金正男暗殺事件。

去年の核実験に続いて今年も北朝鮮から動き出すのか？
北朝鮮の最高指導者、金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、
金正男がマレーシアの空港で暗殺されました。

実行犯はベトナム人とインドネシア人の女性、
どうやら殺害に使われたのは
あのオウム真理教もサリンとともに
生産していたVXガスという化学兵器。
実行犯はドッキリの撮影だと言われたと殺意を否定していますが、
何の背後関係もない女性がこのような代物を
手にすることはできないので、
なんらかの組織が関わっていることは明白。

大方の見方は金正恩のさしがねで行われた暗殺計画とみられ、
北朝鮮国籍の容疑者が多数指名手配されていますが、
大半が出国し、北朝鮮にいるとみられ、
重要参考人として北朝鮮の外交官も呼ばれていますが、
外交官は大使館内にいるとみられ、出頭を認めていませんし、
外交官は外交特権で逮捕されないので、
マレーシア当局は手詰まり状態となっています。

金正恩は２０１３年に
金日成国家主席の娘で金正日総書記の妹に当たる金敬姫を妻とし、
金正日の側近として活躍し、金正恩政権では後見人的存在として
政権の実質的ナンバー２といわれていた張成沢を粛清するなど、
金正恩の政権掌握のために
前政権の息のかかった人物を消そうと躍起になっています。
金正恩としては異母兄弟の長男の存在は
反金正恩体制の錦の御旗として担ぎ上げられる可能性もあり、
自らの正統性を弱めてしまうものだったでしょう。

しかしながら金正男はマカオに長らく住んでおり、
中国政府から保護された状態にありました。
もし暗殺により金正恩体制が強化されたとしても
中朝関係はマイナスにしか働かない。
実際、核実験やミサイル実験でも動かなかった中国は
ついに国連決議に基づき対北朝鮮の石炭の輸出を禁止する制裁措置を取りました。
そもそも共産主義を標榜する中国共産党にとっては
金一族の世襲体制自体に反対なのです。
今回の事件はまさに世襲体制によるお家騒動であり、
海外で化学兵器が使われたわけですから
中国としても黙るわけには行かなくなりました。

また今回、北朝鮮だけではなく、
マレーシアやベトナム、インドネシアなど
東南アジアも巻き込んだ騒動となっており、
北朝鮮の国家ぐるみの犯行をカモフラージュするために
外国人を利用したと報道されていますが、
これら東南アジアの国家は北朝鮮の少ない友好国でした。
事件の捜査においてマレーシア当局と北朝鮮は対立状態であり、
実行犯の女性二名の国籍であるベトナム、インドネシアでは
女性は北朝鮮に利用されたとして反北朝鮮感情が盛り上がっています。
政権発足６年目になりますが、
金正恩は友好国中国はおろか外国のトップの誰とも会っていません。

金正男は張成沢粛清時には既に何の力も持っていなかった上、
本人に権力抗争に関心がなかったにも関わらず
なぜ今暗殺する必要があったのか？
それほどまで国内に政権転覆の動きが出ていたのか？
また、今まで友好関係を築いてきた中国や東南アジアを敵に回してまで
実行する必要があったのか？
本当に北朝鮮の仕業とすると不可解な点があまりに多い。

国政が混乱状態である韓国は
北朝鮮の残虐性を表しているとして積極的に非難を繰り返していますが、
中国が表立って北朝鮮を非難し、制裁に踏み切ったのは
まさに韓国がレームダックになっている事も大きな要因でしょう。
金正恩政権が崩壊しても韓国に半島を統一する余力はないと読んだのです。
中国はここ数年、
対日歴史戦共闘やAIIBなどで韓国と友好関係を作ってきました。
在韓米軍とTHAAD配備は考慮すべき問題ですが、
アメリカ・ファーストを訴えるトランプ大統領と折り合いがつき、
韓国に親中派の新政権が発足すれば北朝鮮から
日米に見限られた韓国に同盟関係を鞍替えするつもりかもしれません。

トランプ政権誕生にロシア政府が関与したなどと言われていますが、
韓国でも同様のケースが起こりうるかもしれません。
野党「共に民主党」に政権交代されるのはほぼ確実で
朴政権路線の否定を行うとなると
親中反日米政権の誕生は必至と見られます。
一方、中国に梯子を外され、
完全に孤立化する北朝鮮はいよいよ次のステージに入りました。
政権が崩壊するのが先か？朝鮮戦争再開が先か？
チキンゲームの様相になってきました。

南北朝鮮が混乱する時、東アジアで何が起こってきたのか？
歴史を鑑みて冷静に対応する必要があります。