日本国憲法。

参議院選挙を一週間後に控え、
憲法改正についても議論が加熱しているので
日本国憲法について振り返りたいと思います。

あたらしい憲法のはなし 戦争放棄
文部省「あたらしい憲法のはなし」(1947)

まず私は改憲論者です。
戦後71年が経過し、世界構造の変化に合わせ改憲も必要ということ、
現行憲法がGHQによる占領下で制定されたというのが主な理由です。

現行憲法は終戦から2年後の1947年5月3日に施行されました。
そもそも日本には大日本帝国憲法(明治憲法)がありましたが、
なぜ戦後に新たに現行憲法(昭和憲法)が作られたのか?
アメリカの意向なのは明白です。

憲法の理念を謳う前文を見てみましょう。

日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

国民主権平和主義を謳い、
一見「なるほど素晴らしい憲法だ」と思いますが、
注目すべきは赤字のところで、
日本の平和主義は他国への盲目的なまでの信頼を根拠にしているということです。
これは戦後の国連中心主義に色濃く反映されていますが、
この前文からでも日本の軍国主義が戦争の全責任であるという
自虐史観の上に立っていることが分かります。

明治憲法は欽定憲法と呼ばれ、
明治天皇がこれからの国作りを国民に宣言する形で書かれ、主語は「朕」でした。
昭和憲法は民定憲法
国民が戦争の反省を込めて書いたように見えます。
その実態はGHQ(アメリカ)が作った草案を下書きにしたものです。
正式な改憲手続きに基づき、
日本人自身によって作られたという体になっていますが、
占領下で作られたという時点で疑いの余地はありません。

自民党は1955年に日本人の手で憲法改正を達成するために結党されました。
今では護憲派の共産党でさえ、
アメリカの影響下で作られた現行憲法を公然と批判していました。
改正では日本人自身の視点に立つ事が重要です。

第一条  天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く

第一章に「天皇」を持ってくるというのは注目すべきところです。
明治憲法では天皇による日本統治を宣言しており、
そのため神聖不可侵とされましたが、
昭和憲法ではあくまで主権者は国民であり、
国民の総意があれば天皇制を廃止できる

日本の降伏条件は最後まで国体(天皇制)の維持でした。
GHQは円滑な日本統治のために天皇に一定の地位を与えましたが、
その一方で皇室典範を改訂し、
11宮家が占領政策で皇籍離脱を止む無くされるなど
皇室の弱体化、将来的な天皇制廃止の目論見が垣間見れます。
女系天皇容認論など皇位継承問題として現在まで大きな影響を与えています。
共産党は当然ながら即刻天皇制廃止を求めていましたし、
現在も将来的な廃止を目論んでいます。

改正では国民主権に変更の必要はありませんが、
天皇は国家元首と明記して天皇の地位を確かなものとし、
皇室典範も旧皇族の皇族復帰など皇統の安定化を図る必要があると思います。

第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない

憲法問題で一番議題に上がる9条、
日本は持たない認めないと手足を縛られた状態です。
これはどう読んでもアメリカによる懲罰条文です。
自民党や民主党(民進党)など多くの政党は自衛権の放棄は謳っていないので。
自衛隊は合憲であるとしていますが、
純粋に読む限り、自衛隊は違憲の存在でしょう。
共産党は憲法の完全履行を目指して将来的に自衛隊を解消すると明言しています。

しかし自衛隊も朝鮮戦争の時にアメリカの都合によって作られました。
この矛盾は占領期間中に解消されることはなく、
現在まで解釈をめぐり論戦が続けられています。
改正ではこの矛盾を解消するべく
自主防衛のための軍備や陸海空軍の保有を明記するべきだと思います。

以上、現行憲法に無理が生じているのは明らかなのですが、
そもそも占領軍によって被占領地の憲法を変えることは
ハーグ陸戦規定で禁止されており、
こういう点において石原慎太郎など右派は
日本国憲法は無効であり、憲法改正ではなく憲法廃止の上、
日本人の手で自主憲法を制定する事を訴えています。
これは正当性の問題であってよく理解できます。

一方で左派はアメリカに押し付けられたという歴史的事実を差し引いてでも
世界に類を見ない平和憲法を維持するよう訴えています。
憲法の素人の手でわずか8日で作られたとは言え、
彼ら自身の理想が強く反映されていたことは違いありません。
当時の時勢から見ても現行憲法は急進的でした。
憲法を作ったアメリカ人自身、
現行憲法は占領期間でさえもたないだろうと感じていましたが、
予想に反し、主権回復後も日本人の手によって71年間運用されてきました。
むしろ日本人だったからこそ運用できたと言えるかもしれません。

私自身もアメリカの押しつけ憲法という歴史認識は持つものの
71年も運用され続けたものを「押しつけ」で片付けていいのか?
という思いもあります。
日本国憲法は戦後日本にとって都合が良かったのはたしかで
正当な歴史的評価が必要と思います。
ただ、憲法は未来永劫、日本の平和を約束しているわけではありません
世界中で相次ぐテロや難民問題、北朝鮮の核ミサイル、中国の海洋進出など
平和を愛する諸国民の公正と信義疑念が生まれている以上、
改正は必要ではないでしょうか?

左派が言うように平和主義という面では
日本国憲法はある意味では一歩進んでいましたが、
中国やロシアに同様の憲法を作るように働きがけなれば何の意味もありません。
当然聞き入れる訳もなく、
9条は世界平和どころか日本の安全保障に対する障害となりました。

日本国憲法が世界憲法とならない限り、
日本は再び国を閉ざすか、諸外国のレベルに合わせるしかないのです。
日本国憲法は人類には早かったというのが私の結論です。

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