ウクライナと北方領土。

おはようございます!
ウクライナ情勢は一層厳しさを増しています。
ロシアはウクライナとの国境に展開する部隊の一部を撤収させたと発信していますが、
アメリカは「確認できていない」として依然として侵攻の可能性が高いとしています。
米軍がポーランドなどウクライナの隣国への増派を進める中
20日で終了予定だったロシアとベラルーシの合同軍事演習は延長が発表され
ウクライナに対する軍事的圧力は取り除かれてはいません。
北京オリンピックが閉会し、世界がコロナ禍に覆われている
今こそもっとも緊張が高まっていると思われます。

Russian forces near Ukraine, 2021-12-03 (crop)
米国の諜報機関による、
2021年12月3日のウクライナとの国境地帯でのロシア軍の配備。

実際、ロシア軍がいきなり直接的な軍事行動に出る事はないでしょう。
2月15日、ロシア下院でウクライナ東部の親露派が占めるドネツク州とルガンスク州を
それぞれ「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」として
独立国家として承認するよう、プーチン大統領に求める決議案が可決されました。
まずは親ロシア派が占領するドネツク州とルガンスク州は
本格的な正規軍による軍事侵攻の前にクリミアと同じように
親ロシア派によって独立させたうえでロシア連邦に吸収する魂胆でしょう。
この方法でロシアは大した被害もなくクリミア併合に結果的に成功しており、
ここにウクライナ軍が介入すればロシア系住民保護を掲げて軍も動かしやすくなります。

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弱気なヨーロッパ

こうしたロシアの偽旗作戦に対して欧米は有効な対応が取れていません。
ヨーロッパの主要国であるフランスとドイツは
ウクライナ問題における仲介外交を行ってきた当事国ですが、
対ISILから露仏関係は比較的良好で、
フランスのマクロン大統領がモスクワでプーチン大統領と会談、
マクロン大統領はウクライナのNATO加盟について否定はしないが、
賛成もしないような曖昧な態度であり、
暗にウクライナをNATOに加盟させないのが落としどころだと認識しているようです。
一方のドイツのショルツ首相はワシントンでバイデン大統領と会談、
ウクライナ侵攻の際はアメリカと足並みを揃えて制裁を行うとロシアをけん制しましたが、
ウクライナに対する積極的な軍事支援は拒んでいて、
ヘルメット5000個を送ってウクライナを落胆させています。
今回の危機のロシアにとっての最大の懸案である
ウクライナのNATO加盟について
欧米はウクライナの主権問題だとしてNATO非加盟の確約を拒否しつつも
現在に至ってもNATOは明確な答えを出せていません。
欧州がなぜこんなに弱気なのかというと
主要エネルギーとしてロシアの天然ガスに強く依存しているからです。

今の欧州の弱腰姿勢は第二次世界大戦前のミュンヘン協定に似ています。
英仏はさらなる領土拡張をしないという条件で
ナチスドイツへのチェコスロバキアのスデーデン地方割譲を認めましたが、
ここからチェコスロバキアの解体が始まり、
さらにはポーランド回廊問題から第二次世界大戦が始まります。
19日、G7外相会議がまさに80年前と同じミュンヘンで行われましたが、
ロシアがクリミア併合で満足しなかったように、東部2州でも収まらないと思います。
東部2州は改めて独立しなくとも事実上既にロシア軍の手中にあるわけで、
自分がプーチンなら少なくとも友好国ベラルーシからクリミア半島に続く
ドニエプル川より東側の領域ロシア語圏であり、
親ロシア派が多いので自陣に入れたいと考えるでしょう。
西側にはチェルノブイリという負の遺産もあるので
東ウクライナには潜在的に分離独立したいという思いがあります。

