N国という現象。

NHKから国民を守る党立花孝志代表が7月の参院選で当選し、
一議席を獲得、国政政党となりました。
北方領土にまつわる発言で
日本維新の会から除名処分を受けた丸山穂高衆院議員が入党。
渡辺喜美参院議員と共同会派みんなの党を結成するなど躍進が続いています。
「NHKをぶっ壊す」という刺激的なキャッチフレーズ、
数年前の我々団の外山恒一を彷彿とさせる
政見放送などでYouTube等で色物的に話題となりましたが、
当選以後、政治活動はより活発になり、
その政治センスはホンモノなのではないかと思っています。

政党のイデオロギーとしては
NHKのスクランブル放送の実現というワンイシューであり、
実現可能性の有無を無視した様々なマニュフェストを展開する
他政党よりも分かりやすく、
有権者にダイレクトに訴えられたのではないかと思います。
投票に行かない人、支持政党なしが多数派の状況なので
そこを突いて一点突破した手腕は見事としか言えません。
一般国民でNHKスクランブル化に反対するものはほとんどいないでしょう。
しかし、国会では全会一致でNHKに利する法案が次々と可決されています。
こうした民意を反映しない国会、既得権益との癒着に着目し、
NHKスクランブル化以外にはネットを使った直接民主主義を掲げています。

実際、党首自らがNHKの元社員で様々な不正を内部告発し、
退職後はNHK集金人の被害から
国民を守る活動を行ってきたので発言にも説得力があります。
5月29日には放送法が改正され、
NHKのネット同時配信サービスが本年度中に開始、
視聴の有無に関わらずテレビ、ワンセグに次いで
ネット環境があるだけでも契約を迫られお金を徴収されることになります。
10月からは消費税が10%に引き上げられ、国民の負担は増える一方です。
こうした差し迫った問題もあり、時機を正確に捉えました。
私個人としても選挙前、
テレビを捨ててNHKを解約したばかりだったので非常にタイムリーでした。

立花党首は「国会議員YouTuber」を名乗っているように
国会議員である前にYouTuberです。
東京MXのマツコ襲撃崎陽軒シウマイの不買発言など
過激的なパフォーマンスなどでもテレビや紙面を騒がせていますが、
こうした炎上商法でYouTubeの広告収入を得るばかりか
N国の宣伝ともなっています。
脅迫の容疑で警察から事情聴取を受けてからは
マスコミのN国バッシングが一気に激しくなりましたが、
こうした報道に対してYouTubeでリアルタイムで反論を行ないつつも、
もともとヒールなキャラクターで、
さっさと議員を辞めたいとも発言しているので
こうしたマスコミの攻撃はほとんど効力がないどころか
かえってYouTubeへの導線になっています。
N国がマスコミの話題をかっさらったため
同時期に国政政党になったれいわ新選組は存在感がありません。
テレビしか見ない高齢者は見慣れたタレントへの愛着から
立花孝志を異常な人物とみなし、その人格を否定するかもしれませんが、
そもそもN国のホームグランドはネットであり端から相手にしていません。
むしろ18歳選挙権などでネットネイティブの若年層を意識しているのでしょう。

誰にも忖度しないからこそ全部自分の責任で動ける
フットワークの軽さはN国の最大の強みでしょう。
毒をもって毒を制すといいますが、
N国が挑もうとする相手は象徴的にNHKを仮想敵にしつつも
その先にあるのはあまりに強大な利権そのものです。
同時に参院で改憲勢力が3分の2を割ってしまった状況を利用して
憲法改正の発議に賛成する事をカードに
NHKスクランブル化を実現しようとするクレバーな政策も持ち合わせています。

安倍一強、自民党一強が問題だというのも日本人の共通の認識だと思います。
日本には二大政党制への憧れがあります。
政権交代を実現した民主党には失望し、
小池旋風で希望の党に希望を見た人もいたかもしれませんが、
結局、小池カラーが抜けて国民民主党になり
立憲民主党と統一会派になったことで悪夢の民主党復活に使われただけでした。
マニュフェストを信じたのに様々な利権によって平気で裏切る既存政党に対して
与党に対抗するには直接民主主義しかない
というN国の主張は一理あります。
しかし民主主義にも危険が潜んでいる事は常々語ってきている事です。
あのナチスも最も民主的と言われたドイツのワイマール憲法下で生まれたのです。
何でもかんでも国民の多数決に頼ればいいという訳にはいきません。
多くの国民が反対してでも実行しなければならない政策があるのも事実ですし、
長期的な利益を見据えて、
それを決断し、実行し、国民を導くのが本来の政治です。
また直接民主制が行えるほど一般国民に政治能力があるとも思えません。
間接民主主義にも意味があるわけです。

