
7月4日はアメリカの独立記念日です。
日本では時差の関係で、本日7月5日になります。
世界最大の経済大国が誕生したこの日を境に、
近代の国際秩序が大きく変わっていった歴史を思うと、やはり特別な意味があります。
「独立」と言うとトランプ大統領は今年4月2日を「解放の日」と称し、
世界に対して相互関税を発表しました。
日本を含む各国との貿易交渉において、
基本関税10%以外の上乗せ分の発動は、90日間の猶予が与えられていましたが、
その期限である7月9日が迫っています。
難航する日米交渉
日米の交渉は依然として難航しています。
赤沢大臣は7回も訪米し日本側は粘り強く妥協点を探っていますが、
ここにきてベッセント財務長官とアポイントが取れないというトラブルに見舞われています
7月2日、トランプ大統領は一向に進まない日米交渉に苛立ちを隠さず、
これまで発表していた24%をさらに上回る
30〜35%の「懲罰的関税」を課すと発言し、物議を醸しています。
日本が求める関税の引き下げどころか、引き上げを示唆する強硬姿勢です。
30〜35%というのは、現在の中国への関税と同等であり、
もはや同盟国とは思えない対応です。
トランプが経済的には日本を完全に「敵国」と見ているのは確実でしょう。
しかし、そこにはトランプの誤算もあったように思えます。
日本は「最もくみしやすい相手」と見て、
早期合意を図り、当初は優先交渉権があるとしていました。
初回は大統領自らもサプライズで交渉の場に姿を現したものの、
日本は自動車にかけられる25%の関税は
「絶対に認められない」と頑なな態度を取り続けています。
トランプは、交渉が決裂した場合、
日本からの自動車輸入台数に上限を設ける可能性にまで言及しています。
7回の訪米というのは他国の例を見ても異例であり、
日本側の誠意をもってトランプを説得したいという意思の表れではありますが、
トランプはトップダウンで素早い決断を好み、
トップである石破総理がトランプとの接触を拒み
担当大臣に対応させるこうしたやり方を嫌っているようです。
日本だけではない、各国の抵抗
このアメリカの強引な関税交渉は日本だけではなく、他の国々でも難航しています。
当初から最低税率の10%で合意したのは最も親しい同盟国であるイギリスのみ、
ほかに7月3日、ベトナムが続きましたが、
その内容は実質的に「不平等条約」ともいえるものでした。
ベトナムはアメリカからの輸入品の関税をゼロにする代わりに、
アメリカはベトナムからの輸入品に20%の関税をかけるというものです。
当初の46%から半減はさせたものの、日本がこれを手本にする必要はありません。
合意間近と言われたインドですら、
報復関税を宣言するなど、各国は強硬に対抗しています。
日本が貫くべき「独立」
6月26日、石破総理が欠席を決めたNATO会議で
ヨーロッパの加盟国は2035年までに
トランプが求める防衛費GDP5%引き上げに合意しました。
それでも貿易交渉は期限までの合意を事実上断念し、
現状維持へとシフトチェンジしています。
6月20日、日本もアメリカから
防衛費GDP3.5%の増額要求を受けていたとの報道がありました。
日本は岸田政権時代に27年度までの防衛費GDP2%目標は決まっており、
3%までの要求は想定していましたが、これを上回る要求として日本側が拒絶、
この影響で7月1日開催予定だった日米2+2の会合が延期となったとされます。
アメリカはヨーロッパがGDP5%に合意したことで
アジアの同盟国もできるはずとさらに増額した目標をもって圧力を加えています。
国内ではNATO会議欠席を決めた石破総理に非難の声が上がっていますが、
私個人としては欠席でよかったと思います。
NATOの事務総長に選出されたオランダのルッテ首相は
イラン攻撃を称賛するなどトランプ大統領を持ち上げましたが、
日本は国際法違反のアメリカのイラン攻撃を認めてはいけないし、
NATOのGDP5%の防衛費増を決めたこの場に居合わせることは
政治的リスクの方が大きい。
招待された他のIP4諸国も韓国、オーストラリアの首脳が欠席をしたので
日本の行動が別段特異だったわけでもありません。
世界中がトランプの言動に振り回されていますが、
トランプはスローガンに掲げるMAGA(米国を再び偉大に)だけではなく
TACO(トランプはいつも腰砕け)とも呼ばれています。
中国と互いに100%を超える関税合戦を繰り広げたのに、
最終的には関税引き下げに合意したように
最初に強気の態度にはできるが、最終的には何もできないという
トランプ手法も見透かされつつあるのが現状です。
ただ、これは中国が経済的軍事的に強国であるからであって
相対的に貧弱なベトナムはその例ではありません。
日本はアメリカの設定した期限や圧力に過剰に縛られることなく、
あくまで粘り強く交渉を続けるべきでしょう。
実際、ベッセント財務長官も
「日本は7月20日に参院選を控えており、国内的に難しい状況にある」として、
一定の理解を示しています。
日本が誠意をもって対応し続ける限り、延長の可能性もあります。
とはいえ、最終的な決定権を握るのは大統領です。
イランの核施設をバンカーバスターで破壊したように、
予想もしない手段に出てくる可能性も否定できません。
トランプ大統領は各国と個別の交渉方法からの転換を図り、
4日から1日10カ国ほどに書簡で関税率を通知すると発言していますが、
関税率に対して
「60〜70%程度から10〜20%程度まで幅広くなるだろう」と言及しています。
これも一種のトランプ流の圧力外交です。
ある意味でトランプ関税は日本が真の意味で独立するチャンスとも言えます。
アメリカの「独立記念日」を迎えた今、
日本もまた「独立国」として、
トランプに惑わされることなく、リスペクトを維持しつつ、
誇りをもって交渉を続ける覚悟が求められているのではないでしょうか。
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