アメリカのシリア攻撃と朝鮮有事。

4日に行われたと見られる
アサド政権の反体制派に対する化学兵器使用を受け、
6日、ついにアメリカ、トランプ政権がシリア攻撃に踏み切りました。
アメリカが国連決議を待たずに単独で行った攻撃でしたが、
国連は形骸化した組織であり、
もはや紛争解決のための効果的な力は持っていません。

アサド政権の化学兵器使用はこれが初めてではなく、
4年前の2013年、オバマ政権下でも起こっていましたが、
この時、アメリカは一度軍事介入を決定したものの
イギリス、ロシアの反対を受け中止となっていました。
4年前と違うのはトランプ政権の誕生イギリスの支持です。
トランプ政権は先の日米外相会談でも
「オバマ路線は失敗だった」と明言していました。
この方針を今回のシリア攻撃によって行動で示したことになります。
そして前回反対したイギリスは一転、アメリカ支持を表明しました。
これはEU離脱によってアメリカに擦り寄らざるを得ない状況があります。
フランス、ドイツは共同でアメリカ支持の声明を出し、
アサド政権を支持するロシアやイランは今回も攻撃に反対しています。

トランプ政権で米露関係は好転すると期待されただけに
今回の軍事攻撃は大きな意味を持ちます。
米露二大国の対立構造は当面維持されるでしょう。
この状況は日本にとっては必ずしもマイナスとは限りません。
米露が適度に距離を置くことは日露外交の価値を高め、
北方領土問題を交渉のテーブルに置きやすくなります。

しかし、気になるのはISILの動向です。
ISIL討伐のために一度手を結んだ形になっていた米露でしたが、
ロシアはアメリカのシリア攻撃を受け
米露が2015年にシリア上空での偶発的衝突を避ける目的で署名した
「飛行の安全に関する覚書」の効力を停止すると発表しました。
対テロの協力関係が崩壊するどころか、米露の直接対決の可能性さえ感じます。
今回の攻撃は「化学兵器使用に対する報復」一度限りとしているようですが、
目的がどうあれ、実質ISILに利する環境になっています。

一方でアジアの我々が関心を寄せるのは
南北が混乱状態にある朝鮮半島情勢です。
北朝鮮はシリア攻撃の前日、5日に米韓合同軍事演習の抗議として
再びミサイルを発射し、その暴走は止まることを知りませんし、
韓国では先月31日、ついに大統領が逮捕されました。
朝鮮有事の可能性は過去最大の危機的状況です。
韓国のTHAAD配備をめぐって米中の対立も表面化しており、
東アジア全体に不穏な空気が流れ込んでいます。

President Trump with President Xi, April 2017

シリア攻撃の時を同じくしてアメリカでは
トランプ政権初めての米中首脳会談が行われていました。
会談では「米中関係が前進した」と前向きな評価をしましたが、
シリア攻撃は明らかに北朝鮮対策に消極的な中国に対する牽制でしょう。
会談でもトランプは「中国がともに行動しないのであれば、
アメリカは単独で対応する用意がある」

北朝鮮の実質的な後ろ盾となっている中国に制裁の輪に加わるよう迫りましたが
アメリカの本気を見せる事で中国の譲歩を引き出そうとする魂胆です。

記憶に新しい金正男の暗殺事件でも化学兵器が使われ、
北朝鮮が化学兵器を生産、保有しているのは確実となりました。
安倍総理も「化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないという
米国政府の決意を日本政府は支持する」
という
変わった支持表明を行いましたが、
これはまさに北朝鮮を念頭に置いた発言だったのではないでしょうか?

慰安婦像撤去に動じない韓国政府に対する抗議のため
駐韓大使を約3ヶ月も召還していた日本政府でしたが、
北朝鮮のミサイル発射の前日に当たる4日、
何の進展もないまま帰任させました。
国内では大使召還に大きな賛同があっただけに、批判が噴出しました。
しかしながら、この判断は朝鮮有事に備えて
韓国国内の日本人保護に務めるためだったのではないでしょうか?
実際に大使、釜山総領事召喚と釜山市関連行事への参加見合わせが解除され、
大使館機能は回復しますが、
その他の日韓スワップ中断などの経済的制裁は継続中です。

韓国政府がどうなろうと在韓日本人を無視することはできません。
このためにも大使館業務を正常化するのは重要です。
かと言ってこれから韓国に行こうとする人は
シリアに行くようなものなので控えるべきでしょう。
3月31日の大統領逮捕5月9日の大統領選挙の間、
この力の空白が一番恐れなければいけない時期です。
日本人が考えている以上に事態は深刻とみるべきでしょう。
アメリカのシリア攻撃はそれを裏付けている気がします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました