核共有という選択肢。

今日から3月が始まりました。
ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まって1週間が経とうとしています。
ウクライナ軍の頑強な抵抗により、
当初2日で陥落すると思われた首都キエフが持ちこたえています。
善戦するウクライナを見て欧州各国は相次いで武器供与に踏み切っています。
当初はロシアの天然ガス依存のためにウクライナへの軍事支援を拒み
ヘルメット5000個を送って不評を買ったドイツも
対戦車砲1000発、地対空ミサイルの「スティンガー」500発を提供、
アメリカは対戦車ミサイル「ジャベリン」を含む最大3.5億ドルの軍事支援を決めました。
孤立無援であっても決して悲観せず
正義のために戦うウクライナの意志に心動かされたのでしょう。
そういう意味ではタリバンに屈したアフガンとは対照的です。

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ロシアの誤算

プーチンはオリンピックとパラリンピックの間
短期決戦を狙ったのでしょうが、
核戦力が使えなければ強力なロシア軍と言えども
近代国家同士の戦いでは苦戦するというのがよく分かります。
プーチンが核戦力に言及し、ベラルーシの憲法改正により
ロシアの核ミサイルがベラルーシに配備される可能性が高まったのは
ロシア軍の苦戦を裏付けています。
西側に対してベラルーシへの核ミサイル配備を交渉のカードにして
ウクライナの非武装、中立化を求めるのでしょう。
一方、西側はロシアに続いて、
ロシアを支援しているベラルーシにも制裁を発動しました。
昨日、28日にはベラルーシ国境でベラルーシが仲介する形で
ウクライナとロシアの初の停戦協議が行われましたが、
両者一歩も引かず平行線に終わりました。
ウクライナのゼレンスキー大統領は守りから攻撃に移るとして
徹底抗戦の構えで、EUの即時加盟を要請しました。
このままヨーロッパとロシアの全面戦争にはならないとは思いますが、
何らかの決定打がない限り、戦争はさらに長期化する可能性があります。

混迷するウクライナ情勢、
戦争は始めるよりも終わらせる方が難しいという事が如実に表れていると思います。
ウクライナ軍が敗走してロシアの条件を飲むのか?
それとも国際的な制裁と国内世論を受けてロシア軍が撤退するのか?
結局はそのどちらかでしかありません。

SNSによって現地の凄惨な様子が世界中で拡散され、
ロシア国内でも反戦デモが広がっています。
ウクライナ軍がこのまま善戦すれば日露戦争と同じように
プーチン政権を打倒しようとする政変が起きる可能性もあります。
そうなれば中国も台湾侵攻を躊躇します。
逆に西側がクリミア併合の承認などロシアの条件を飲んでしまえば
力による現状変更を認める形となり、
中国に対して間違ったメッセージを与え、さらなる惨禍が世界中に広がる事になります。
今回の戦争は結局何かというと
国際ルールに基づく法の支配新帝国主義の戦いなのです。
パラリンピックが終わった後、ウクライナはどうなっているでしょうか?

核共有への議論

ベラルーシへの核戦力配備に関連して
安倍元総理はアメリカの核兵器を国内に配備する
ニュークリア・シェアリング(核共有)に言及しました。
私は元々消極的核武装論者ですが、
以前からいきなり核を自前で保有するよりも
非核三原則は二原則にして「持ち込ませる」方が現実的だと訴えてきました。

実際に敗戦国であるドイツ、イタリアを含む
オランダ、ベルギー、トルコのNATO5カ国はニュークリア・シェアリングに参加し
冷戦時代にソ連と対峙してきました。
唯一の被爆国だとか国民の反核感情など政治的問題はあるのでしょうが、
国際社会では何の意味もありません。
ロシア、中国、北朝鮮と核保有国に囲まれている日本の状況は
現在のヨーロッパよりもある意味で深刻です。
例えアメリカであっても核保有国相手では強気に出れない事は
今回に限らず2017年の北朝鮮危機でも露呈しています。

そもそもウクライナは米露に次ぐ世界第3位の核兵器備蓄国でした。
同じくソ連の構成国であったベラルーシ、カザフスタンの旧ソ連三国は
1994年のブダペスト覚書で核兵器を放棄(ロシアへの引き渡し)、
著名国である米英露から核不拡散条約の遵守と引き換えに
領土保全と安全保障が約束されていたはずでした。
つまり今回、核兵器を放棄した国が核保有国から攻撃される
という悪しき前例を作ってしまったわけです。
核先制使用を否定し、
非核兵器保有国に対しては核兵器を使用せず、威嚇もしない
という中国の言い分も怪しく映ります。
まずはウクライナを支援してロシアの野望を挫くことが最優先ですが、
万が一、力による現状変更が国際的に認められた場合は
台湾有事を想定して核保有を真剣に検討すべきだと思います。
その時は残念ながら法の支配の時代が終わり、新帝国主義時代に突入している事でしょう。

過去2度の大戦で戦争が長期化した際は必ず大量破壊兵器が投入されてきました。
第一次世界大戦では毒ガス(化学兵器)、第二次世界大戦は原子爆弾(核兵器)です。
それぞれ戦いの後その威力から使用を制限しようと
ジュネーヴ議定書NPT核拡散防止条約が結ばれました。
最近は超音速兵器などの新兵器も話題になりますが、
今次大戦は新型コロナウイルス(生物兵器)が該当するという見方もあります。
第二次世界大戦でついに毒ガスが使用されなかったように
今回実際に核戦争に発展することは無いと信じたいですが、
ナチスドイツがサリンなど強力な神経剤を大量保有してたように
先次大戦の超兵器の戦略的価値はよく考える必要があるでしょう。

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