終戦か拡大か。

お久しぶりです。2025年最初の記事となってしまいました。
ドナルド・トランプが1月21日に大統領に再任され、
これまで大きな出来事が連続して起きたので整理していきたいと思います。

Official 2025 inaugural portrait of President Donald Trump
カメラを睨め付ける異様な大統領公式肖像
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トランプ2.0

トランプ政権は一次政権と同様にアメリカ・ファーストを掲げ、
国内外で大胆な政策を推し進めてきています。
国内では、政府効率化省(DOGE)を立ち上げ、
実業家のイーロン・マスク氏に強大な権限を与え、
政府機関の効率化を推進し、エネルギー政策の見直しや環境規制の緩和を進めています。
​外交面では、貿易戦争の激化同盟国との関係再定義など、
従来の国際秩序を揺るがす動きを見せています。 ​

President Donald Trump with reporters, Elon Musk and X Æ A-Xii in the White House Oval Office on February 11, 2025

アメリカ中心の安全保障再構築

トランプ関税などの貿易問題における保護主義政策は一次政権同様ですが、
今回は「カナダはアメリカの51番目の州になるべきだ」と発言したり、
デンマーク領グリーンランドの購入に意欲を示し、パナマ運河の返還に言及、
メキシコ湾をアメリカ湾に改称するなど
西半球中心のモンロー主義をより強く印象付ける言動を取っています。
ウクライナ(ヨーロッパ)への軍事支援に消極的で、
アメリカ周辺の安全保障整備に比重を置きたいという意思が見えます。
これには北極海航路の権益問題とも複雑に絡んでいます。

カナダとメキシコの輸入品に対して25%の高い追加関税をチラつかせ
こうしたアメリカの政策への協力を強要するなど
セオドア・ルーズベルトによる棍棒外交を彷彿とさせる
20世紀型の帝国主義的な側面を感じさせます。
一方で中国には就任前から最大60%の追加関税を宣言しており、
2月4日から早速10%の追加関税を発動、
中国はアメリカの最大の挑戦者であるという考えは一次政権を引き継ぎます。
3月4日には1カ月延期していたカナダとメキシコへの追加関税を発動し、
中国にはさらに追加で10%、合計20%の追加関税を発動しました。

ロシアとウクライナの停戦仲介

トランプ政権は、
ロシアとウクライナの紛争解決に向けた停戦交渉を主導しています。​
しかし、このプロセスにおいてウクライナが排除される形となり、
同国の主権や領土保全に対する懸念が高まっています。 ​

トランプは莫大な支援の見返りを求め、ウクライナの鉱物資源の利権を求めました。
これらの合意は調印寸前でしたが、
2月28日、マスコミのカメラが入る中、
ホワイトハウスの大統領執務室において
トランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領との口論が発生し、
これらの合意は破談に終わりました。
​プーチン大統領を持ち上げ、ロシア寄りの姿勢を示しながら
現状占領地での停戦に前のめりなトランプ大統領に対して
ゼレンスキー大統領はプーチンの危険性を訴え、安全保障の確約を求めていました。

President Trump and Vice President JD Vance clash with Ukrainian President Zelenskyy during meeting in Oval Office on Feb. 28, 2025
前代未聞の公開口論

トランプ大統領はゼレンスキー大統領を「選挙のない独裁者」と批判し、
「第三次世界大戦を掛けたギャンブルをしている」と言い放ちました。
ウクライナへの支援の適切性に疑問を呈し、
この騒動の後にアメリカはウクライナへの支援を無期限で停止しました。

日本のネット世論のブレ

トランプとゼレンスキーの口論の後、
日本のインターネット上では反ゼレンスキー的な言説が増加しています。​
ウクライナ侵攻当初は反ロシア・反プーチン一辺倒で、
鈴木宗男氏などの親ロシア派に対する批判の方が主流でしたが、
トランプが復活し、ウクライナの状況が必ずしも良くないとみると
そもそもの戦争の動機から遡って
ゼレンスキーが挑発して始まったと綺麗な手のひら返しとなっています。
プーチン大統領の人間性を褒めたたえるような動画も拡散されています。
これは、情報の偏りや感情的な反応によるものであり、冷静な議論が求められます。​
完璧な正義など存在しないのであって、
日本の外交姿勢は日本の国益によって判断すべきなのだから
北方領土の不法占拠を続ける敵性国家ロシアに味方をするのはおかしい。
この点をとっても日本がウクライナを支持するのは当然なのです。
強い方に靡くような負け犬外交は足元を見られるだけです。
本質を見誤るべきじゃない。

