世界に誇る日本軍の兵器10選⑤~九三式魚雷~

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九三式魚雷(酸素魚雷)

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その長射程はロング・ランスという愛称を生んだ
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九三式魚雷酸素魚雷とも呼ばれており、
燃料の酸化剤として空気の代わりに、
空気中濃度以上の酸素混合気体もしくは純酸素を用いた魚雷です。
「ロング・ランス」という愛称をつけられているように
その長射程、素早い雷速と大きな爆発力は連合国艦艇から恐れられました。

魚雷とは、魚形水雷の略称であり、
弾頭にエンジンと高速スクリューを組み合わせ、水中を航行し、
目標とした艦船などを爆発によって破壊することを目的とした兵器であり、
先述の翔鶴型など航空母艦を中核とした空母機動艦隊同様に
ワシントン会議で米英に対して数的不利に陥った日本海軍は
日本海海戦での水雷戦の経験を含め
魚雷を主武装ととらえて、戦術と共に研究が進みました。

魚雷の推進動力は、
燃料と酸化剤である圧縮空気を搭載して
エンジンを回す内燃機関型(熱走式)と、
電池による電気モーター型(電気式)に大別され
前者は高速かつ長射程(航続力大)だが、
多量の排気ガスの気泡が
魚雷の航跡に明瞭な白線(雷跡)となって浮かび上がり、
魚雷の存在も、撃ってきた方位も露見しやすい欠点があり、
後者は雷跡が無いが、熱走式に比して出力が低く速力・射程とも劣ると、
一長一短があります。
こうして考えられたのが酸素魚雷で、
熱走式で圧縮空気に替えて純酸素を使用することで
排気ガスの成分はほぼ炭酸ガスと水蒸気のみとなり、
炭酸ガスは海水によく溶けるため、
雷跡をほぼ引かないという、電気式に準じる隠密性を獲得できました。
また、通常の熱走式よりも燃焼効率が大きく向上したことで
速力(雷速)・航続力もさらに上昇しました。

純酸素の使用で多くの利点が得られることは
国際的に知られていましたが、激しい燃焼反応のため
機関始動時などに容易に爆発するという技術上の問題点が立ちふさがり、
世界各国で研究開発が行われましたが、
頻発する爆発事故で中止せざるをえず、
その中で日本が1933年(昭和8年)、世界に先駆け酸素魚雷の開発に成功。
以降、大戦を通じて唯一の酸素魚雷運用国となりました。

九三式の航続距離は20,000mから25,000mで
速度を調節し酸素を節約すれば約40000m先の敵も狙えたと言われており
この射程距離は戦艦大和の主砲に匹敵するもので、
かつ馬力も上がり魚雷自体も50ノットに到達するなどスピードも上昇。
ほぼ同時期に開発されたアメリカのMk.15魚雷
最高速度は45ノット、最長航続距離が13,600mだったので
いかに日本の酸素魚雷の性能が高かったのかが分かります。
連合軍は1943年に鹵獲するまで
魚雷の性能を知ることができず、開戦当初に大きな損害を受けました。
大戦後期に開発された特攻兵器である人間魚雷回天
この九三式をベースとしており、
最高速度時速55km/hで23kmの航続力があり、
また弾頭の炸薬量は1.55トンと
93式酸素魚雷最大の炸薬量となった3型の780キロの倍もあり、
一撃で戦艦さえ撃沈できる破壊力を期待されていました。

KaitenType1
靖国神社境内にある遊就館で展示されている回天

第二次世界大戦時の日本の魚雷は当時の他国魚雷の水準に比して、
雷速と炸薬量で優り、射程は数倍、
加えて航跡の視認が困難という高性能なもので、
欧米の20年先を行っていたともいわれています。
このように酸素魚雷は日本の核心的軍事技術であり、
ジェットやロケットの技術と引き換えにナチスドイツにも伝えられました。
魚雷は日本のお家芸とも呼べる兵器であり、
高速の航空機からでも投下できる本格的な航空魚雷
世界に先駆けて実現したのも日本海軍の九一式魚雷でした。
今でこそ魚雷は旧式な武器ですが、
航空魚雷の運用方法は現代の巡航ミサイルに生きています。

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