5月25日から28日にかけて
令和初の国賓としてトランプ大統領が来日しました。
天皇皇后両陛下にとっても即位以来最初の大仕事となり
その動向が注目されていました。
両陛下とも海外留学の経験がおありで
通訳なしでトランプ大統領夫妻と会話になるお姿を見て頼もしく感じましたね。
トランプ大統領夫妻もリラックスしていたように見受けられ、
新時代の皇室外交という感じがしました。
皇后陛下も元外交官という経験を存分に生かしてお勤めになっていました。
心なしか自信が漲っている表情で、見事な快復ぶり本当に良かったと思います。
ゴルフ場で記念撮影する両首脳 |
アメリカの国鳥「鷲」をあしらった大統領杯を渡すトランプ大統領 |
三日間、安倍総理との恒例のゴルフに大相撲観戦(大統領杯)と
日本滞在を満喫したトランプ大統領ですが、
横須賀基地に停泊している
いずも型護衛艦かがに安倍総理と共に乗船したのは
まさに日米同盟の歴史的な出来事でした。
かがの格納庫で日米将兵を前に演説する両首脳 (出典:防衛省・自衛隊) |
アメリカ大統領が日本の護衛艦(軍艦)に乗船するのは
戦前戦後を通しても初めての事で
第二次大戦中にニューファンドランド島沖の
イギリス戦艦プリンス・オブ・ウェールズに
チャーチル英首相とルーズベルト米大統領が乗船した
大西洋会議を彷彿とさせます。
日米同盟は当時の米英同盟レベルに引き上げられたとも言えます。
戦艦上のルーズベルトとチャーチル。 皮肉にもこの船は第二次大戦で日本軍によって沈められることになる。 |
このかがは一番艦いずもとともに空母に改修されることが決まっています。
改修されたいずも型には米国から購入したF-35Bが搭載されるので
トランプ大統領にとって
貿易面での成果をアピールする舞台という側面もありますが
日本の防衛力強化には北朝鮮、そして中国に対するけん制の狙いがあり、
日米共に利害が一致しているわけです。
日本にとってはこれまで専守防衛という国是から
空母の保有には消極的で、周辺国の反発も予想されました。
しかし周辺地域の不安定化から集団的自衛権の行使容認と共に
アメリカのお墨付きを得ながら再軍備を実現しました。
次は国産主力戦闘機搭載へのステップでしょう。
今回のトランプ大統領の訪日は
中国の海洋進出に対抗する自由で開かれたアジア太平洋戦略を
日米で共有する意志を空母に改修されるかがへの乗船で明白にし、
米朝会談決裂後も引き続き対北朝鮮で協力することを
拉致被害者家族と再び面会することで明確にしました。
このように安全保障に関しては100点以上の成果だったと言えるでしょう。
しかし、全ての問題で日米が合意できたわけではありません。
懸案の経済問題、日米FTAに関しては
トランプ発言から参議院選挙後まで先送りとなることが明らかにされました。
Twitterでは「素晴らしい合意になる」とフライング発言を行い、
共同記者会見でもわざわざ「TPPには縛られない」と念押しの発言があり、
TPP水準を求める安倍総理を面前でけん制するピリッとする場面もありました。
野党は選挙後に何らかの合意があり、
それもアメリカに有利な合意になると見ていて
選挙前に合意内容を明らかにするように政府に求めていますが、
日米交渉でどちらが優位な立場にあるかは実際のところ微妙
といったところでしょう。
たしかにこれまで日本政府は
アメリカの政治的要求をほとんど受け入れてきましたが、
日本がリーダーシップをとるTPPは現在進行形で拡大交渉がされており、
日本とEUの間でも経済連携協定(日欧EPA)が結ばれています。
出来るだけ早期にFTAを結びたいと思っているのはアメリカの方で
日本のほうが優位な立場であるとさえ言えます。
交渉が長引けば長引くほどアメリカが不利になるだけなので、
TPP並みの合意で、F-35の大量購入で手打ちにするのが
実際の落としどころではないかと思います。
安全保障では日米同盟を深化しつつ
経済では世界の自由貿易を牽引し保護主義を取るトランプ政権に対抗する。
