台湾問題（続）。

台湾には本省人、外省人という言葉があります。
日本統治時代により文明化を果たした台湾民族は日本人でもありました。
当時から台湾にいる人々を本省人といいます。
日本の敗戦により台湾島は漢民族の中華民国（国民党）に割譲されます。
その後、大陸からの渡航者を外省人といいます。
つまり二つの中国問題だけでなく台湾の中でも二つの勢力が存在するのです！

台湾の歴史

オランダ領有時代

もともと台湾は倭寇の拠点とされ、
原住民と共に漢民族や日本人が雑居していましたが
台湾の領有は１６世紀の大航海時代におけるオランダが最初でした。
次にスペインも北部を占領して領有を宣言します。
その後、スペインはオランダによって追放され、
オランダ東インド会社は
日本との出島貿易など東アジア貿易を独占するようになります。
この時期、ヨーロッパ列強は
地理的条件の良い台湾を東アジア貿易の拠点として利用しました。
そのため、鉄砲伝来やキリスト教の伝来などは
台湾を経由してきたと考えられます。

ヨーロッパ諸国による台湾統治は
沿岸部に要塞を築くなど限定されたものであり、
山岳部など内陸は依然手付かずの状態でした。

漢民族による最初の統治

当時中国大陸を支配していた明朝は満州族の清によって滅ぼされます。
長崎平戸生まれで漢民族と日本人のハーフである鄭成功という明の軍人は
清朝に対して抵抗運動を続け、勢力を立て直すために台湾に向かいます。
この鄭成功によってオランダも台湾から追放されます。

鄭成功

国共内戦に破れて台湾に敗走した蒋介石国民党と
同じような経緯で台湾にやってきた鄭成功は
孫文、蒋介石と並ぶ「三人の国神」の一人として
現在も台湾で尊敬されています。
日本の台湾総督府はGHQの指示で中華民国に降伏した訳で
蒋介石の手で日本を台湾から追放したわけではないですが…（；^ω^）

鄭成功の台湾占領は漢民族による初めての台湾統治でしたが、
反清勢力の撲滅を目指す清朝の攻撃を受けて1683年に降伏し、
鄭氏一族による台湾統治は3代、実質21～23年間で終了しました。

清朝時代

鄭氏一族を倒し台湾を領有した清朝でしたが
清朝は台湾を「化外の地」（中華文明に属さない土地）とし
最後まで台湾統治に消極的でした。
台湾原住民については「化外の民」（中華文明に属さない民）
として放置し続けてきたため
清朝の統治は島内全域におよぶことはありませんでした。

清朝時代、台湾には
対岸の福建省や広東省から多くの漢民族が移住したため、
本省系の言語文化は、これらの地方と似ていますが
清朝は女性の渡航を禁止するなど台湾定住を推奨しなかったので
漢民族は原住民の女性と混血し、
今日の「台湾人」を形成するに至りました。

漢民族は独自に台湾開発を進めますが
清朝支配が弱かっため海賊や貧窮民が多く、
さらにはマラリア、デング熱などの熱帯病や原住民との葛藤、
台風などの水害が激しかったため、台湾では内乱が相次いでいました。
本格的な開発がされるのは日本の統治時代からです。

日本時代

日清戦争で敗れた清は「化外の地」である台湾を差し出します。
清は問題だらけの島に対して関心がありませんでした。
日本は伝染病や原住民と戦いながら
清朝が成し得なかった台湾平定を成し遂げます。

血縁的に近い台湾人は日本人と同化が可能と考えられ、
日本はイギリス式植民地政策を取らず、内地延長型を取ります。
国内法を台湾にも適応させるため
日本国内並みの水準にするため教育や病院など急速なインフラを行い
台湾の文明化を行います。
台湾は最も初期に日本領となり日本化が進みましたが
台湾人は日韓併合により日本人となった朝鮮民族より地位は低いままでした。

