斎藤元彦兵庫県知事が
内部告発文書問題を巡り議会で不信任決議を受け、
地方自治法に基づいて失職したことがきっかけで行われた
兵庫県知事選挙の投開票が11月17日にありました。
その結果、議会から全会一致で不信任を受けた
斎藤知事が再任されるという劇的な展開となりました。
内部告発文書問題
2024年3月に、当時の西播磨県民局長が、
斎藤知事や県幹部らを告発する文書を、
兵庫県警、国会議員、県会議員、報道各社の計10箇所に匿名で送付したことを端に発し
マスコミは連日、斎藤知事の職員に対するパワハラや
贈答品のおねだりなどの疑惑を報道し、批判的な論調で伝えてきました。
斎藤知事は文書について「嘘八百である」と告発内容を否定、
犯人を突き止めて、3月末定年退職間際だった県民局長の退職を保留、
4月4日、県民局長は実名で改めて県庁内の公益通報窓口に内部告発文書を提出。
5月7日に斎藤知事は県民局長に不正の事実があったとする
県の内部調査を受け、弁護士との相談を重ねたうえで
元西播磨県民局長を停職3ヵ月の懲戒処分としました。
しかし、県議会は告発文の一部が事実であるとの報道を受け、
内部調査では不十分と第三者委員会の設置を要求、
丸尾牧県議が独自にパワハラに関する匿名アンケートを実施、
そのアンケートの指摘の一部が事実であるとして斎藤知事を謝罪に追い込みました。
以降、マスコミの報道も過熱し、
議会は偽証罪が適応される百条委員会設置に動きます。
51年ぶりの百条委員会と元県民局長の自死
兵庫県議会で百条委員会が51年ぶりに設置され、
疑惑の追及が始まりますが、
7月7日に告発者である元県民局長が答弁直前に自死したことで
報道はさらにエスカレート、
齋藤知事のパワハラが県民局長を自殺に追い込んだというミスリードを誘いました。
百条委員会が参考人として招致した識者二名は
告発者を処分した知事の対応が公益通報者保護法に違反すると指摘、
奥谷委員長は告発者の死と県政の混乱について
知事側に「道義的責任」があると責めます。
斎藤知事の側近である片山副知事が7月31日付で辞職、
3年前の知事選で斎藤氏を推薦していた日本維新の会は
当初、告発文の信憑性、正当性について疑っていましたが、
県政の停滞を見て、ついに知事を見限り辞職を要求。
斎藤知事が頑なに辞職をしなかったため、
百条委員会や第三者委員会の結果を待たずに
兵庫県議会は全会一致で不信任決議案を可決、
斎藤知事は10日以内に県議会を解散するか辞職するかの選択を迫られ、
議会は早急に知事を辞職に追い込みました。
異例の選挙
不信任を受け失職した知事の後任を決める
今回の知事選は過去最多8人の立候補となりました。
共産党は医師の大沢芳清氏を推薦、
立憲民主、国民民主は揃って前尼崎市長の稲村和美氏を、
元々、齋藤氏を推薦していた維新の会は
元維新所属の前参院議員、清水貴之氏をそれぞれ支持、
自民と公明は自主投票としましたが、大半が稲村支持に傾きました。
全会一致で議会から不信任を受けた齋藤氏は
普通に考えればもう終わりですが、
失職後も「改革を止めない」と出直し出馬を表明。
3年前の選挙では維新と自民の支援を受けて当選しましたが、
今回は孤立無援一人からのスタートです。
既存政党の組織票を考慮すると圧倒的に稲村氏優位と言える状況でした。
四面楚歌の斎藤知事ですが、
百条委員会やマスコミからの厳しい批判に晒されながらも
頑なに非を認めず、その姿勢は「鋼のメンタル」と言われ、
実は知事は一人で戦っているのではないかと
にわかにマスコミ報道に疑念を持つ人が増えていきました。
そして10月24日にNHK党の立花孝志党首が
8人目に立候補したことで情勢が大きく変わっていきます。
立花孝志氏の出馬動機
今回、立花氏は当選を目的としない異例の出馬で、
告発文書問題は斎藤県政転覆を狙った議会のクーデターだとし、
それに既存政党や大手マスコミが便乗しているとし、
いじめは許さないと斎藤氏の支援に徹しました。
立花氏はもともとこの問題に深い関心はなかったという事ですが、
兵庫県に所縁のあるN国党の浜田聡、齊藤健一郎両参院議員が
国政調査権を行使し調べ、斎藤知事がシロであると確信し、
N国として何かできないかという事で
幼少期に兵庫県淡路島に移り住んだ経験があり、
かつてNHKの不正経理を内部告発した立花党首が
元県民局長の内部通報の悪用は許さないと主張したのです。
立花氏は3月に出された文書は公益通報に当たらないとし、
元県民局長の自殺の動機はパワハラや停職処分を不服とするものでなく、
押収された公用PCに残った不倫日記が公開されることを恐れたものであるとして
公用PCの中身を開示するように訴えました。
