これからの日本の立ち位置。

2016年も、もうすぐ終わりです。
今年一年かけて行われたアメリカ大統領選に
TPP離脱移民規制を訴えるドナルド・トランプが勝ったことにより、
欧州の右派も勢いづき、
ますます世界中に孤立主義・保護貿易が加速しています。

Shinzō Abe and Donald Trump (1)
(出典:首相官邸)

安部総理は各国首脳に先駆けて
大統領就任前のトランプと非公式会談を行いましたが、
トランプの決意は固く、再びTPPの離脱を表明しました。
TPP発効にはGDP合計が85%以上を占める6カ国以上が合意が必要なので、
日本とアメリカ二カ国の国内批准は絶対条件です。
アメリカがこれから離脱するにも関わらず国内批准は勧められ、
衆議院に続き、参議院も通り、
ついに12月9日、日本はアメリカに先駆けて国内批准を実現しました。
個人的にTPPには反対ですが、
アメリカなき今、日本が強引に批准を急ぎ、TPPを主導する意味は何か?
なぜ日本はこれほどまでTPPに拘るのでしょうか?

日本は民主党の野田内閣時代にTPP交渉の参加を表明しましたが、
そもそも自民党はTPP反対を訴えて与党に返り咲きました。
しかし、安部総理と当時TPPの日本参加を強く勧めてきたオバマ大統領との
初会談で「聖域なき関税撤廃」を前提としないという確約を得たため、
一転してTPPの参加を決めました。

政治と経済を多極的に捉えなければなかなか理解できないところですが、
「環太平洋」経済協力協定というのはアメリカ参加以前の経済規模の小さい
シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの
4か国による経済協定の名残であって
参加国のGDPはアメリカと日本が9割を占めるので
実態は日米FTAなのです。

アメリカから見るとユーロ危機や難民で混乱するEUよりも
世界第三位の経済大国日本と協力し
成長著しい中国に対抗する世界最大の自由貿易圏を構築する狙いでした。
アメリカはリーマンショック以後、
ロシア、中国の台頭を許し、経済的も軍事的にも精彩を欠いていましたが、
これで再び巻き返しを図ろうというわけです。
日本にとっても尖閣事件以降、
経済的も軍事的にも中国の脅威にさらされていたため、
法の支配、自由貿易など共通理念を持つアメリカと組むことは利点がありました。
メリット・デメリットは我々の生活に直結する視点でしか語られませんでしたが、
事実、アジア外交においても日米融和は外交上優位に働きました。

しかし、アメリカでシェール革命が起こり、
経済活動の根幹であるエネルギーの国内自給を賄えるどころか、
世界中に売ることが出来る国となったため、
中東を含め、外国への関心を薄めました。
その最たる証拠がトランプ大統領の誕生です。

安部総理はアベノミクスの戦略として、
オバマ大統領と共にTPPを推進し、大統領の広島訪問を実現させるなど
日米同盟の強化も目に見える形で実現させてきました。
日米で新たな世界の安全保障、経済の基盤を作ろうと試みてきました。
ここでアメリカに裏切られれば、国内ではアベノミクスの失敗を責められ、
在日米軍問題が再発すれば、外交にも大きな影響を及ぼし、
中国のアジア侵略はより容易になります。
国内に根強い反原発感情もあり、
シェール革命の恩恵が受けられないとなるとエネルギーの確保も怪しくなります。

トランプの当選でTPP参加国からは
アメリカ抜きのTPPを訴える声が広がっています。
日本がプレゼンスを取れるという前向きな意見も聞きますが、
実質的にアメリカを埋める国家は
法の支配、自由主義とは正反対の共産主義独裁国家中国になってしまいます。
著作権非親告罪化問題もTPPのデメリットに取り上げられましたが、
中国では著作権保護どころか知的財産権濫用も目に見えます。
もちろん各国の思惑も様々なのでこのとおり進むかは不透明ですが、
アメリカのTPP離脱は間違いなく中国に利する結果となってしまいます。
このように言わねばならないほど日米の一体化は進みきったとも言えます。

保護貿易が進んだ先にあるのは戦争であることは歴史に明らかです。
エネルギー大国(持てる国)は上手くいくかもしれませんが、
エネルギー小国(持たない国)でありながら
世界第3位の経済大国である日本が最大の被害を受けます。

なぜ「満州が日本の生命線」と呼ばれていたのか再認識するべきです。
自由貿易のみが日本の生き残る道です。
憲法改正や自衛隊の合憲化までは自主独立という観点から構いませんが
このままいけば日本の軍国主義化は避けられないでしょう。

日本は一度その道で破滅を経験していますし、
その未来は日本国民も外国人も望んでいない。
ヨーロッパやアメリカが保護主義に舵を切ろうという今、
日本の存在感は高まりつつあります。
日本は世界の良心として世界平和をリードしていく立場になるべきです。
今月の安倍総理の真珠湾訪問では
安倍外交の集大成として、こうした立場を表明する場にしてもらいたいし、
プーチンの日本訪問も未来に向けた前向きなものにして欲しいと思います。

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