ウクライナを救うかもしれない唯一の国

米欧の弱気な態度はかえってロシアを増長させ、
ウクライナ侵攻を呼び起こす結果となるかもしれません。
ウクライナ侵攻を思い留まらせる手段の一つとして、
北方四島奪還を意図した北海道での日米合同軍事演習は個人的にありと思います。
ロシアはウクライナ侵攻のために極東の軍を移動させており、
極東の防備が手薄になっています。
2月7日の北方領土の日に駐日アメリカ大使が
「1950年代からアメリカは一貫して北方四島での日本の主権を認めている」と発言し、
アメリカは北方領土問題とウクライナ問題を結び付ける事により、
日本側からのロシアに対する圧力を期待している
のは明白であるため、
日本が本気なら共同訓練にも協力してくれるでしょう。
もちろんこれは今までの日露の平和条約交渉を反故にするものですが、
このままでは領土問題が何一つ進展しないのは明確であり、
むしろ今、国際的に不利な立場にいるのはロシアなので、
この時期に敵基地攻撃能力の保有や9条改憲など強い日本をアピールした方が
かえってウクライナ問題や北方領土問題について
ロシアからの譲歩が引き出せるのではないでしょうか。
現にロシアはベラルーシとの合同軍事演習はウクライナ侵攻を意図してないと言っているので
万一、日米合同演習を行っても批判できる立場にありません。

キューバ危機の教訓

今回のウクライナ危機についてロシアが原因ではなく
冷戦が終了した事で用なしになるはずだった
西側諸国の対ソ軍事同盟NATOの東方拡大を続け、
ロシアに対する圧力を弱めなかった欧米こそが原因であり、
アメリカは過度に危機を煽っているとロシアの肩を持つ意見も散見されます。
たしかにそういう側面もあるでしょう。
ロシアから見れば東ドイツやギリシャ以北のバルカン半島まであった
東西の境界(鉄のカーテン)はベラルーシやウクライナまで後退し、
バルト三国がEU入りしたことによりカリーニングラードは飛び地となっています。
EUやNATOの拡大交渉はこれまで
バルカン半島が中心でトルコのEU加盟が議論されるなど
東欧のCIS諸国が対象になる事はありませんでしたが、
今回の件でウクライナがNATO(EU)加盟となれば
ロシアとNATOが直接国境を接する事になるのです。
またクリミア半島はウクライナ人でもあるフルシチョフの時代に
善意でウクライナ領土としただけで元々はロシアだという主張もあります。
たしかに陸続きのウクライナとロシアの係争は
中国の海洋進出とは違って歴史的な問題が潜んでいることは明らかです。

しかし見方を変えれば
ソ連がアメリカの裏庭であるキューバにミサイル基地を建設しようとした
キューバ危機と立場が逆転しただけとも言えます。
キューバ危機ではソ連側が妥協して核ミサイルを撤去する事で終わりましたが、
今回のウクライナ危機ではアメリカがどこまで妥協できるかがカギになりそうです。

P-2H Neptune over Soviet ship Oct 1962
アメリカの軍用機とソ連の貨物船

日本にとって重要な事は他国の事情を汲んでおもんぱかるのではなく、
自国の国益と世界平和の両立です。
日本はウクライナにおけるクリミア半島のように
ロシアに北方領土を不法占拠されているのだから
立場上ウクライナを支援するのは流れとして当然と言えるでしょう。
ロシアとは平和条約交渉が続いているので
下手にロシアを刺激しないように
ウクライナ問題にはできるだけ関与しないというスタンスを取れば
北方領土だけでなく、尖閣や竹島など
日本の領土問題について国際社会の賛同が得られる訳がありません。
日本はロシアによる不法占拠を現在進行形で受けているG7唯一の国であり
むしろ最も厳しい口調でロシアを非難するべきなのです。
ロシアにとってモスクワに近いウクライナよりも
極東のクリル諸島の方が重要度は低い
ので、
日本の態度次第では対露包囲網が形成される中、G7の一角を崩すために
域外国である日本と極東でなんらかの妥協を行う可能性は十分にあり得ます。

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