ロシアとフランスの接近。

Flag of Russia Flag of France

10月31日にエジプトシナイ半島に墜落したロシア機の事故。
米英は早期に爆弾によるテロの可能性を示唆する一方、
ISILによる犯行声明が出されてもなおロシアは慎重な姿勢を崩さなかった。
イギリスは当事国でもないに関わらず、
現地調査を待たず独自情報からテロ説を強く主張し、
当事国でテロ説に否定的なロシア・エジプトと対立していたが
11月13日のパリ同時多発テロの直後、
プーチン大統領は慎重な姿勢から一転、テロと断定
「地球上どこにいても処罰する」と強い口調でテロリストを批判した。

ロシアは同じくテロを受けたフランスに急接近し、
ISIL攻撃のために地中海に展開しているロシア海軍と
空母を主体とするフランス海軍が共同作戦を行う事になった。

ロシアの方針転換に違和感を感じてしょうがない…
クリミア併合以降、パリ同時多発テロまで
欧米とロシアの対立関係が続いていた。

記憶に新しいのはロシア陸上界のドーピング問題である。
この問題では国家ぐるみの組織的ドーピングとされ、
批判の対象は選手やコーチ陣、個人ではなくプーチン政権に向かった。
事の真意はさておき、
またしてもオリンピックが政治利用されたわけであるが、
このように欧米は国際社会から
ロシアを追放しようと躍起になっていたわけである。
ロシアはこういった情勢で孤立感を抱いたかもしれない。

そもそもシリア内戦においてアメリカとロシアの対立があった。
ロシアはアサド政権を支援しており、アメリカは反体制派を支援。
アメリカはアサド政権が化学兵器を使用したとして
軍事介入を決断したものの欧州の支持を得られず介入に失敗。

ロシアの攻勢はここから始まった。
ウクライナ内戦に積極的に関与し、クリミア半島を併合した。
ウクライナでの構図はシリアとは反対であり、
アメリカが政府を支援し、ロシアは反体制派を支援している。
シリア内戦の介入に否定的だった欧州も
地域内であるウクライナ内戦においては
アメリカと共同歩調を取り、対露経済制裁を行った。

シリア内戦が複雑化するのは
政府軍でも反政府軍でもない
第3極として唐突にISILが登場してきた事である。
こうしてシリア内戦は政府対反政府の米ロ代理戦争から三つ巴の戦いとなった。
欧米の民間人がISILに続々と虐殺される中、
アメリカはISILを叩くという名目
イラク空爆から初のシリア空爆に踏み切った。
欧州各国もISIL討伐に参加し、結局シリア内戦に介入する事となった。

シリア情勢は目まぐるしく変化し、ISILや反政府軍の攻勢を受けた
アサド政権の弱体化はロシアにとっても危機であった。
欧州におけるウクライナ同様、中東においてシリアは最後の足場である。

11月30日、ついにロシアもシリア内戦に介入。
アメリカは当初から混乱を起こすとしてロシアによる空爆を歓迎せず、
ロシアの空爆はISILだけでなく反体制派にも及んでいると批判していたが、
ここに来て徐々に対ISILで米ロが歩み寄る形となっている。

しかし、今回プーチンはテロと断定はしたが、
ISILによるものかどうかについては明確にしておらず、
アサド政権への支援をやめたわけではない。
アメリカもこの問題がある限りロシアと共闘する訳にはいかないだろうが、
フランスとロシアの新同盟が米ロ対立和解の一歩となるかもしれない。

こうして見るとISILの存在は
実にアメリカの役に立っているとも思えてくる。
ただ、このような大国のグレートゲームの犠牲になっているのが
常に弱い一般市民であることに変わりなく
飛行機墜落のロシア人犠牲者もパリ同時テロのフランス人犠牲者も
空爆のシリア人犠牲者も同じである。
こういう大きな事件に陰謀は付き物だが、
ニュースを見るたびにやるせない気持ちにさせられる。

コメント

タイトルとURLをコピーしました