米中新冷戦の時代。

こんばんは。
アメリカに続いてオーストラリア、イギリス、カナダ
2022年北京冬季オリンピック大会の外交ボイコットを表明しました。
ニュージーランドも新型コロナウイルスのため
大臣級は派遣しないと表明しています。
これらの国はそっくりそのままアングロサクソン系のファイブ・アイズです。

UKUSA Map
ファイブ・アイズ(UKUSA協定)参加国

一方でフランスイタリア外交ボイコットに参加しないと表明しています。
フランスは伝統的に米英に追随しないド・ゴール主義を取り、
半島国家のイタリアはG7で唯一中国の一帯一路の参加を明言しており、
どっちつかずな国民性を感じます。
EUは加盟国が足並みをそろえた対応を取ろうとしましたが、
外交ボイコットに慎重な国が多く、合意に至っていません。

G7で態度を明らかにしていないのはドイツと日本のみになりました。
これも奇しくも第二次世界大戦の枢軸国です。
外交ボイコット問題を通じて各国のキャラクターが見えてきました。

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ドイツの状況

ドイツは12月4日にメルケル首相が退任し、
8日にショルツ新首相が就任したばかりで
この新政権がボイコットの是非を判断する事になります。

Olaf Scholz 2021 cropped
オーラフ・ショルツ首相
(参照:Steffen Prößdorf

IOCのバッハ会長はドイツのテレビに出演し、
「外交ボイコットに参加しない国が大半だ」として
ボイコットドミノを抑えようと必死です。
歴史的にドイツは親中ではありますが、
今年の11月には20年ぶりにドイツ艦艇が日本に寄港
海外領土を持たないドイツがインド太平洋に軍艦を派遣するのは異例で、
日米豪加と共に5カ国の共同訓練に参加するなど、
対中外交に変化が見られ、新政権の外相には中国批判派が就任しました。

来年の初めにもあると噂される
ロシア軍によるウクライナ侵攻を前にして
EU、その盟主とも言えるドイツが
同じく現状変更を試みようとする中国に対して
どういった判断を下すのか注目が集まります。

ただ、ドイツやEUにとって最重要なのはウクライナ情勢であり、
人権問題とは言え、遠く離れたインド太平洋にそれほどの関心はないでしょう。
一方の日本はさらに当事者意識を持つ必要があります。

日本の立場

昨年来からファイブ・アイズ日本参加論が取り沙汰されているように
日本の立場を考えるとアメリカの同盟国として、
また海洋国家としてファイブ・アイズと非常に近しいところがあります。
しかし、台湾有事においては距離が近すぎて
ファイブ・アイズメンバーよりもより直接的な問題に直面します。
なので慎重にならざるを得ない部分があるのも事実です。
しかし、クアッドに参加している米豪を無視して
フランスやイタリアのように「効果が薄いから」と言って
政治的なメッセージを全く出さないわけにもいかないでしょう。

同じくアメリカの同盟国である隣国韓国
同じ半島国家イタリア同様に外交ボイコットを検討しないと表明し、
クアッドの一角であるインド
いかなるボイコットにも参加しないと表明していますが
両国とも台湾有事においてはどこか他人事です。
こうした東アジアのパワーバランスを考えれば
ファイブ・アイズのような強いメッセージは出せなくとも
台湾情勢への強いコミットをアピールするために
ニュージーランドのように「大臣級は派遣しない」
とするのが落としどころではないでしょうか?

新冷戦

日独が立場を留保しているのには共通の要因があると思います。
両国とも第二次世界大戦後はアメリカの同盟国として
ソ連・共産主義の防波堤として機能してきました。
ソ連が崩壊した事で冷戦が終結し、一旦は緊張が解かれたのですが、
「世界の警察ではない」と宣言したオバマ政権でアメリカの求心力が低下し、
トランプ政権では「アメリカファースト」を謳い内向きな政策を行いました。
この結果、ロシアはソ連返りとも言える強硬路線に転じ、クリミア併合
中国は南シナ海、東シナ海への海洋進出を進めました。
各地でアメリカの影響力が弱まる中で
中露のユーラシアの大国に隣接する日独の同盟国が
独自の対応に迫られている
と言えるでしょう。

ドイツは冷戦時代まさに東西に分かれ、
冷戦の最前線であったことには違いありません。
しかしそれを乗り越え、ベルリンの壁が破壊され、東西統一
仮想敵であるソ連が崩壊
その後はEUの拡大が進み、前線はウクライナまで押し戻しました。
現在、ウクライナ情勢も油断なりませんが、
ロシアにはソ連時代ほどの力は残っていません。
一方、アジアでは一党独裁の中国共産党は健在であり、
市場開放政策により経済的に発展し、
その発展を元手に軍事的にも急成長しています。
東西ドイツと同じ分断国家である
朝鮮半島も統一することなく緊張関係が続いています。
新冷戦の最前線はヨーロッパでなく
極東・アジアに移ったことは否定できない
でしょう。
もし有事が起こるとすれば
台湾海峡や朝鮮半島の38度線が境界線にはなるでしょうが、
その際に基地となるのはまさに不沈空母である日本に他なりません。
域外国であるアメリカやオーストラリア、カナダ、イギリス、ドイツの軍艦が
相次いで日本に寄港しているのが何よりの証拠です。

新冷戦それぞれの役回り

東側の盟主ソ連から中国共産党に置き換わったのが
新冷戦というのは明らかですが、
アメリカは旧冷戦も新冷戦も
西側における超大国の盟主の地位である事には変わりません。
日本は冷戦時代、北方四島を占領されソ連との緊張関係はありましたが、
最前線であるヨーロッパの比ではありませんでした。
しかし、新冷戦では冷戦当時のイギリスのような立場に引き上げられていると言えます。
転じてイギリスは日本の役回りとも言えます。
韓国は分断国家としてドイツだと思いがちですが、
竹島問題や旧植民地など日本との関係を考えると
フォークランド紛争でイギリスとぶつかったアルゼンチンの要素もありますね。
実際は台湾国内の親中統一派の中国国民党(外省人)と
反中独立派の民進党(内省人)の関係が東西ドイツ
東南アジアの親中国であるミャンマー・カンボジア・ラオスが
ソ連の衛星国だった東ヨーロッパ、反中のベトナム・フィリピンが西ヨーロッパ
植民地の時代、唯一独立を維持し続けてきたタイは中立国スイス
インドネシア・マレーシア・シンガポールは
ノルディックバランスの北欧と言った感じではないでしょうか?

誰が台湾を守るべきか?

米英豪など民主主義の同盟国は
中国の覇権主義に一緒に対抗してくれるでしょうが、
「誰が台湾を守るべきか?」と問われれば
それはアメリカではなく
域内国で旧宗主国の日本しかないのです。
台湾に対してのアメリカの立場は歴史的に一貫したものではありません。
アメリカと台湾の繫がりは大陸由来の
外省人である蒋介石・中華民国(国民党)との友情関係が発端であり、
圧倒的多数の内省人(台湾人)との歴史的な接点はありません。
彼らはれっきとした日本国民でした。
安倍総理の台湾有事発言に対して
中国は「台湾は日本の一部ではない」と批判しましたが、
台湾が中国(共産党)の一部だったことも一度もありません
サンフランシスコで確かに日本は台湾の施政権を放棄しましたが、
地政学的に見ても
日台が運命共同体であるである事は明らかです。

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