大局を見る目を失いつつあります。

07.11 總統悼念日本前首相安倍晉三
(出典:中文(臺灣):中華民國總統府)

安倍元総理が2021年12月に台湾のシンポジウムで述べた
「台湾有事は日本有事」の発言はまさに遺言と言えるものでした。
日本政府の台湾支援の姿勢はこの発言によってより明確になっていきました。
安倍氏が凶弾に倒れた後、台湾南部の高雄市にある
日本軍艦を祀っている事で有名な鳳山紅毛港保安堂
台湾の有志によって台湾の永遠の友として安倍元総理の銅像が建てられ
台湾を訪れる日本の政府要人の重要な立ち寄り先となっています。
日本で銅像が建てられない状況が悔しいところですが、
まさに日本と台湾の懸け橋となった安倍元総理の功績を
安倍内閣で外務大臣として間近に見ていた
岸田総理にもしっかりと引き継いでもらいたいと思います。

CIAなど複数の情報筋から
2027年までに中国は台湾侵攻の準備を完了すると言われています。
日本の国益を考えればウクライナ紛争ではウクライナ支持
パレスチナ問題は中立で問題ないでしょう。
しかし台湾問題は日本の存続にかかわる最重要の問題であり、
軍事力を強化して、絶対に台湾を守るという強い意志を示し、
習近平に軍事侵攻を思い留まらせて、
ヨーロッパから中東に広がる戦争ドミノを防いでもらいたいと思います。

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