安倍総理が6月12日から14日にかけてイランを訪問し
12日にはロウハニ大統領との首脳会談、
続く13日には最高指導者のハメネイ師との会談が行われました。
日本の総理大臣としては41年ぶりとなるイラン訪問でしたが、
前回は革命直前だったので革命後としては初めての訪問となります。
(出典:首相官邸) |
イラン革命を機に
世界の石油産業を牛耳ってきた石油メジャーの
欧米を始めとする西側諸国との対立が始まり今日に至りますが、
イランにとって西側で唯一と言ってもいい友好国が日本です。
第二次大戦後、イギリスから独立したイランでしたが、
石油資源は依然イギリス資本に独占されている状況でした。
こうした中でイランは石油の国有化を宣言します。
イギリスはこれに対抗し中東に軍艦を派遣し海上封鎖、
イランに石油買い付けに来たタンカーは撃沈すると国際社会に宣言し、
イランに経済制裁を加えました。
その時、出光興産の日章丸という船が
イギリス軍の包囲網をかいくぐり買い付けに来たエピソードから
イランは革命後も日本に親近感を持っています。
当時、日本はGHQの進駐が終わったばかりで
連合国との関係上、独自ルートで石油取引することが難しく
経済成長の足かせとなっていました。
石油が欲しい日本と石油を売りたいイランとの利害が一致していたのです。
その後の日本の高度経済成長を支えてきたのも中東の石油でした。
高度経済成長の終焉は中東戦争とイラン革命に起因する
オイルショックが原因ですからこれは明らかです。
こうした歴史的な交流から
軍事的緊張が高まるアメリカとイラン両国の仲介役として
日本の安倍総理に白羽の矢が立ったのです。
アメリカがイラン核合意を離脱して
イランと石油取引した国には制裁をするという状況は
イギリスが海上封鎖してイランと石油取引したタンカーを沈めるとした
日章丸事件当時の情勢と同じなのです。
政府は今回の訪問を仲介を意図せず
あくまで国交樹立90周年を記念するものだと説明していますが、
直前にトランプ大統領、
その少し前にはイラン外相が日本に訪れていたことから
緊張緩和が重大なテーマであったことは明らかで
世界もその動向に注視していました。
私も以前から日本しかできない中東和平を訴えてきて
ようやくその時が来たことを嬉しく感じましたが、
やはり事はそう簡単にはいかないようです。
40年に渡るアメリカとの係争が
たった一回の、それも第三国の首脳会談で解決するはずもないのですが、
日本としては原油の安定的な供給が最大の目的で
イランとアメリカの緊張状態を緩和させ、
イランとの石油取引を通常通り再開させるのが課題でした。
13日のハメネイ師との会談では核武装を否定する言質を取りましたが、
トランプ大統領との対話は拒絶されてしまいました。
それだけで終わるならとにかく
会談中にホルムズ海峡で日本の海運会社が運航するタンカーが攻撃を受ける
という日本が最も恐れていた事態が発生します。
オイルショックの再来になりかねない事件です。
攻撃を受けた「コクカ・カレイジャス」 左側円が損傷箇所、右円は吸着水雷の不発弾とみられる物体。 魚雷や水雷なら水面より上部に被害を受けるだろうか? |
アメリカはさっそくタンカー攻撃をイランの魚雷、機雷攻撃だと断定し、
「仲介に来た日本を侮辱した」とイランを非難する声明を出し、
不発の機雷を回収する様子を捉えたとする証拠映像を公開し、
攻勢を強めています。
なんとも用意周到です。
イギリスやサウジなどの周辺国もアメリカに同調する姿勢を見せていますが
乗組員からは魚雷や機雷ではなく何かが飛来してきたと矛盾した証言があり、
図らずしも当事国となってしまった日本は
アメリカに同調せず客観的証拠を提示するようにアメリカに求めています。
日本は常任理事国でもなければ核保有国でもない。
イラン核合意にも参加していないので
経済大国でありながら政治的影響力に限界があることは事実です。
そのため安田純平さんの件と言いかえって各勢力に利用されやすいのです。
しかしイラン側から
日本との外交関係を悪化させるような事をする理由がありませんし、
ハメネイ師との会談の最中というタイミングを考えても
何やら怪しい陰謀の匂いがします。
アメリカCIAが仕組んだのか?
イスラエルの諜報機関か?
はたまたイラン国内の過激派が行ったのか?
真相はまだ分かれませんが、
被害者である日本がイランの仕業であると認めていないのですから
アメリカの先走りに違和感が出てくるのは当然です。
トランプ大統領は初の米中首脳会談の際にシリア空爆を開始したりと
何かと絶妙なタイミングで仕掛けてきます。
アメリカは今回の事件を日本に対して
「我々の味方に付くのかどうなのか」という踏み絵にしているようです。
アメリカと日本が協力し進めているインド太平洋戦略でも
インドから西では考えの違いに温度差があります。
日本はアメリカにまんまとはめられました。
イラン核合意を離脱し、空母を展開して
軍事的緊張を一方的に高めているのはアメリカの方です。
最後に足りないのは相手からの先制攻撃です。
先に相手に手を出させる(手を出したように見せかける)
のがアメリカの常套手段で
アラモ砦に始まり、メーン号、ルシタニア号の沈没、
真珠湾、トンキン湾と歴史的に繰り返されてきました。
安倍総理の仲介外交とそれに水を浴びせるタンカー攻撃は
武力行使の正当性を訴える口実として利用されているのが現状です。
イラク戦争での小泉総理のように
安倍総理がすぐアメリカに同調しなかったのはまず正解ですが、
ここまで来てしまったらアメリカの圧力に負けずに
気をしっかり持って中東和平への努力をしていただきたいです。
大阪で開かれるG20がかなり重要な意味を持つことになりそうです。
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