安倍総理は非常にクレバーだと思いますし、
トランプ相手に良く戦っていると思います。
6月にはイラン訪問が決まり、
日本が対立深まるアメリカとイランの仲介に乗り出すことになります。
トランプ来日前にイラン側から日本に泣きついてきた形ですが
今回の首脳会談でも北朝鮮、中国問題のみならず
イラン問題も議題に上がったでしょう。
難しい交渉だと思いますが、これをまとめられればノーベル賞ものです。
なぜ日本が遠いイランとの仲裁に?と思われるかもしれませんが、
日本は中東諸国からほとんどの石油を輸入しているわけで、
イランはその筆頭でした。
イラン核合意を離脱したアメリカは
イラン産の原油輸入を禁止する経済制裁を発動し
原油を輸入に頼る日本を含めた数ヵ国は代替えエネルギーに切り替えるために
一定期間適応を除外されていましたが、この5月に打ち切られました。
その間に原油の輸入に占めるイラン産の割合は約3%程度まで低下したので
現状、日本のエネルギー供給への影響は限定的とみられていますが、
いずれにしても
イランとの歴史的な友好関係に空白を作ることになりかねませんし、
脱原発に傾く日本にとって安定的な石油供給は死活問題で
そのためにも中東和平は欠かせません。
このイラン訪問に際して
事前にスンニ派のサウジの了承を得ている点非常に用意周到です。
こんな真似は政治的宗教的に中立な日本でなければできないでしょう。
安倍総理はかねてから地球儀を俯瞰する外交、
積極的平和主義を訴えてきましたが、
2019年(令和元年)、G20も開催される日本が
主体性を持ってダイナミックな外交が展開されます。
これでもまだ日本はアメリカの属国と言えるのでしょうか?
コメント
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「かが」にアメリカ大統領が乗ったことが話題になるように、
アメリカでは「日本の防衛をアメリカが握っていれば、貿易で勝てる」と言われている。
実際問題として日本がある程度自主防衛ができなければ、この縛り付けは続くだろう。
F-35Bの爆買いはカタパルトのない空母発着を考えたとき通常型では無理があるので、仕方のない選択だったと思う。
F-3のIHIのエンジン推力では空母運営には物足りないだろう。
日本としてはF-35爆買いを口実にアメリカに媚びを売った形だ。
これで手打ちにできればいいのだが、アメリカは韓国に鉄の関税を上げると脅し、
アメ車の購入を無理やりねじ込んできた。
アメリカと韓国はFTAを結んでいる。しかし現実はこんなもんだ。
おっしゃる通り、日本とのFTAに関して焦っているのはアメリカだ。
アメリカは来年選挙だ。実績を上げなければならない。
先ほども書いた通り「日本の防衛をアメリカが握っていれば貿易は勝てる」という現実が付きまとう。
しかし日本は日本車の工場をアメリカに作ることをすでに約束している。
トランプ氏もこれには満足気味だ。
トランプ氏を支える低所得者層に十分アピールできただろう。
それにどうやらトランプ氏は日本好きだ。外交はうまくいっている。
問題は貿易一つ。鎖を断ち切れるか。
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TPPや日欧EPAと相次いで巨大な自由貿易圏を築いている日本なので
米韓FTAほど一方的な結果にはならないと思いますが、
やはり防衛に対するアメリカ依存にどれほど影響があるかという所ですね。
平和安全法制など少しずつ平等な同盟関係になりつつあるとは思いますが、
F-35の大量購入は空母の艦載機という口実にもなりますし、
日米双方に利益がある良い判断だったと思います。
日本は経済合意を結んだTPP加盟国やEU以外にも
ロシアや中国、そして今回のイランなど
アメリカに批判的な国ともうまくやっているので
最終的には一対一の交渉とは思いますが、
G20議長国という立場を利用してうまく交渉してもらいたいですね。