世界に誇る日本軍の兵器10選②~八九式重擲弾筒~

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八九式重擲弾筒

八九式重擲弾筒は1920年代から30年代初期にかけて開発され、
終戦まで使用された日本陸軍のグレネードランチャー(軽迫撃砲)です。
グレネードランチャーは手榴弾をより遠くへ飛ばすための火器です。

Japanese50mmGrenadeMortar.jpg
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湾曲した台座が太ともにあてがうのにピッタリで
鹵獲した米兵からニー・モーター(膝撃ち迫撃砲)と呼ばれました。
その名の通り、片膝を立てた姿勢で腿の上に乗せて発射する物と
勘違いした米兵が実際に使用して怪我をしたという逸話が残っています。
このようなエピソードから珍兵器扱いを受けていますが、
実際には戦略的に非常に優れた兵器でした。

八九式は携帯可能だが低威力なライフルグレネードと、
強力だが重量があり携帯に不向きな迫撃砲
中間的なコンセプトで開発されました
この種の擲弾筒は各国で研究されましたが、
最も有効に運用したのが日本陸軍です。
米軍のM19 60mm 迫撃砲も当初は
八九式同様の携帯可能な擲弾筒として開発されましたが、
命中精度があまりにも低かったため底盤と二脚を装着し、
通常の軽迫撃砲と変わらない運用をする始末でした。

八九式重擲弾筒は50mmの口径を持ち、
45度の角度で立てた場合に800gの榴弾を最大で670m
後に開発された有翼弾では800m飛ばす事ができました。
また有効爆破範囲は半径10mという大きな破壊力を誇りました。
歩兵小隊に1~3本が配備され、
発射時には2人1組で各々が装填と調節・発射を担当、
運搬では3人1組で各々が弾薬を8~18発(約6.4~14.4kg)ずつ
専用の布製袋に入れ、担いで運搬しましたが、
小型で軽量なので一人でも運搬・発射が可能でした。
角度を固定しながらネジで射程調節が可能なため、
扱いに慣れた熟練の古参兵であれば百発百中の命中精度で、
集団が目標なら1発の榴弾で十人余りを殺傷できたと言われています。

アメリカ軍のM7ライフルグレネードと比較すると
有効射程150m程度で手榴弾と同程度の威力であり、
射程威力とも二倍は高性能でした。
またソビエトの50mm迫撃砲などと同等の性能を持っていながら
重量は半分以下という利便性の高さもありました。

八九式は迫撃砲を持ち込めないジャングルなどで大活躍しました。
歩兵が携行しているため陣地構築や目立つ運搬も不要で
どこからでも打ち込んでくる八九式は
アメリカ軍にとって対砲兵射撃で簡単につぶせる野砲よりも重大な脅威でした。
沖縄戦におけるシュガーローフの戦いでは、
擲弾筒が効果的に運用されたことが記録されています。
特に米軍の突撃小隊を支援する機関銃分隊に対し正確に撃ち込まれ、
頻繁に射撃後の移動を行わなかった
機関銃分隊は生き残れなかったと言われています。
破裂音が野砲並みに大きい事もあり
連合国軍に最も恐れられた日本軍の兵器の一つでした。

Soldiers Zhejiang Campaign 1942

日本陸軍というと前時代的な白兵戦が崇められ、
銃剣によるバンザイ突撃を行って
アメリカ軍による機銃掃射で空しくなぎ倒されるような
火力不足のイメージが付きまといますが、
八九式重擲弾筒は主にその機関銃相手に活躍し、
十分過ぎる火力を発揮した事がわかります。
もし地の利のある本土決戦が起こっていれば
米軍にとって大きな脅威となったことでしょう。

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