世界に誇る日本軍の兵器10選③~零式艦上戦闘機~

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零式艦上戦闘機

A6M3 Model22 UI105 Nishizawa
開戦初期無敵を誇ったゼロ戦

1940年(昭和15年)に正式採用された日本海軍の艦上戦闘機
いわゆるゼロ戦です。
大東亜戦争通して活躍した日本軍の主力戦闘機であり、
もっとも有名な日本の兵器でしょう。
連合軍側のコードネームは「ZEKE(ジーク)」
第二次世界大戦初期に無敵を誇り
連合軍パイロットから「ゼロファイター」と呼ばれ恐れられました。

日本軍が初めて飛行機を手に入れたのは1910年(明治43年)で
第一次世界大戦中に航空戦を研究し、
青島の戦いで初の爆撃、空中戦を経験しました。
当初はイギリスやフランスの複葉機を輸入していましたが、
比較的早くに空母での運用を目的とした戦闘機の純国産化を目指していました。
そもそも世界で最初に完成した新造空母は
1922年12月に完成した日本の鳳翔でした。

Carrier shokaku

艦上戦闘機は発艦着艦を想定するため、
短距離離着陸能力や低速能力、頑丈な構造、機体の軽量小型化など
通常の航空機よりも高い技術を必要とし、
陸上戦闘機が単葉機に移り高速化する中で、
長らく旧式の複葉機や
艦載機として水上機を運用するなど世界的に進化が遅れていました。
日本は1921年(大正10年)に
世界初の新造空母となった鳳翔に合わせて開発した
一〇式艦上戦闘機で国産化に成功し、
1936年(昭和11年)の九六式艦上戦闘機
近代的な全金属単葉戦闘機を開発します。
零戦は採用年の1940年が皇紀2600年にあたり、下二桁から名づけられました。
九六式の後継機で引き込み足を初めて採用した日本の艦上戦闘機でした。
こうして見ると日本は驚異的な速さ
航空技術を発展させてきたことがわかると思います。

日本の航空技術は開戦時点で高い水準にありました。
アメリカは開戦前から中国大陸で義勇軍フライング・タイガースを組織して
陸上戦闘機P-40ウォーホークなどでゼロ戦と対決しており、
日本の新型航空機の脅威を本国に報告していましたが、
その報告はほとんど無視されており、人種的偏見もあり、
未だに旧式の複葉機を使用していると思い込んでいました。
真珠湾攻撃と開戦初期の日本軍航空隊の活躍により
アメリカは大きなショックを受けることになります。

ゼロ戦の最大の特徴といえば航続距離の長さです。
日本は支那事変において
広大な中国大陸を長距離飛行する爆撃機を護衛する必要に迫られたため、
約2200キロという長い航続距離を有していました。
増槽タンクを付ければ3350キロも飛べました。
当時連合軍の戦闘機はだいたい航続距離1000キロほどで
ロンドンとベルリン間(片道約900キロ)を飛行し
戦闘を実施して帰還することは不可能だったので桁違いの性能であるといえます。
これは戦術的に非常に重要な点で、
対米戦争初期にフィリピンを強襲した際に
米軍は「近海に空母が潜伏している」
とみて数日に渡り戦闘機を出撃させ捜索しましたが、
実際には台湾から直接渡洋攻撃をしたのであって
空母は別の作戦に参加させることができました。
航続距離は単に飛行距離だけでなく
その分長く戦闘できるという意味でもあります。
洋上で戦う戦闘機にとってこれは大きなアドバンテージです。

もう一つの強みは格闘性能の高さ
他国のどの戦闘機よりも旋回性能が優れており、
最高速度は533.4km/hと高速で、
武装は20mm機銃2挺(翼内)と7.7mm機銃2挺(機首)
という強力なものでした。
当時のアメリカの艦上機F4Fワイルドキャットは
最高速度515km/h、武装は12.7mm機銃6門でした。
開戦当初、一対一のドッグファイトでゼロ戦に勝てる連合国戦闘機は存在せず、
米軍は新鋭機が出るまでサッチウィーブ戦法を生み出し、
一機の零戦に二機のF4Fワイルドキャットで対応する事になります。
初期の日本軍の破竹の進撃は
ひとえにゼロ戦のおかげであると言っても差し支えないでしょう。

一方で弱点として大きく取り上げられるのが防弾設備の貧弱さです。
もともとエンジンに関しては欧米には追い付いていない状況でした。
欧米では既にモータリゼーションが根づいていましたが、
日本は明治以来の急速な近代化に迫られたため鉄道網を広げることに注力し、
欧米並みにモータリゼーションが根付くのは
戦後の高度経済成長期を待たなくてはなりませんでした。
基礎工業力が低い日本は
出力の弱いエンジンで欧米機に対抗する必要がありました。
こうして考えだされたのが徹底的な軽量化です。
コックピット座席や内部構造に無数のくり抜き穴を開け、
ボルトやねじに至るまで徹底的に削りました。
零戦は10,430機という日本航空機史上最も生産された日本機ですが、
このような仕様は本来大量生産には向いていません。
防弾設備がない事については後に特攻に使用された経緯と共に
日本軍の人命軽視の体現であるとして批判の的となっていますが
同時期のスピットファイアの初期型も防弾設備がありませんし、
零戦も52型以降は防弾設備があり、
その他の日本機でも防弾設備のあるものもあるので
日本機の特徴というわけではありません。
またゼロ戦の主翼部分などには日本が独自で開発した
超々ジュラルミンという当時最新の合金を使用しており、
アメリカが開発した超ジュラルミンを上回る性能であり、
機体構造ではなく素材で強度を持たせるという発想がありました。

