4月27日、南北首脳会談が終わって、
6月12日にシンガポールで行われる米朝首脳会談を控え、
徐々に関係国の思惑が見えてきました。
南北会談後の5月7日、8日の日程で
金正恩は再び訪中し大連で習近平国家主席と会っています。
金正恩政権が誕生して5年余どこの国の首脳にも会ってなかったのに
今年、韓国、アメリカ両首脳との会談が立て続けに決まると
3月25日電撃的に北京を訪問し中国の習近平と初会談。
それから二ヶ月も経たずに再会談を行うのはどう見ても
異常事態です。
南北会談の結果とその後のアメリカの高度な要求、
これに対する対応を協議するためと見られています。
特に8日にアメリカがイラン核合意を離脱したショックは大きかったでしょう。
アメリカはリビア方式で北朝鮮の核廃棄を進めたい方針ですが、
北朝鮮が核廃棄に合意した所で
カダフィ大佐の末路が金正恩の脳内によぎります
南北首脳会談では終始柔和な表情を見せた金正恩ですが、
一回目の時といい中朝会談では固く真剣な表情見せる場面が多い気がします。
しばらく育てた犬に噛み付かれる状況だった中朝関係ですが、
ここにきて中朝の主従関係がハッキリしてきました。
中国としてはこのまま北朝鮮を手懐けて金正恩体制を維持したまま
北朝鮮に優位な段階的な非核化を進めたい考えでしょう。
一方で安部総理は南北首脳会談前の4月17、18日に訪米し
トランプ大統領と首脳会談を行い、
貿易問題では対立する側面がありながらも
最大の懸案である北朝鮮問題において
完全な非核化に向けて具体的な行動を取るまでは圧力を緩めない方針で一致し
米朝首脳会談で拉致問題について提起することが約束され、
強固な日米同盟を内外にアピールしています。
アメリカに帰国した拘束者たち |
北朝鮮は米朝会談開催に先立って
10日に拘束されていたアメリカ人3人を解放する一方で
日本人拉致問題は解決済みとして日本人の解放を拒み続けています。
12日には北朝鮮メディアが北東部の豊渓里の核実験場を廃棄する式典を、
今月23~25日の間に行うと発表しましたが、
この核廃棄を印象付ける式典を取材できる外国メディアは
中国、ロシア、米国、英国、韓国に限定され、ここでも日本が除外されています。
北朝鮮は戦略として露骨な日本外しを行っています。
ここで見えてくるのは
北朝鮮と日本がガチンコであるということです。
9日、東京で行われた日中韓首脳会談でも
段階的非核化に前向きな中国と
完全、検証可能かつ不可逆的な方法での廃棄を目指す日本で折り合いがつかず、
韓国が間を取り持ち右往左往する場面が見られ、
共同宣言も玉虫色の内容となりました。
しかし、議長国として初めて
日本の拉致問題が言及されたことは大きな成果と言えるでしょう。
意外にも歴史問題で韓国は日本に配慮する場面がありました。
様々な場面で反日メッセージを出し続ける文在寅大統領ですが、
安倍総理の平昌五輪開会式出席が
南北融和に向けた機運を高めたと評価しています。
国内支持率が好調なこともありますが、
韓国は当事国としてオリンピック、
それに続く南北会談を半島の安全保障に結び付けたいのです。
強硬路線の日本を説得し宥めることも重要になります。
文在寅大統領は米朝や日中などの仲介役を積極的にかって出て
ノーベル平和賞を本気で欲しがっているのかもしれません。
一方の中国もいくつかの点で問題はあるものの
尖閣事件以降では関係改善が急速に進んでいます。
昨年ベトナムで行われた日中首脳会談では両首脳が笑顔で握手し
習近平国家主席が「新しい日中関係のスタートだ」と発言、
安部総理は日中平和友好条約締結40周年にあたる
今年2018年に相互訪問を提案。
訪日した李克強首相は安部総理の年内訪中を打診し、
安部総理の訪中後、習近平国家主席の訪日で一致しました。
背景には日本が積極的に国際社会に訴えて北朝鮮への圧力を強める一方で
その先の中国を見ているという点にあります。
日本の自由で開かれたインド太平洋戦略の効果であり、
北朝鮮を追い詰めることは間接的に中国への攻撃でもあります。
アメリカが再び強い意志を持って極東情勢にコミットする中、
一帯一路を推し進めたい中国にとって
関心を示し始めている日本をここで怒らせることは得策じゃないのです。
日本も北朝鮮に対して頑なに強硬なだけでなく、
過去の清算に基づく国交正常化という最大のアメも用意しています。
この前提として拉致被害者の早期帰国、核廃棄を求めています。
正直これにはいろいろ思うこともありますが、
このやり方は日露平和条約交渉における北方領土経済協力と同じで、
元島民同様、拉致被害者家族の高齢化が進む中で、
人道的な立場で優先順位を高めているからでしょう。
しかし、北朝鮮のスタンスは拉致問題は解決済みであり、
植民地支配において我々が被害者なのだから過去の清算こそ優先すべき
という主張です。
日本も文在寅同様に積極的に対話に動けば聞いてやるという構えでしょうが、
それでは北朝鮮の思うツボです。
アメリカ人三人が解放されたのはアメリカが対話に応じたからではないはずです。
米朝首脳会談が破談になれば武力衝突になる可能性はまだ残されています。
また、アメリカが日本の拉致問題を棚上げした形で合意に至る可能性もあります。
日本は実力を持って拉致被害者救出作戦を行う構えも必要になるでしょう。
それにしてもロシアの沈黙が不気味です・・・。
4月7日に起きたシリア政府によるとみられる化学兵器使用を受けて
アメリカは英仏と協力して
昨年4月のシリア空軍基地攻撃以来2回目となる空爆を行いました。
シリア内戦を通じてイスラエルとイランの歴史的な対立もあります。
5月8日アメリカはイラン核合意離脱を表明、制裁を再開させました。
14日にはアメリカ大使館のエルサレム移転が行われ、
現地で式典も開かれる予定です。
イスラエル、サウジの後ろ盾がアメリカ、
シリア、イランの後ろ盾となっているのがロシアです。
中東情勢も加速度的な展開を迎えています。
アメリカのエルサレム首都認定後、
安部総理が主要国でいち早くイスラエルとパレスチナの双方を訪問したように
中東では中立の立場を崩さない日本ですが、
中東が先か、極東が先か・・・鍵を握るのはロシアかもしれません。
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