パレスチナ危機とトランプの亡霊

こんばんは。
WordPressへ移転してからは初投稿になります。
本家はあくまで創作活動に的を絞ったHP兼ブログで、
サブドメインで運用するこちらはおおむねBlogger時代と同様、
時事問題や歴史研究系のブログになる予定です。
引き続きよろしくお願いします!
さて、移転早々イスラエルとパレスチナの対立が激化しています。

スポンサーリンク

パレスチナ危機

Flag of Israel
イスラエルの国旗
Flag of Palestine
パレスチナの国旗

パレスチナ問題については以前もシリーズで語っていますが、
キリストとイスラム対立の歴史トランプのエルサレム首都認定
今回の衝突の直接の原因となったのは
イスラエルが占拠する東エルサレムでのパレスチナ人排斥運動です。

そもそもエルサレムという土地ですが、
イスラエル建国の元となった国連のパレスチナ分割決議案でも
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教これら全てのアブラハム系宗教の聖地として、
国連の永久信託統治とすると決められてました。
しかし、イスラエル建国と共に始まった第一次中東戦争の休戦協定により、
イスラエルが占領する西エルサレムとヨルダンが占領する東エルサレムに分割。
さらに第三次中東戦争の結果、イスラエルは東エルサレムも占領し、現在に至ります。
これらの経緯からも分かるようにパレスチナ地域そのものもそうですが、
東エルサレムに住んでいるのはパレスチナ人(アラブ人)が大半で、
1994年のオスロ合意によって誕生したパレスチナ自治政府は
東エルサレムを名目上の首都としています。

つまり、イスラエルが東エルサレムを実効支配していること自体
本来は国際法違反なのです。
にも拘わらず、東エルサレムには嘆きの壁などの旧市街が含まれており、
東エルサレムから撤退せよという国際世論を無視して
イスラエルは強硬に統一エルサレムを永遠の首都とし、
アラブ人(イスラム教徒)を追い出し、ユダヤ人を入植させて、
ユダヤ人による実効支配を強めようとしているのです。
パレスチナ(ハマス政権)側がロケット弾を発射し、
一方的に戦争を仕掛けたと非難する人もいますが、
北朝鮮が日本に対して一方的にミサイルを撃ち込むのとは
わけが違うのがご理解いただけると思います。

確かにハマスのロケット弾による無差別攻撃はテロそのものですし、
非難されて然るべきでしょう。
しかし、イスラエルは報復としてガザ空爆を行い、
ハマスの攻撃による犠牲者12人に対して、232人のパレスチナ人を殺害しています。
報復であれば大量殺戮が許されるのでしょうか?
一般論から言えばより多くの人を殺した方が罪深いとされるはずです。
イスラエルはハマスの関係者をピンポイントで攻撃したもので、
一般のパレスチナ人を殺害している訳ではないと言います。
仮に一般市民に犠牲が出たとしても
人間の盾を使っているとハマスを批判するだけです。

問題はハマスが
これらの犠牲を甘受してでも抵抗の意志を持ち続けている事です。
20日、イスラエルとパレスチナはエジプトの仲介を受け入れ停戦に合意、
11日間に渡る攻撃の応酬は一先ず終了となりますが、
これまでの事を考えると
イスラエルは着々とエルサレムからのパレスチナ人追放を続けるだろうし、
残念ながら武力衝突が再開されるのは時間の問題でしょう。

トランプの亡霊

President Donald Trump and Prime Minister Benjamin Netanyahu Joint Press Conference, February 15, 2017 (01)
ドナルド・トランプ大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相

そもそも今回の衝突の直接原因でもある
イスラエルによる東エルサレムからのパレスチナ人の締め出しですが、
トランプ政権の親イスラエル政策が影響していると思います。

トランプは和平の妨げになるとして歴代政権が延期し続けていた
米大使館のエルサレム移転を実行し、
正式にイスラエルの首都がエルサレムであると認めました。

またパレスチナ問題で「二国家共存に拘らない」と発言し、
一方的なイスラエル支持を表明、
シリア領だったゴラン高原のイスラエルの主権まで認める始末です。
こうしたアメリカの強力なバックアップを背景に
イスラエルは東エルサレムの実効支配を強めました。
トランプの親イスラエル政策は
ユダヤ教徒である娘婿のクシュナー氏の入れ知恵じゃないかとも噂されましたが、
大使館のエルサレム移転イラン核合意の離脱など
2017年~2021年までの4年間でトランプ政権は
これまで積み重ねてきた中東和平の努力を無駄にしてしまいました。

President Trump visit to Israel May 22-23, 2017 DSC 4027F (34461668090)
現職大統領として初めて訪れた嘆きの壁。
左端の人物が娘イヴァンカ・トランプの婿でユダヤ教徒のクシューナー氏

パレスチナの結束

Flag of Hamas
イスラーム主義のハマスの党旗
Fatah Flag
世俗主義のファタハの党旗
MrPenguin20

こうしたトランプ政権による中東のバランスの崩れは
パレスチナの結束を強めた部分もあります。
パレスチナ(自治区)はガザ地区とヨルダン川西岸地区の
二つのエリアが飛び地になっていますが、
ガザのハマス政権とヨルダン川西岸のファタハ政権で分断され、
当初激しく対立していました。
しかし、2014年以降に統一政権が誕生し、
イランが支援するテロ組織と言われるハマスが
パレスチナ中心に支持されるようになっている
のです。
今回のハマスの狙いは東エルサレムに隣接する
ヨルダン川西岸でのパレスチナ人の支持を獲得する事でした。
ハマスは今回、一定の目標を達成したとしていますが、
今後、パレスチナ人の反イスラエル感情からハマス支持が集まれば
イスラエルが言う国家イスラエルとテロ組織ハマスという図式が崩れ、
ユダヤ人とパレスチナ人の全面戦争になりかねません。

レームダックのバイデン政権

共和党トランプが退陣し、
民主党バイデン政権はイラン核合意への復帰などを掲げ
中東において再びバランスを取り戻そうという動きもあるのですが、
国家として一旦変えてしまった方針を元に戻すことは容易ではありません。
アメリカ自身が和平交渉の席を蹴った以上、
もはやアメリカにもこれらの紛争を止めることはできないでしょう。
今回もエジプトの仲介に乗っかった形です。

在米ユダヤ人の多くはリベラルで民主党支持者が多いので、
ユダヤロビーは今後もアメリカ中央に働きがけを行うでしょうが、
シェール革命後のアメリカにとって
中東の石油利権の関心はますます失せているはずで、
リスクを冒してまでイスラエルの肩を持ち続ける意義がありません。
むしろ共和党のトランプ政権が親イスラエルを前面に押し出したのは
単にユダヤ票を民主党から奪いたかっただけかもしれません。

アメリカにとってイスラエルはお荷物以外の何物でもないというのが、
バイデン政権の本音でしょう。
ちょうどアメリカにとってイスラエルは
中国における北朝鮮のような存在になり下がろうとしているのです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました