こんばんは。
中東情勢は悪化の一途をたどっています。
イスラエルはヒズボラ殲滅のため、
連日の空爆に続いて、10月1日未明についにレバノンへの地上侵攻を開始しました。
2006年以来の大規模侵攻となります。
ヒズボラを支援するイランは侵攻の数時間後に
報復としてイスラエルへの弾道ミサイル攻撃を行いました。
イスラエルによる先月27日のレバノン南部への空爆では、
ヒズボラの指導者ハッサン・ナスララ師も殺害されており、
イランの最高指導者ハメネイ師は報復を宣言していました。
グレードを上げたイランの報復
今回のイランの攻撃は無警告で行われました。
また超音速兵器が使用されたとみられ、
イスラエル軍自慢のアイアンドームも防ぎきれず、
数多くのミサイルが、地上目標に着弾した映像も流れてきています。
イスラエルが追加的に戦域を広げたことで
イランの攻撃のレベルも上げてきています。
イランはイスラエルが応戦しなければ継続的な攻撃はしないと、
またしても抑制的な姿勢をとっており、
あくまで限定的な攻撃としています。
一方で「戦争は望まないが、戦争を恐れてはいない」
「戦争の準備はできている」と強気な側面も見せていて、
暴走するシオニズム政権はさておき、
イスラエルと関係が深く、実質的にイスラエルを支援している一方で、
軍事大国イランとの衝突までは望まないアメリカに対してのメッセージでしょう。
「モザイク国家」

レバノンはイスラエルの北隣、地中海に面した国家で、
ヨーロッパとアラブ諸国の中間にあります。
歴史的にキリスト教徒が多く、第一次~第二次世界大戦後独立した
アラブ国家の中では珍しいキリスト教徒中心の国家ですが、
様々な経緯からキリスト教、イスラム教シーア派、スンナ派など
各宗派の人口比が均等に入り交じるためモザイク国家と呼ばれています。
レバノンのキリスト教徒はマロン派と呼ばれ、
第一次世界大戦で長らくレバノンを領有していたオスマントルコを倒し、
戦後にレバノンの宗主国となったフランスは
マロン派の独立運動を削ぐために意図的な分断工作によって、
小レバノンに大レバノン(現在のシリア)を組み込んだため、
アラブ系の人口流入が起こり、レバノンのアラブ化が進みました。
この辺りはパレスチナ問題におけるイギリスの二枚舌外交とよく似ています
元々は比較的安定した国家でしたが、宗教による血なまぐさい争いに発展し、
1975年から1990年にかけて断続的に行われた
レバノン内戦からは政情不安が続いています。
ヒズボラはイランが支援するイスラム過激派組織と呼ばれますが、
れっきとしたレバノンの政党で国内で一定の議席数を持ちます。
イスラエル建国により生まれたパレスチナ難民の多くが隣国のレバノンに逃れたため、
反イスラエル組織の拠点がレバノンの首都ベイルートに置かれ、
レバノン人の多くがハマスのイスラエルへの奇襲に肯定的です。
怯えるゴーン
日産車体の元CEOだったカルロス・ゴーン氏も
マロン派のフランス国籍を有するレバノン人です。

(出典:厚生労働省)
2018年11月、金融商品取引法違反で東京地検特捜部に逮捕され、
保釈中にスーツケースに身を隠して関西空港からレバノンに逃亡しました。
2020年に発生したベイルート港爆発事故では、逃亡先の住居が破壊され、
今度は戦争がやってきました。
大人しく日本に居た方が安全だったかもしれません…。
シオニストの膨張
イスラエルは南部のガザ地区に続いて、
北部国境を接するレバノンにも地上侵攻を開始しました。
ガザのハマスはイスラエルにとって国境内の内なる脅威ですが、
レバノンを拠点とするヒズボラは国境を接する外国にあり、外なる脅威です。
イスラエルの攻撃は全方位的で見境がなく、
中東戦争の拡大は避けられない状況です。
むしろネタニヤフ首相はそれを望んでいるかのようです。
イスラエルの外相は
パレスチナに同情的な国連のグレーテス事務総長を入国禁止にするなど
常軌を逸した言動をとっており、
イスラエルに反対する一切の意見を受け入れない姿勢です。
国連の職員もイスラエルの空爆の犠牲になっています。
近い将来、イスラエルは国連を脱退するかもしれません。
ウクライナ問題をはじめ、
こういう状況を見るに国連は全く機能していません。
イスラエル周辺は西の地中海を除いて敵国に囲まれている
地政学的に非常にシビアな状況なのは建国以来変わっていません。
なので追加的に領土を拡張したいという思いがあるのは明らかです。
軍事力があればそれが可能で
実際に一時期はエジプトからシナイ半島を奪い、
シリアのゴラン高原は今でもイスラエルの支配下にあります。
しかし、それは明らかな侵略行為です。
当初、反イスラエルで一枚岩だったアラブ・イスラム諸国も
イスラエルの軍事的政治的有意な状況から
エジプトが切り崩され、サウジも懐柔されてきました。
唯一イランだけが、まともに対峙できる軍事国家となりました。
他の中東諸国は今回の中東危機に対して、静観していますが、
基本的にイスラエルの自衛権の範囲を超えた軍事行動に反対の姿勢をとっています。
国際社会との共存
イスラエルはユダヤの教えに基づいた行動だと自らを正当化しています。
ユダヤ人の苦難の歴史を全世界が共有することで
一種の同情感がイスラエル建国に結びついたことは事実ですが、
それとこれは全くの別であり、
自らの生存権を認めたある意味で生みの親である国連を無視して
独善的な行動をとっているのはイスラエルの方です。
イスラエルを招待しなかった長崎市の原爆祈念式典に
日本を除くG7が欠席したように
自制を促しつつも基本的に欧米はイスラエルの肩を持つようですが、
自らを「神から選ばれた民(選民)だ」という主張を押し切って、
なりふり構わず行動するのは
イスラム過激派のジハード(聖戦)と大差がありません。
こうした行動をとり続けるなら
再び世界にネオナチを始め反ユダヤの思想が広まるだけです。
「やはりヒトラーは正しかった」
などと世界中で歴史観の見直しさえ起こしかねない状況です。
バイデンもネタニヤフには手を焼いており、イスラエルの北朝鮮化が止まりません。
無差別テロはどんな状況であろうと許されませんが、
自国が他国や国際社会にどう思われているのか、
冷静かつ客観的に見なければ決定的な破滅を招来するだけです。
日本もかつては国際社会と決別し、
自国の生存権の拡大のみに活路を見出した過去があります。
新しく首相に就任した石破総理は
アジア版NATOに意欲を示していますが、
アメリカやインドをはじめ、友好国にも一蹴されている状況です。
もちろん他国にどう思われようが「日本が何か企んでいるぞ」と
中国や北朝鮮、ロシアといった仮想敵国に睨みを利かせる事は重要です。
自国で主張すべきところは主張し、対話によって協調関係を築いていく
その努力がこれまで以上に重要な時世にきているのです。
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