ロシアの膨張癖

ウクライナ問題はやはりクリミアだけでは終わらなかった。
親ロシア派が庁舎占拠を続ける
ウクライナ東部のドネツク、ルガンスク両州で
事実上の独立を問う独自の住民投票を行った。

恐らくクリミアの二の舞になるに違いない。
ウクライナ東部は近い将来ロシア連邦の一部になる可能性もある。
結果次第では欧米は軍事行動も含めてさらに厳しい追加制裁を行うだろう。

住民投票の正当性も騒がれているが、
ウクライナ東部は圧倒的にロシア系が多く住民の多くは独立に賛成である。
また西部はチェルノブイリという負の遺産も抱えており、
東部親ロシア派としてはすぐにでも独立したい。
既に東西分裂してもおかしくない状態である。

第二次世界大戦の始まりはナチスドイツのポーランド侵攻であるが
ポーランド侵攻の原因でもあり、当初ナチスが望んだのは元々の領土であり、
第一次大戦の敗戦で奪われた
ドイツ系住民が多く住む自由都市ダンツィヒを含むポーランド回廊の割譲だった。
そしてドイツとソ連の密約でポーランドは東西に分割されたのである。
これと同じことがウクライナで起ころうとしている。

「力による現状変更」
という点で尖閣の中国の海洋侵略と比較をしてしまうが、
海を隔てた島に中国の利権は元々なく
何の根拠もないまさに野蛮な原始的侵略行為なのだが、
国境の存在する陸続きのウクライナとロシアには歴然とした問題がある。
この二つの問題は全く質の違うものと判断している。

歴史を紐解くとヨーロッパは
陸続きという地政学的力学関係の中で戦争を繰り返し、
二度の世界大戦を経験し冷戦を通して最終的にEUという地域連合を作った。
アジア、特に日本と中国は海に隔たれており、
このような歴史を経験せず未だに地域連合ができない。

東南アジアに関しては共に独立戦争と冷戦期のベトナム戦争を経験しており
ASEANが結成されているが、
東アジアでは朝鮮戦争も「終戦」でなくあくまで「停戦」状態であり、
共産国家の中国はますます強大になり、北朝鮮は核兵器を手に入れ、
まだまだ冷戦は続いている
もっともこのアジア版EUになるはずだったのが
欧米のアジア侵略に対抗するために
日本が提唱した大東亜共栄圏であり、
日本の戦争目的の一つだったのだが・・・

話をロシアに戻すが、今の我々の感覚だと
ロシアの帝国主義的行動は高圧的で理解のできないものだと感じるが、
あの広い国土が何故できたのか歴史を知らなければ問題の本質は見えない。

広いシベリア大陸は元々モンゴル帝国の領土であり、
そのモンゴル帝国は白人のヨーロッパ文明が恐らく
イスラームの次に衝突した異文明であり、
広義の意味で
モンゴロイド(黄色人種)とのファーストコンタクトであった。

モンゴル帝国は強大で東は朝鮮、
西は今問題のウクライナまでユーラシア全域を支配する大帝国だった。
モンゴルの騎馬軍団は中世のヨーロッパで非常に恐れられ、
この時の恐怖が20世紀の「黄渦論」に繋がり、
第二次大戦前の日本を危険視する風潮になっていく。
ロシア人は歴史的にモンゴル人や清などの黄色人種の諸民族と戦い
モンゴル帝国崩壊後の広大なシベリア地域は
黄色人種との緩衝地帯としてロシア人の植民地となり、
その勢いは現在のアラスカにまで及んだ。

その後の南下政策
「日清日露戦争」「ノモンハン事件」「北方領土問題」等、
我々日本人もよく知るところである。
ソ連が第二次大戦に勝利したことで、
かつてのモンゴル帝国のごとくその領域を拡大した。
ソ連が崩壊し、勢いの衰えたロシアが
アメリカの弱体ぶりを横目に今再び攻勢をかけようとしている。

ロシアのこの膨張癖は中世のモンゴル帝国の恐怖が根底にあり、
これら歴史を知ることで
ウクライナ問題と北方領土問題がさらに強く濃く繋がって見えてくる。

いずれにしても2回の世界大戦を経験している我々人類は歴史を反省し、
3回目を起こさないように
双方に冷静な判断を求めていくようにするしかない。
その対応についてはウクライナと尖閣と同一ではないという事も確かだ。

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