8月16日、アメリカのトランプ大統領とロシアのプーチン大統領の会談が
アメリカ、アラスカ州のアンカレッジの米軍基地で行われました。
アラスカ州は北太平洋、ベーリング海峡にある米露国境に近い北米大陸にあり、
かつてはロシア領であり、アメリカに売却されたという
米露関係史の象徴的な場所です。

米露会談の裏側
ロシアによるウクライナ侵攻以来初めてとなる米露首脳会談であり、
ロシアとウクライナの戦争の仲介役となり、
早期停戦を求めるトランプ大統領に応じて行われた会談です。
当然、ウクライナ問題を中心に議論が交わされたと思われますが、
プーチン大統領は「ウクライナの非軍事化、中立化」など
紛争の根本原因除去を求める従来の主張を繰り返し、
トランプ大統領は即時停戦という主張を取り下げるなど、
終始ロシアペースであったとされます。
共同記者会見では先にプーチン大統領が話し、
最後にはトランプ大統領に「次はモスクワで」と語りかける余裕っぷりでした。
当初は大統領同士の1対1の会談予定でしたが3対3の会談となり、
アメリカからはトランプ大統領の他、
マルコ・ルビオ国務長官とスティーブン・ウィトコフ中東担当特使が出席、
中東問題などウクライナ問題に固執せず、米露で多角的な話し合いがされたと思われます。
ウクライナ問題で合意できず、取りやめになったものの
経済担当閣僚を交えた拡大会合も行われる予定でした。
アメリカにとってのウクライナ問題の優先度はこの時点でかなり下がっていた可能性が高く、
私はこの会談のメインテーマは他にあったのではないかと勘ぐります。
それは北極海航路についてです。
北極海航路
北極は南極と違い大陸がなく、海が広がっています。
ただ、海といえど氷山が広がっており、
特に冬には氷域が拡大し、凍った海では大型船の往来が難しいのです。
国境の多くを北極海に接するロシアが不凍港を求め、
歴史的に南下政策を繰り返した所以でもあります。
ところが近年は地球温暖化の影響で、北極の氷が溶け始め、
将来的に通年で大型船が往来できるようになると言われており、
そうなるとアジアとヨーロッパの距離はさらに近くなり、
北回り航路の戦略的価値は飛躍的に上がります。
北半球各国が北極海における資源採掘や港湾建設による
経済的利益を獲得しようと動いており、
最大の恩恵を受けるのがロシアなのです。
これは経済だけでなく軍事安全保障の観点でも非常に重要です。
氷下での追跡が困難な事から、北極海は原子力潜水艦の寝床となっています。
また、ウクライナ侵攻に起因する西側の経済制裁を受け、
ロシアは北極海開発におけるパートナーとして中国との関係を深め、
2024年10月には中国海警局が初めて北極海入りし、
ロシア軍と共同訓練を行いました。
アメリカが世界最強の国家となっているのは
資源豊富で肥沃な新大陸にありながら
東は大西洋、西は太平洋、南はカリブ海、北は北極海に囲まれており、
旧大陸から適度に離れているという地政学的な理由があります。
しかし、北極海の氷が解ければロシアとの距離はより近くなり、
安全保障上の脅威が高まる可能性が高い。
2期目のトランプ大統領が
カナダに対して「51番目の州になればいい」と軽口をたたき、
デンマークに対して「グリーンランド買収」に意欲を示した狙いは
まさに北極海航路が背景にあり、21世紀型のモンロー主義です。
今回、トランプ大統領はウクライナ問題をディールの道具に使い、
まさに北極域であるアラスカ州の米軍基地という象徴的な場所で
北極海を米露で分け合おうと何らかの取引をしたのではないでしょうか?
中国の北海道開発

参加国(青)とオブザーバー(水色)
※2013年、アジア五カ国(日、中、韓、インド、シンガポール)の
オブザーバー参加が認められた。
日本は北極国ではないですが、北極問題は無関係ではありません。
2013年に日本、中国、韓国、インド、シンガポールの
アジア五カ国が北極評議会のオブザーバー資格を取得し、
北極開発の積極的関与を強めている中で、
中国は日本と同じ非北極国であるのにも関わらず、
2018年に自らを『北極近隣国』と新たな概念で定義し、
一帯一路政策の一環として氷上シルクロードを謳い、
北極開発に並々ならぬ野心を持っています。
北極海からベーリング海峡を通じ中国大陸へ及ぶ最短ルートにぶつかるのが
我が北海道です。
北海道の多くの土地が近年、中国人に買い漁られている事は
多くの日本国民にも知られるようになりました。
ニセコや倶知安町といった観光ビジネスの点で捉えられているケースが多いですが、
特に注目するのは釧路市です。
最近も釧路湿原における森林伐採とメガソーラー建設が
タンチョウの生息への影響や環境破壊につながると問題になっていますが、
中国は世界最大の太陽光パネル生産国であり、
釧路のメガソーラー事業への中国資本の関与が疑われています。
また、釧路には釧路日中友好協会という組織が存在し、
中国大使が度々訪れ、中国政府要人の往来もあります。
釧路市は近年、中国語教育に力を入れており、
中国政府のスパイ機関疑惑もある札幌大学孔子学院が中心となり
釧路の公立大学にサテライト教室の設立を画策しているとの情報もあります。
中国が推進する氷上シルクロード政策において、
釧路港は「南のシンガポール、北の釧路」と称される
アジアの新たな玄関口と位置付けており、
この戦略的重要性に、中国政府も目を付けているのです。
北極点で見る地球儀
日本も地球儀を俯瞰する外交を北極点中心で考える必要があります。
北欧諸国に比べれば緊迫感はないかもしれませんが、
同盟国のアメリカと敵対国ロシアが日本の頭越しに手を取り合い、
北極海での利益を独占し、
ベーリング海峡を閉鎖されることには危機感を持つ必要があります。
特に北方領土問題は永遠に解決されなくなる可能性があります。
故安倍元総理はこのような北極海航路の将来を見据えて、
ロシアに北方領土での共同経済活動を提案し、
領土問題解決と平和条約締結という日露の懸案解決に奔走したのです。
しかし、日露交渉はロシア軍のウクライナ侵攻以来頓挫したままであり、
この間にも中国系企業は北方領土での経済活動を進めています。
もちろん東アジアという枠組みで考えれば
北極海航路の整備には日中共通の利益もあることも事実なので
中国脅威論の一面だけを捉えるのではなく
戦略的互恵関係を考えて政策を行う必要もあるでしょう。

(出典:文部科学省)
2025年の3月には愛子内親王殿下ご臨席の元、
新型の砕氷研究船「みらいⅡ」の推進式が行われました。
日本は戦前、千島列島や南樺太を領有しており、既に砕氷船を保有していました。
アジアで最も早い段階で北極開発に参入したのが日本なのです。
中国が北極近隣国を名乗るなら日本の方がより北極に近いと言えます。
地政学の根本的な転換が迫る中で、
日本は国際ルールに則り、技術力を活かしながら確固とした利益を求めていく必要があり、
インド太平洋戦略に北極海をプラスした
複合的な国家戦略を考えなければなりません。



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