伊勢志摩サミットとロシア。

G7 leaders at summit in Ise-Shima, Japan 5.26.16

G7伊勢志摩サミットは大きな混乱もなく無事に終わり、
安倍総理は消費税10%引き上げの再延期を表明しました。

サミットの大きな話題だったのが経済問題です。
G7首脳は
「世界経済は下方リスクが高まっており、適時に全ての政策対応を行う」
と合意しました。
安倍総理は現在の経済状況をリーマンショック前に似ているとして、
これを根拠として増税の再延期を決定したのです。

世界経済は緩やかに回復傾向にあるので
これは単なる増税延期の口実作りであり、
G7サミットの場を私物化したとして
国内外で安倍総理を批判する論調もあるようです。
財政出動に消極的な英独もいましたが、
従来からホスト国の顔は立てるものなので
これはある程度仕方のないことのように思えます。

「大震災、リーマンショック級が起こらない限り延期しない」
と明言してきた安倍総理ですが、
実際に熊本地震がありタックスヘイブンの腐敗も明るみになりました。
増税再延期は妥当な判断と言わざるを得ないでしょう。
そもそも野党も増税の延期には賛成しているので、
増税を延期しなければならない状況を
アベノミクスの失敗としたいに過ぎません。

安倍総理は経済リスクを世界共通認識とすることで
この批判を逸らす意図があったと思います
さらにはアベノミクス三本の矢を世界で展開するとも発言しています。
あくまでアベノミクスは失敗していないとしたい訳です。
個人的には大胆にもうまく外交成果と結びつけたなと思います。
いずれにせよ参院選によって国民の真意が問われることになるでしょう。

経済問題で忘れがちですが、
中国、北朝鮮に対する牽制を首脳宣言に盛り込んだ点は重要なことです。
中国は会議前から「南シナ海問題を発言をするな」と注文をつけてきましたが、
G7は中国に参加資格がないので、日本の発言力は極めて大きいのです。
こうして中国包囲網
今までの日米だけでなく、中国との経済的繋がりから控えめだったイギリスなど
欧州を含めたG7で作れれば
中国と言えども迂闊に侵略行動をとれなくなります。
これは東南アジアの安全保障にとっても重要なことです。
日本はアジアのリーダーとしての行動を忘れてはいません。

サミット後のオバマ大統領広島訪問も含め、
伊勢志摩サミットは成功と言っていいのではないでしょうか?

一方、クリミア併合以降サミットの参加資格を失ったロシアの問題は
今回大きく取り上げられませんでした。
これも北方領土交渉を含め
日露関係を過度に刺激したくない日本に配慮したからでしょう。
2016年の下半期の日本外交はこのロシアがメインになります。

サミット前の安倍総理の欧州歴訪ではオバマ大統領の制止を振り切って
ロシアを訪れてプーチン大統領と会談を行いました。
安倍総理の北方領土問題解決、日露平和条約締結には並々ならぬ思いがあります。
この気持ちに応えてか年末にプーチン大統領来日が実現しそうな情勢です。
安倍総理の地元、山口県での会談で調整に入っているようです。

早速「北方領土は返さない」などロシア閣僚から牽制の声が上がっており、
一筋縄ではいかない様相ですが、
トランプ候補が勢いづく大統領選挙後のアメリカを考えても
最早アメリカ一辺倒ではやっていけません。
領土問題で障害があろうが
新たな経済パートナーとしても対中包囲網の一環としても
日露関係の存在感は今後さらに大きいものとなるでしょう。

オバマ大統領の広島訪問は日米の和解を象徴し戦後に一区切りをつけました。
しかし、残された北方領土問題が解決されない限り、戦後は終わりません。
日露の和解は領土問題を抱える中国、韓国に対するアピールにもなります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました