和解の力。

安部総理が26日、27日にかけてハワイを訪問し、
27日にはオバマ大統領とともに
現職の総理大臣としては初めてパールハーバーを訪れ、
アリゾナ記念館を見学しました。

USS Arizona Memorial (aerial view)
アリゾナ記念館

去年4月のアメリカ連邦議会上下両院合同会議での安倍総理の演説、
今年5月の広島でのオバマ大統領の演説など、
オバマ大統領と安倍総理の4年間によって
日米和解の下地が築き上げられてきました。

思えば安部総理就任当初は
会うのも嫌というほど日米関係が冷え込んでいました。
この原因は普天間基地移設問題など
民主党政権下で起きた様々な日米の軋轢に加え、
安倍晋三という人間自体タカ派で
戦後レジームからの脱却を志向するなど
独立志向が強く、アメリカに利すると見られていなかったからでした。

しかし、安部総理がまず進めたのは日米関係の修復でした。
中国の侵略が間近に迫っていたのです。
当初参加に否定的だったTPPにも参加し、
集団的自衛権行使容認をはじめ、
アメリカの賛意を得ながら国内の反発も乗り越えました。

今回の訪問はハワイ出身のオバマ大統領が休暇をとって
この日ハワイに居ることを知った
安部総理から申し入れたということになっているようです。
トランプとの初会談と共に並外れた行動力を物語っていますが、
安倍総理の退役軍人に対する抱擁など、どこかで見た光景で、
やはりオバマ大統領広島訪問の返礼のように見えます。
広島と真珠湾を同列に扱うのは違和感があり、
この部分で国内で反発も起こりそうですが、
日米衝突の最初と最後の舞台という意味では共に象徴的な場所です。
お互いに歴史観があるので、
謝罪という形式は取らない一定の配慮はされています。

President Barack Obama and Japanese Prime Minister Shinzo Abe visit the USS Arizona Memorial. (31150731523)

安部総理にとって、パールハーバー訪問は
昨年末の日韓慰安婦合意
今年5月のアメリカ大統領広島訪問と共に
歴史問題に対する精算を象徴し、
「和解」という形を取り、未来を捉える安倍総理の姿勢は
アメリカ国内で危険な歴史修正主義者というレッテルを払拭するばかりでなく、
歴史問題を武器に攻勢を強め、日本の再軍備を妨害し
沖縄侵略を伺う中国に対する最大のメッセージとなります。

任期を終えるオバマ大統領にとっても、
核軍縮を訴えてノーベル平和賞を受け取ったことの答えとして
現職大統領としての広島初訪問は
実態は別として形式上の実績を残す形となり、
今回の日本国首相との故郷ハワイのパールハーバー訪問も
キューバとの国交正常化など「和解」を訴えてきたオバマ大統領としては
自身の最後の外交舞台として最良の場所だったでしょう。

欧州など世界中で孤立化が進む中で、
日米両国は「和解の力」を訴えてきました。
パールハーバー訪問はその集大成だったと言えます。

今回の訪問自体は全面的に評価しますが、
オバマは日本との友好をアピールする一方で、
大統領選のトランプ当選にプーチンの関与を公言し、
ロシアに制裁を加えるとしています。
そのロシアに日本は近づこうとしている
日米のわだかまり対ロシア政策沖縄問題などまだまだ残っています。

そしてレームダックのオバマにもはやアメリカ国民も関心はありません。
問題はトランプ就任後のアメリカです。
在外米軍の撤退TPP離脱など孤立化を進めるトランプによって
安部総理とオバマ大統領で取り組んできた
TPPや日米同盟強化という外交的成果が全て無に帰す可能性もある。
つまり今回のパールハーバー訪問の最大の狙いは
日米共にトランプ政権に対する牽制だったのです。

The USS Arizona (BB-39) burning after the Japanese attack on Pearl Harbor - NARA 195617 - Edit
日本機の攻撃で沈むアリゾナ

北方領土返還のためには
在日米軍の撤退をロシアから要求されるかもしれません。
それは日米同盟の後退という形となり、
中国の侵略を助長するかもしれません。
これを防ぐためには日本独自の防衛力強化が必要になります。
プーチンとトランプがこれを本当に受け入れるのか?

真珠湾という悲劇を繰り返さないために
今後、日米両国がどういった関係を築いていくのか?
これがゴールではなく、スタートな気がします。

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