表現の自由。

金正恩暗殺をテーマにしたアメリカのコメディ映画「The Interview」
何者かにより映画会社ソニーピクチャーズに対してサイバーテロが行われ、
9.11を引き合いに出し公開すれば更なる攻撃を起こすと脅迫した。
アメリカ政府はこれを北朝鮮の仕業と断定し、
テロ支援国家指定に戻すか検討している。

またフランスの新聞社「シャルリー・エブド」
ムハンマドを冒涜する漫画を発行した事で起こった襲撃事件においても
フランス政府はこれらと戦う姿勢を見せている。

政府側は「表現の自由」に対する挑戦と見ているようだ。
私個人も漫画やイラストを描く事があり、
表現の自由は最大限認められるべきだと感じているし、
数年前にあった石原都政の青少年健全育成条例における
漫画の規制には反対の立場であった。

しかし、今回立て続けに起こったこの2つの事件には
表現の自由を盾にする政府側に違和感を覚える。

金正恩暗殺映画は論外だろう。
これは「金正恩」を
「自国の国家元首」に置き換えればその意味は瞬時にわかる。
例えばアメリカで「天皇」の暗殺をテーマとした映画が公開されれば
日米関係は明らかに最悪の方向に向かう。

反靖国神社の映画「靖国 YASUKUNI」
反捕鯨の「ザ・コーヴ」の公開時の国内反応を見れば容易に想像がつく。
ましてや今回はあの独裁体制の北朝鮮である。

マイケルムーアの「華氏911」
当時のブッシュ政権を批判する内容でセンセーショナルな話題になったが
これはアメリカ国内の問題であり今回とは次元が違う
他国の国民や文化を否定したり、
国家元首の暗殺を匂わせるような映画を放映したら
外交関係に支障が出るのはどんな馬鹿でも分かることだ。

サイバーテロもかなり怪しい・・・(`・ω・´)
アメリカは北朝鮮の攻撃と断定したが未だにその根拠は明らかにされていない
金政権の立場を逆手にとって
イラク戦争前、イラクが大量破壊兵器を隠し持っていると決めつけたように
自作自演している
のではないかと疑ってしまう。
日本政府としてもこの「罠」に掛からないように
冷静に今の北朝鮮との拉致協議に挑んでもらいたい。
攻撃された映画会社が
日本の大手企業ソニーの関連会社であることに何のメッセージがあるか?
慎重に精査する必要がある。

仏紙襲撃事件に関しても仏紙側に責任があるとしか思えない。
フランスは今や移民国家であり、様々な人種、宗教が入り混じっているのである。
そこの配慮がなされていないどころか、
この事件を機に国内のイスラム教徒は
かつての魔女狩りの如く不当な排除の目に会っている。

パリで160万人の史上最大規模のデモが行われ、
「表現の自由」の下に欧米各国、中東やアフリカの首脳まで参加したが、
イスラム教徒にとってムハンマドは神聖な存在であって
偶像化する事を禁じているのであるから
フランスのイスラム系住民は複雑な心境であろう。

過去にも火炎瓶が投げ込まれた事件があり、
フランス政府からも自粛するように圧力があったわけで
亡くられた記者や漫画家たちはもちろん命の覚悟をしていたと思うし、
彼らなりの正義があったのかもしれないが冷酷な言い方だと自己責任だと思う。
いや、むしろ仏紙の過激な反イスラムは
イスラム過激派を刺激し、テロを誘発させ自国民を危険に晒したわけである。
それは金正恩暗殺映画にしても同じだ。

テロリズムはもちろん許してはならないが、
表現の自由の前に一宗教、一国家、一個人を否定する事も許されない。
世界は多種多様である事が素晴らしいのである。
どちらかを排除するのではなく、どのように共存していくかを考える方向に
活路を見出す方が文明的で発展性がある。
しかし、表現の自由と個人の尊厳の線引きが難しい事も確かだ。

下のマンガは今回の事件で犠牲になったCabuカビュ氏が描いた
2020年東京オリンピックの漫画。
福島の放射能被害によると思われる奇形の人が相撲を取っている。

(出典:Cabuカビュ/カナール・アンシェネ紙)

我々はこれを見てどう感じるだろうか?
ユーモアだと笑って見過ごせれるだろうか?
事故を起こしながらもオリンピックを推進する日本政府への批判と見れるが
被災者の感情を逆なでし、根底に人種差別を感じ取ってしまうのも確かだ。

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