参議院選挙の投開票が明日に迫りました。
選挙前最後に参院選そのものについて考えたいと思います。
日本は議会制民主主義の国で
行政権(内閣)、立法権(国会)、司法権(裁判所)の
三権分立が成されていますが、
国会は国民が直接選挙するため、「国権の最高機関」と言われます。
この国会を形成するのが衆議院と参議院です。
(出典:Wiii) |
国会議事堂に向かって右が参議院になります。左が衆議院です。
両院とも選挙が行われますが、
被選挙権が違い衆院は25歳以上、参院は30歳以上となっています。
また衆院は任期が4年であり、政局によって任期途中の解散があるのに対して
参院は任期が6年で、途中解散がありません。
この年齢差と任期の差の意味ですが、
そもそも二院制は
「民意を反映する」下院(衆院)に対して
「良識の府」である上院(参院)が
行き過ぎをチェックするという意味合いがあります。
衆院が解散されると参院も閉会されますが、
緊急事態があれば参院を招集する事ができるようになっており、
国会運営を補完する役割があります。
なんとなく参議院が優位に見えますが、原則的に同等の権限を持ちます。
衆議院の優越が憲法で定められており、
両院で議決内容が異なるときは、より民意に近い衆院の議決が優先されます。
また予算先議権や内閣不信任、信任決議は衆議院のみの権限であり、
任期の長い参議院とのバランスをとっています。
衆議院議場 (出典:Kimtaro) |
参議院議場 (出典:Photo taken by Chris 73) |
参議院議場のみ開会式の時にお座りになる天皇陛下の席があります。
参院の方が格調が高い。
戦前ここには参議院ではなく貴族院がありました。
明治憲法下で天皇を補佐するために貴族院は作られました。
非公選の皇族議員・華族議員が中心で、解散がなく終身任期でした。
貴族院は行き過ぎた民主主義に対抗する存在であり、
国権主義の保持に寄与するため非政党主義で原則的に無所属議員でした。
今となっては特権階級のための席と思われるかもしれませんが、
こうした衆議院との差別化がしっかりしていたので、
衆院で政党政治が行き詰まりを見せて軍部に迎合していた時も
貴族院が独自性を発揮して東条内閣を批判しました。
しかし、貴族院は戦後に貴族制度が廃止されたため消滅し、
新設された参議院に取って代わります。
貴族院の伝統を受け継ぎ、
世俗的な衆院に比べ、参院には有識者が多かったのですが、
その差は徐々に無くなってきており、
衆院と同程度の人気投票になってしまいました。
こうした点から衆参で同じ議決が出れば「衆議院のカーボンコピー」と言われ、
対立すれば「ねじれ国会」と言われ政治が行き詰まるという問題点を抱えます。
これは戦後民主主義の負の遺産の一つでしょう。
貴族院の存在があったからこそ日本が独裁的ファシズムにならなかったのです。
「天皇機関説」の美濃部達吉も貴族院におり、
軍部が暴走する日本の唯一の良心だったとも思います。
なぜGHQは貴族院をなくしたのか?
日本の二院制はそもそもイギリスに習ったもので、
事実イギリスでは今も貴族院が存在します。
衆議院が二つあるような今の状況は
議論をいたずらに引き伸ばしており選挙費用も倍になるので
参議院をなくして一院制にしようという議論や
貴族院を復活しようという議論もあります。
こうした基本を踏まえたうえで今回の選挙を見てみると
参院選の価値を低いものにしてしまいそうですが、
憲法改正については大きな意味があることは確かです。
憲法改正は衆院の優越の例外で両院の発議が必要になるからです。
GHQは憲法が簡単に変えられることのないように高すぎるハードルを設けました。
発議には両院共に国会議員の三分の二が必要であり、
最終的に国民投票での過半数が必要です。
護憲派野党は参議院での改憲勢力三分の二を防ぐために
統一候補を出しています。
参院で護憲派が多数を占めれば発議はできません。
逆に考えると両院で改憲勢力が三分の二に迫るという状況は
憲法改正の一大チャンスです。
この期を逃すと自分たちが生きているうちに
改憲のタイミングはもう訪れないかもしれません。
護憲派は自民党草案をやり玉に挙げる人が多いですが、
改憲勢力の中でも中身については対立するところが多いのです。
連立与党の公明党も改正内容には消極的です。
改正内容については審議をすればいいのであって、
まず改正を行うという国民の意思表示が重要ではないでしょうか?
そのためにはしっかり投票を行うことです。
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