零戦は欧米の航空機の常識からは
180度違うアプローチから設計されたものである事がわかります。
日本はアメリカの工業力、物量に対して少数精鋭の職人技で立ち向かいました。
1942年7月に米軍がほぼ無傷の零戦をアリューシャンのアクタン島で鹵獲して
最強戦闘機の秘密を解明してからは
次々と開発される新鋭機により、零戦優位の状況は変わっていきます。
後継機の烈風も開発されましたが量産が間に合わず、
ゼロ戦はマイナーチェンジが繰り返され終戦まで使用されました。

第二次世界大戦の間に世界の航空技術は飛躍的に向上しました。
戦闘機は日本が志向した長距離飛行能力や格闘性能よりも
レーダーやミサイルの発明
レシプロ機からジェット機への転換が決定的となり、
一撃離脱の重武装、高速化へと進み、
冷戦期にはミサイル万能論が生まれ、
格闘戦を意識しない機銃のない戦闘機も開発されましたが、
現在のステルス化の時代になって
長射程のミサイルの撃ち合いは不可能になる可能性が生まれたことにより、
格闘戦が見直されつつあります。
現用機の特徴には流線型の設計全面的な沈頭鋲
視界良好な涙滴型のキャノピーなど日本機に先見性があります。

日本は基礎工業力が遅れていたとはいえ
ほぼ独力でアメリカよりも早くにジェット機橘花を開発しました。
このジェット機の存在は戦後進駐するまで
連合国には全く知られていませんでした。
しかし、戦後日本は航空機開発を禁じられたため、
航空技術は戦前と戦後で完全に分断されてしまいました。
ちょうどレシプロ機からジェット機の転換期だった事もあり、
技術的に大きなブランクができてしまいましたが、
現在でも軍事転用可能な複合材などの
化学製品でトップクラスの技術を持っています。
戦後はアメリカ機のライセンス生産から技術的蓄積を進め、
F-1で国産戦闘機開発に復帰し、
F-2ではアメリカとの貿易摩擦により共同開発となるも
長い間の念願だったジェットエンジンの独自開発に成功し、
2016年には日本製ステルス実証機心神が初飛行を成功させました。
2018年には国際協力の可能性も含めた日本主導のF-3開発が決定され、
護衛艦いずもの空母化も検討されており、
歴史的な航空機大国日本の復活の日も近いかもしれません。

X-2 First Flight
防衛装備庁 (航空自衛隊撮影)

コメント

  1. patton より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    ゼロ戦はスピードは速かったが、機体を極限まで軽く作ったため逆に機体がもろかった。
    最後までヘルダイブできない機体で敵機に急降下されるとゼロ戦はついていけず、
    欧州でメッサーシュミットと互角に戦ったスピットファイアは、ゼロ戦との初めての戦いで最初はゼロ戦を下に見ていたパイロットも劣勢に立たされながら急降下で逃げ切った。
    涙滴型キャノピーは最初日本でも「敵機が歪んで見える」という理由で却下されたりしていたんですけどね。
    欧州でも涙滴型キャノピーが開発されましたが、やはり歪んで見えたそうです。
    F-3の行方が心配です。国際協力になった場合、日本でアメリカのリベンジマッチであるYF-23とF-22の戦いが早くも行われてますね。
    自国開発になるのかどうなのか、エンジンはIHIで決定のようですが。
    私は心神がレーダー反射でうまい具合に結果を出したので、できれば自国生産してほしいと思っています。
    F-2のときのように日本が「これは特許を取らせてくれ」とアメリカに打診して「だめだ」と断られた二の舞だけは避けてほしい。
    でも戦闘機はもはや一国の力で作るのは限界であり、この辺のかみ合いが難しいです。

  2. マンマルX より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > Pattonさん
    国際協力でも日本主導でということがミソになりそうですが、
    アメリカのF-35の機密情報漏洩や
    オーストラリアの新型潜水艦開発で
    日本案落選が濃厚という情報が正式発表よりも前に漏れたことなど
    国際協力には技術・情報漏洩のリスクがあると思います。
    特にオーストラリアは経済面で中国に浸食されてるので
    どこまで信用できるのか不安な面があります。
    日本が今後、武器産業に参入していくことを考えても
    F-3はぜひとも自国単独開発を頑張ってもらって
    開発能力を誇示する方が有益だと思います。
    そうすることで
    将来的な国際共同開発の場合にも有利な交渉ができると思います。
    まだ共同開発は時期尚早な気がします。
    蘇りつつある日本の航空技術の芽を摘むことにならないことを願います。

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