アメリカの公民権運動は1950年代から1960年代にかけて
1964年に公民権法が制定され、法の下で平等を勝ち取ってから
まだ半世紀、50年程度しか経過していません。
南アフリカに至っては1994年までアパルトヘイトが行われていました。
人種平等提案を第一次世界大戦後の1919年の段階で行った
日本は世界的に見てかなり急進的でした。
第二次世界大戦ではナチスドイツによるユダヤ民族迫害があり、
中国でもチベット、ウイグル民族の浄化が進められています。
こうした中で、1948年に世界人権宣言、
1965年に人種差別撤廃条約が結ばれました。
第二次世界大戦後に人種的平等はようやくスタンダードとなります。
アフリカやアジアを植民地にしていたヨーロッパは
二度の大戦で疲弊し、植民地を手放します。
日本の敗戦後、アジア諸国が相次いで独立を獲得し、
1960年はアフリカの年と言われ多くのアフリカ諸国が独立します。
一方、ヨーロッパはEUが作られ、地域統合が進みます。
ナチスの排他主義の反省もあり
ヨーロッパもアメリカ同様に積極的に移民を受け入れ始めます。
ベトナム戦争後、
アメリカ黒人はパウエル国務長官やライス国務長官など
軍や政府の重役を務めるケースも増え、
キング牧師の死から40年後、ついにケニアからの移民である
史上初の黒人系アメリカ大統領としてバラク・オバマ大統領が誕生します。
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第44代アメリカ合衆国大統領 バラク・オバマ |
明らかにアメリカ黒人の社会的地位は向上していきましたが、
オバマ大統領就任直後から
白人至上主義者によってオバマ大統領が暗殺されるとも言われました。
奴隷解放のリンカーン大統領に始まり、
マルコムXやキング牧師が暗殺されたように現実味のある問題でもありました。
一方でオバマがアメリカ大統領として被爆地訪問を実現させ、
銃規制について踏み込めたのは
彼自身が「黒人」であったからとも言えると思います。
そういう点ではアメリカの良心だったと言えるでしょう。
しかし現実問題としてアメリカ国内の民族間における経済格差は大きく、
2005年にアメリカ南部を襲ったハリケーン・カトリーナでは
黒人による略奪行為が行われるなど治安の悪化にも繋がっています。
アメリカ黒人の犯罪率の高さは黒人の地位を貶めていますが、
これも歴史的な差別からくる経済的困窮が影響しているのです。
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(出典:ioerror) |
このような経済格差は移民を受け入れたEUの中にもあります。
またそれに加え、
近年は世界中でテロが拡大したことで移民規制が強化されています。
特に9.11以来、現在のISILまでイスラム過激派のテロにより、
イスラム系移民に対する憎悪が強調され、新たな民族差別が生まれています。
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(出典:Gage Skidmore) |
共和党の次期大統領候補のドナルド・トランプは
メキシコ国境に壁を作ると発言し
メキシコ移民に対する露骨な人種差別発言を行っています。
公民権運動に反対していた民主党から黒人大統領が誕生し、
奴隷制解放の北軍にルーツを持つ共和党から
差別主義者の大統領候補が生まれるという皮肉な展開です。
イギリスでも移民を防ぐためにEU離脱の声が高まっていますが、
ナチスのユダヤ人迫害然り、こうした排外的主張や政策は
裏を返せば自国経済、治安を守るという面があります。
しかし、アメリカは建国以来からの移民国家です。
数々の困難を乗り越えてついには黒人大統領を輩出するにまで至りました。
次はマルコムXも信仰したイスラムとの和解のはずです。
ここまで来てアメリカの歴史的偉業は無に帰することになるのか?
これを判断するのもアメリカ人自身です。
現在も人種差別は完全になくなってはいません。
黒人や移民などマイノリティーの戦いは道半ばなのです。
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