国民党時代

第二次大戦後当初、台湾人は純粋に祖国復帰を祝い、
解放者として蒋介石率いる国民党を歓迎しますが、
彼らは解放者には程遠く国共内戦での敗残兵でした。

規律正しい日本軍人を見慣れた台湾人にとって
国民党はひどく腐敗し、質が悪く失望します。
台湾人は「犬が去り豚が来た」と嘆きました。
蒋介石は日本の影響力を払拭するため
神社を破壊し反日教育を行いますが浸透しませんでした。

やがて大陸から来た外省人と
当時まだ日本国籍を持っていた本省人との間の対立が深まり
二・二八事件が発生します。

事の発端は台北市で闇タバコを販売していた本省人の女性を
外省人の中華民国の官憲が摘発した際に起こった暴行事件でした。
この事から台湾全土で中華民国への怒りが爆発。
1947年2月28日に抗議のデモ隊が市庁舎へ大挙して押しかけました。
中華民国側は強硬姿勢を崩さず、憲兵隊は市庁舎の屋上に機関銃を据えて、
非武装のデモ隊へ向けて無差別に掃射を行い多くの市民が殺害されます。

本省人たちは日本語や台湾語で話しかけ
答えられないものを片っ端から暴行する対抗手段を取り、
全台湾人の合言葉として「君が代」を使い
ラジオ局を占拠し「軍艦行進曲」を流し、
日本語で「台湾人よ立ち上がれ！」と呼びかけました。

台湾人の反乱に劣勢を強いられた国民党は
一時本省人側に対して対話の姿勢を示しましたが
その間に密かに大陸から増援を要請。
日本統治時代のエリートは
次々と逮捕・投獄・拷問され、その多くは殺害されます。
最終的に台湾全土は外省人の国民党の支配下に収まります。

この事件によって、約28,000人もの本省人が殺害・処刑され、
彼らの財産や研究成果の多くが接収されたと言われています。
事件発生から40年後の1987年まで継続した
世界最長とも言われる戒厳令が敷かれた台湾は
白色テロという恐怖政治に長らく苦しめられました。
これらの経緯から台湾の年配者は
日本統治時代を懐かしみ今も親日派が多い事に繋がっています。

李登輝による民主化

本省人である李登輝総統の登場により台湾は民主化に成功します。
李登輝は長年の国民党の党是であった
大陸領土の奪還（反抗大陸）を放棄、
中国との内戦関係の終結を一方的に宣言しつつ、
台湾を支配する中華民国は独立した主権国家であると主張したため、
一つの中国政策を取る中国との関係はかえって悪化しました。（台湾海峡危機）
一方、現在の馬英九総統は
中国との関係を重視している外省人の人物です。

台湾独立

中華民国政府は大陸の支配を巡って
中華人民共和国と対立していましたが、
台湾国内の本省人の中には国民党支配からも抜け出して
台湾人自身による台湾独立（台湾共和国）を訴える声も大きいです。
このように「二つの中国」問題は
大陸から持ち込まれた漢民族の政争に過ぎないとも言えます。

台湾独立のシンボルになっている台湾旗

つまり今回の中台首脳会談は実質的には中中首脳会談とも言えるのです。
台湾人は国民党と共産党の接近に不安を覚えています。
この不安の大きさが国民党への反発を産み、
野党民進党の支持に繋がっています。

そして台湾と非常に似た境遇なのが沖縄でしょう。
米軍施政下の沖縄でも２．２８事件の比ではないですがコザ騒動がありました。
沖縄はその後、日本に復帰しましたが米軍基地は残りました。

注意すべき点は台湾独立運動は沖縄の日本復帰運動に近く
今の沖縄独立論と台湾独立運動とは性格が大きく違うという事。
私は「日本人として」台湾独立を支持する一方で沖縄独立には反対です。
いずれにしても現地の住民が
公正公平な選挙によって将来を決めていくしかありませんが
来年１月の台湾選挙。日本にとっても非常に重要な選挙となります。