6月23日に行われた国民投票によって
イギリスのEU離脱が決定しました。
前回行われたスコットランド独立の国民投票と同じく
僅差でしたが離脱派の勝利となりました。
EU離脱を巡っては
残留派の女性議員が極右の男性に暗殺される事件が起こるなど
イギリス国内で非常に敏感な話題となっていました。
事前の調査でも残留派、離脱派は拮抗していました。
この問題の根本は難民の問題です。
EUはシリア内戦において移民を受け入れているので
イギリスがEUに加盟している以上、難民受け入れからは逃れられない。
難民の中にテロリストが紛れ込んだ為に起きた
パリやブリュッセルのテロがロンドンでも起きるかも知れない。
遠い東京では感じられない身近な恐怖だったでしょう。
テロのリスクだけではなく
難民自体が国内雇用を奪っているという意見も強いです。
またイギリスは域内の大国としてEUに巨額の分担金を支払っていますが、
EUの拡大と共にギリシャなどの南ヨーロッパとの経済格差が広がっており、
経済危機が起これば財政負担を強制される可能性もあります。
こうした中でもEUはシリアに近いトルコとのEU加盟交渉を進めています。
トルコのEU加盟はヨーロッパでの難民やテロのリスクが増えると言われています。
イギリスにとってEUに残留するメリットよりも
デメリットの方が大きくなってしまったのです。
これに加えて残留を訴えていた現職のキャメロン首相が
タックスヘイブンでの租税逃れを追求される事態になります。
こうした事から残留派への失望が投票にも影響したと思われます。
キャメロン首相は投票の結果を受けて辞意を表明しました。
そもそもEUとは二度の世界大戦によって衰退したヨーロッパが
経済的にはアメリカや日本といった経済大国に対抗するために
政治的には共産圏に対抗するために生まれた
経済的政治的な共同体でした。
この背景には長年のライバルだった
フランスとドイツの和解という歴史的意義もありました。
仏独和解を進めた仏ミッテラン大統領と西独コール首相(出典:ドイツ連邦公文書館) |
ドイツは当時から最も経済的に成功していたので
EU設立に当たってフランス、特にドイツに利する構造になりました。
ナチズムの排外主義の反省から
EUは移民に寛容的な政策を進めてきました。
こうした中でイギリスは少し特殊な立場にありました。
イギリスはEU内での主導権を欲しましたが
日本と同じ島国であり、ポンドも影響力のある通貨だったので、
ユーロ(共通通貨)も導入しませんでした。
こういった姿勢はもともとイギリスにあったヨーロッパ統合の疑念であり、
まずい事があったら直ぐに逃げ出せるという状況を想定していました。
イギリスはやはりこの辺が計算高いと思います。
イギリスのEU離脱が世界に与える影響はかなり大きいです。
クリミア併合における対露制裁に強硬なイギリスがEUから抜けた事によって
経済的にロシアに依存するフランス、ドイツのEUは
制裁解除に踏み切る可能性もあります。
これは北方領土交渉の日本にも大きな影響を与えるでしょう。
東側に対する西側の米欧の連携という
従来の世界構造はイギリスのEU離脱によって崩壊するかもしれません。
ロシアはますますヨーロッパに進出できるし、
イギリスは恐らくアメリカとのアングロ・サクロン同盟を模索するでしょう。
イギリス国内にとっても先が明るいとは言えません。
投票を地域別で見ると南部のイングランドは離脱が多かったようですが、
スコットランドや北部アイルランドは残留が多数派でした。
今後、スコットランドや北部アイルランドがEU加盟を訴えて、
分離独立運動が再熱するかもしれません。
これは英連合の崩壊を意味します。
EUとの関係悪化は避けられないし、イギリス経済は衰退するでしょう。
これは当然アメリカや日本にも影響を与えます。
安倍総理の「リーマンショック以前」の発言は
案外的を得ていたのかもしれません。
日本の参院選、アメリカの大統領選にも少なからず影響を与えます。
やはり歴史はヨーロッパから動き出すのか?
世界のブロック化が止まりません。
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