平和安全法制で何が変わる?

5月14日の閣議決定に続き、
7月15日、集団的自衛権の行使容認などを盛り込んだ
平和安全法案が衆院特別委員会で可決された。
次に衆院本会議にて採決に移り、可決されれば
アメリカでの演説の通り
参院議決にならずとも今国会中の成立は確実である。

何故今「安全保障」の変更が必要なのか?
まず海外情勢の変化が大きい。
戦後から続いた米ソ冷戦が終了し、
対ソ同盟であった日米同盟の見直しがあり、
基地負担軽減のために米軍再編が行われる中で
北朝鮮は核開発に成功し、
ミサイルによる恫喝を繰り返している。
中国は経済的成長と共に軍事的増長を強めており、
南シナ海、東シナ海において領域を拡大し、
尖閣沖縄に対する領土的野心を隠そうとしない。
領空、領海侵犯における自衛隊機のスクランブルは急増している。

43-8530 another F-2A of 6 Hikotai (5229520814)
(出典:Jerry Gunner from Lincoln, UK/43-8530 another F-2A of 6 Hikotai)

ベルリンの壁の崩壊、ソ連崩壊によって
ヨーロッパで冷戦構造は終結したが、
アジアでは冷戦は終わっていない。
これら核を保有する共産国家の影響力の拡大と
相対的に同盟国アメリカの影響力は
アジア太平洋地域において減少傾向にある。
明らかに日本周辺の状況は厳しくなってきている。

米軍再編によって起こり得る
アジア太平洋地域における軍事的空白を埋めるのは
世界3位の経済大国であり、世界屈指の海軍力を持つ
隠れた軍事強国である日本しかない!(`・ω・´)
戦後から続くアメリカの従属化から脱したい安倍内閣と
安保負担を軽減したいアメリカとの利害は一致している。

JMSDF Fleet Review 2000 on Sagami Bay 平成12年度海上自衛隊観艦式 - panoramio
(出典:AMANO Jun-ichi/
Panoramio - Photo of JMSDF Fleet Review 2000 on Sagami Bay 平成12年度海上自衛隊観艦式
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海軍力は中国とは比べ物にならない程
歴史と伝統、技術的蓄積があるので、
平安法により防衛意識の高まった日本を中国は迂闊に挑発する事はない。
つまり平安法は対中国において明確な抑止力となる。
そして対核戦力を補うために日米同盟がある
集団的自衛権の行使の容認は日米同盟をより対等にする。

国際問題になるため安倍総理も国会では中国の名前を出さないが、
平安法は明らかに尖閣を狙う中国に対抗する目的がある。

一方で周辺事態はまだしも、地理的制約を撤廃する事によって
武器携帯の海外派遣の恒久化を疑問視する意見は多い。
自衛隊がアメリカの極東軍となり
中東で前線に立たされるのではないかという不安をマスコミで聞く。

まず、戦闘行動を目的とした派遣は
専守防衛の理念から逸脱しており、ありえない。
そもそも個別的集団的ともに自国防衛が前提であるのであって、
それを超えた軍事行動を認めるものではない。

補給、輸送などの後方支援平和維持活動など
日本が利害を共にする世界と共に平和と安定に寄与していくことは
経済大国である日本の使命であり、責任である。
そうすることによって世界は国家を評価してきた。
かつて日本は湾岸戦争時に自衛隊を派遣しなかったことで
国際社会から強い批判を浴びた事がある。
また、この反省を持って復興支援の派遣を決めた
イラク戦争では武器使用が厳しく制限され
オーストラリア軍などに護衛されていた自衛隊情けないばかりである。
平和維持活動における武器携帯、
自衛のために最低限の武装は認められるべきである。

また、中東に依存する石油の安定的な供給には
アラビア海、インド洋のシーレーンの安定な航行が不可欠であり、
これは日本人の生活にも直結する問題でもある。
海賊対策としても自衛隊護衛は大きな力になる。
ニュースにならないが、過去多くの日本企業の船が海賊の被害に会っている。
先の大戦もエネルギー問題が喫緊の問題であり、
戦後の高度成長も中東戦争によるオイルショックで終焉を迎えたのだ。

地理的制約撤廃の背景の一つにはテロリズムがある。
近年、海外で日本人の命が狙われるテロ事件が続いた。
イラク、アルジェリア、シリア、チュニジア・・・
特にシリアのISILによる日本人拘束事件では
憲法9条や現状安保法制による限界、
海外の日本人を守る事が出来ない現実を見た。

今まで自衛隊の海外派遣について
イラク復興支援などの時々の局面において
個別に時限立法の特措法を作っていたが
それでは迅速な対応を取る事が出来ない。
安全保障体制における恒久法を作り
切れ目のない対応を行う事によって
不測の事態を未然に防止する必要があるのだ。

Special Forces Group of the JGSDF
(出典:陸上自衛隊/防衛省)

平安法の下では先のISIL事件であれば
邦人救出のために自衛隊特殊部隊派遣の事案となっただろうし
海外で自衛隊が殉職する可能性は確かに増える。
そして自衛のためであれば戦闘が「できる」国になる。

グローバル化したテロリズム、そして日本周辺の現状では
日本一国が平和を唱えても
その平和を享受し続ける事が難しい事態になってしまったのである。
それは海外情勢の変化だけでなく、
戦後日本が棚に上げ続けていた問題でもある。

もちろん戦争は誰もしたくないし、誰も人殺しをしたくはない
外交によって、なるべくそういった事態の起こらないように努力すべきであり、
自衛隊が活躍しない世界の方が平和である。
しかし、世界中で戦争は繰り返されている。
中国に脅かされるアジア諸国、テロの被害に会う世界中の人々・・・
皆、日本の力を必要としている。
どんな国であっても自国を自国だけで守る事は不可能になってしまった。
我々は今平和を享受しているが、隣で無実な人々が殺されているのである。
日本がその国力に見合った責任を負わずに見殺しにしていいのだろうか?
もし、見殺しを続け一国平和主義を続けたとして
日本がいざ災難に見舞われた時、誰が我々を助けてくれるのか?
自国さえも守る気がないのは日本だけだ。
そんな無責任な国に手を差し伸べる国はいない。
代案もなくただ現状の平和憲法を守ろうというのは偽善であり臆病でしかない。

平安法の違憲性は憲法問題であり、また別問題である。
確実に中国は尖閣を狙っているのであって
安全保障上の問題として認識する必要がある。
憲法そのものよりも国民の安全の方が重要度が高い。

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