戦後の世界構造

コロナ渦から5年が経ち、
第一次世界大戦も第二次世界大戦も5年程度で終わったことを考えると
第三次世界大戦(コロナ戦争)
そろそろ停戦フェーズに入る事が予想されます。
実際、ウクライナが和平を模索し始め、
イスラエルとハマスも一時的な停戦に至り、交渉が続けられています。
しかし、ウクライナの立場は苦しいのが現状です。
好転するまで戦い抜きたいというのがゼレンスキーの本音です。
ウクライナに接するヨーロッパもそれを後押ししたい。
そんなNATOから抜け出したいのがアメリカ・ファーストのトランプです

ヨーロッパはトランプとゼレンスキーの会談が破談に終わった後も
ゼレンスキーに寄り添う意思を示し、
イギリスは地上軍の派遣まで検討しています。
人的消耗が激しくウクライナに余力が無いことは事実なので
イギリス軍の派兵は歓迎されるでしょう。
NATO加盟国は一枚岩ではありませんが、
ヨーロッパはアメリカよりも当事者意識があり、
ウクライナにロシアを食い止めて欲しいという気持ちは一緒です。
アメリカが欧州を説得できなければ欧露の正面衝突の可能性は残っています。

2025年は第二次世界大戦終結から80年の節目を迎えます。
ウクライナ戦争が現状の支配地で停戦に至る事で
米露中の三国が戦後世界の主要国となり、
アメリカから梯子を外された欧州と日本が取り残されるのか
それとも欧州があくまでウクライナを助け、
欧露衝突から本格的な第三次世界大戦に拡大していくのか。
いずれにしてもウクライナが敗れたり、
ロシアが領土拡張を実現して国際社会がそれを不問とするなら
中国は武力を持って台湾・尖閣を取りに来る可能性が高まります。
すなわち戦域は極東に拡大するでしょう。

日本の取るべき外交戦略

この状況下で日本は何をするべきなのか
石破総理がG7の結束を訴えたように
ひと先ずはアメリカとヨーロッパの瓦解を繋ぎとめることが最大の課題でしょう。
イギリス、フランス、ドイツはトランプと衝突の可能性があるので
イーロン・マスクと親密な関係を噂される
イタリアのメローニ首相と協力するべきです。
日本、イギリス、イタリアの三国は次期戦闘機(F3)の共同開発を行っており、
安全保障分野で言えば今後、アメリカ以上に関係強化に取り組むべきです。

Joint Development of Next-Generation Fighter Aircraft 1
日英伊による次期主力戦闘機の共同開発
(出典:防衛省)

基本的にはアメリカがどういう態度をとろうが、
現状変更を許さないという立場から日本は欧州と足並みを揃え、
ウクライナ支持を維持するべきですが、
一方で、G7唯一のアジアという地政学的立場を利用して
ヨーロッパとは違う対露外交のパイプを維持する事も大事です。
この点はアメリカの方針転換によって動きやすくなっています。
岩谷外務大臣など多くの政府要人は
対露制裁の報復として入国禁止措置を取られているので、
対露外交に尽力した安倍元総理の夫人である昭恵氏など
政府外の人間を特使として派遣するなどして、
交渉再開のシグナルを送るべきフェーズに来ています。

また、アメリカとロシアが手を結べば立場が弱くなるのは中国です。
中国はアメリカと貿易戦争を戦い抜く決意を示しており、
そのアメリカと準同盟国のロシアが関係改善に進めれば
中国は地域で孤立することになります。
2月11日、日本のEEZ内の尖閣諸島周辺に設置されたブイを撤去したのは
トランプ就任の影響が考えられます。
日本はロシアといきなり直接的な対話をするよりも
中国との関係改善を入り口に
ロシアやアメリカとの外交展開を考える必要があるでしょう。

もちろんインドやブラジルなどグローバルサウスとの
独自外交も引き続き積極的に推し進めるべきです。
インド、ブラジルにEUの盟主たるドイツを含めた
G4は本来、国連常任理事国入りを目指す枠組みですが、
安保理が機能しない今となっては
米中露に対抗する新たな国際秩序としての可能性を探るべきでしょう。
これは戦後の日本の生存戦略となるでしょう。
日本にとって台湾有事が最も避けるべき事態であり、
一連のウクライナ問題を考えると
起こってしまえばアメリカは関与しない可能性がある。
戦争を起こさせず外交努力によって解決を図るのが最も重要です。

しかし、トランプ1.0で安倍総理が担った役割を石破総理が出来るのか?
外交手腕もさることながら、安倍総理と違い国内基盤が貧弱すぎて
今年の選挙を戦いきる事ができるのかさえ不安が残ります。
日本の立場は欧州同様に厳しいですが、
いまこそ外交の選択肢を増やすことで主導権を握る戦略が必要です。

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