立花孝志は日本のトランプとも称されます。
一応、世界のブロック化が危険だという点は
立花党首も理解されているようですが、
NHKスクランブル化の実現後が問題です。
立花党首自身は政治家を辞めて解党すると明言していますが、
ワンイシューで当選した他の議員やその他残された党員が
どのような政治活動を行っていくのか慎重に見守る必要はあると思います。
立花党首に強いカリスマ性があることは誰もが認めるところでしょう。
その取り巻きが一種のカルトのように
過激性を秘めていることも認めざるを得ません。
良くも悪くもN国という現象は国内政治の最前線となっています。
現代日本の選挙や政治、社会の仕組みを理解するうえでも
若者にとってはこの上ない教材となるでしょう。

コメント

  1. patton より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    18歳の選挙権層はN国の存在意義がわからないだろう。親が払っているのだから。
    ただ社会人もしくは大学生となり一人暮らしを始めれば活動内容にも興味を持つだろう。
    しかし今のままでは予定調和で終わり今はヒール役でもYoutubeで活躍できるが、
    そのうち飽きられて検索されなくもなるだろう。
    しかも国家権力をかさに着せている部分も多く、マツコ・デラックスに力に物を言わせて降板させたり、竹島を戦争で取り返すという発言も問題ないとした。
    エンターテイメントではヒール役は大事だが政治の世界には要らない。
    いやあってはならない。その一言で国が動くのだ。慎重でなければならない。
    そういうヒール役がタブー視されている政治の世界でN国はやり過ぎた。
    正直いい評価を持っている人は少ないだろう。多いはずがない。
    これが常態化すれば先にも述べた通り予定調和になって、自滅する。
    Youtubeで人気があるのは政党に共感した人たちではない。
    ただ単に面白がってみているだけである。
    これが証拠に埼玉県知事選などにもN国は単独で立候補しているが見事に落ちた。
    精神的に受け付けないのだろう。これが日本の政治におけるヒールの限界だ。
    ワイマール憲法は民主的過ぎたためにそれをヒトラーに利用された。
    貴族などの権力を抑え実業家や労働者運動の指導者などに権力が向くシステムで、
    ヒンデンブルクによってヒトラーが首相の座に就くと、ワイマール憲法を逆手にとって独裁政治を始めた。
    ヒトラーはワイマール憲法の大統領大権という弱点を見抜いていたのである。
    結果、全権委任法によって世界で最も進んだ民主政治は破壊された。
    民主的とは何をもって民主的とするか。
    少なくとも今のN国のように一方的に力をかざすことが民主的とは言えない。

  2. マンマルX より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    >pattonさん
    N国は三年先の参院選を見据えた活動をしているので
    これから一人暮らしを始めNHK集金人の訪問を受ける若者は
    大いにN国の射程に入ってる可能性はありますね。
    YouTubeやSNSで露出を高めていますし、
    テレビに出ないネット系タレントとのコラボを連発しています。
    政治にエンタメを持ち込むのが
    多数の無党派層、ノンポリ層を取り込むN国戦略です。
    自分は結構侮れないのではないかと思っています。
    正義のためには手段を択ばないという立花党首の言動には
    ギョッとするような過激性を秘めていることも否定できませんが、
    巧妙なのは法律のギリギリを攻めているところです。
    マスコミ報道では編集されて頭のおかしいところのみが流されますが、
    動画を見るとその行動にはかなり周到に練られた戦略が見え隠れします。
    確かに今のままのヒールを続けるのには限界があります。
    いつかはヒールをやめなければならない。
    それは立花党首自身も語っていましたが、
    その転換がうまくいくかがN国の今後を占うことになると思います。
    私は今の民主主義体制が最高の政治体制とは思っていないのですが、
    三島由紀夫がやろうとしたクーデターも失敗しているので、
    現代日本で改革を行う手段としては
    危険な要素を孕みつつも直接民主制の一部導入しかないのかもしれません。

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