立花氏の出馬表明のタイミングで
みんつく党の大津綾香党首に対する
つきまとい行為で立花氏が書類送検されたと一斉報道されましたが、
6月に被害届を出しているものをこのタイミングで報道するのは
あきらかにマスコミが明確な意図を持ち、
立花氏をいつものお騒がせ人物と印象操作しておけば
抑え込めると思ったに違いありません。
テレビ・新聞は兵庫県知事選における立花候補の存在をひたすら無視しました。
息をひそめたオールドメディアと過熱するSNS
辞職に至るまで報道が過熱していたのに
選挙が始まるとテレビや新聞といった既存のメディアはいっきに情報を流さなくなりました。
選挙の公平性を担保するためとの理由だそうですが、
それが本当であれば、テレビや新聞が立花氏を無視したことと整合性が取れません。
一方で立花氏の元には県議やマスコミからのリーク情報が続々と入り、
偽証罪が適応される百条委員会の秘密会で
片山元副知事が公用PCにあった不倫日記の話をしようとして
奥谷委員長に発言を止められる場面や
議場を後にした元副知事に対して
マスコミが取り囲み、公用PCの中身を話したことを責め立てる様子を収めた
録音音声をYouTubeや街頭演説などで公開しました。
奥谷委員長をはじめとする議員や大手マスコミは元県民局長の自殺の真相を知りながら
それを隠して斎藤知事を貶めるために利用しているという
立花氏の主張を裏付けるものとなっています。
斎藤氏は3年間の公約の成果を語り、改革を前に進めると主張。
斎藤氏の演説の後には同じ場所で立花氏が演説する援護射撃の体制で、
斎藤氏が一人で始めた選挙も
いつしか街頭演説には人だかりができ、熱狂に包まれました。
22人の市長会の不可解な行動
投票まで後3日となって、
22の兵庫県の市長が突然市長会を名乗って連名で稲村支持の声明を発表、
マスコミを集めて共同記者会見を開き、改めて斎藤県政を全否定。
解釈はいろいろあるようですが、
市長会と名乗って数を集めてマスコミまで入れて報道させたというのは
市長と言う立場を利用した選挙の不当介入であり、
公職選挙法違反に当たると思います。
それほどまでに斎藤氏の追い上げがすごかったという事でしょうが、
こんな見え見えの行動をしたところで
有権者にとって市長たちの行動は疑問にしか思えなかったでしょう。
選挙戦が改革か既得権益かという図式に変わっていく中で
かえって稲村候補が既得権益に担ぎ上げられていることが明白になっただけで、
この時点で勝負は決まったも同然でした。
これからの政治とメディアの在り方
斎藤知事は再選を果たしましたが、
議会との溝が埋まったわけではありません。
22人の市長の問題と同様に、非常に困難な政権運営を迫られることになります。
事件の真相は今後も究明されなければなりませんが、
斎藤知事が多数の議員から嫌われている事には違いがないので、
円滑な県政のためにも急進的な改革路線は再考する必要があるかもしれません。
しかし、この選挙結果は議会やマスコミの方がより深く反省するべきです。
議会が全会一致で不信任を突きつけた知事が
県民から信任を得て戻ってきた事実は重く受け止めるべきであり、
議会の側こそ、その信任に疑問が生じていると言わざるを得ません。
こうした議会が運営する百条委員会に正統性があるのでしょうか?
そもそも百条委員会や第三者委員会の結論を見ずに
早急に知事を辞職させたのが問題なのです。
追い出してしまえばこっちのもの、
どうせ戻ってくるはずがないと高を括っていたのでしょう。
議会と一緒になって斎藤知事側を追い詰めた大手メディアも同罪です。
テレビ・新聞はもはやマスメディアではないという存立危機に直面しているのです。
株を上げた立花氏
今回の選挙の最大の勝者はN国、立花氏でしょう。
熱心な支持者は別にして一般的にはお騒がせの人という印象だった
ディール役の立花氏が選挙を通して百条委員会の闇を明らかにし、
幅広い層にとって正義の人になりました。
私自身、N国が国政政党となり躍進した時から
今後、N国が確固たる国政政党として成長していくには
「悪名は無名に勝る」を地で行く
過激な選挙活動や奇をてらった選挙ハックなどで
選挙をかき乱す事をいつまでもやるべきではなく、
いつかは転換する必要があると訴えてきました。
ガーシーの除名騒動や大津氏との代表権争いなどで
求心力が低下していたN国でしたが、
今回は見事な転換劇だったでしょう。
立花氏の原点でもあるNHKを内部告発した正義の人として
今回は過去のどの選挙よりも正当性があったと思います。
選挙結果を受け、立花氏は南あわじ市の市長選への挑戦を表明し、
来年の参議院選には地方政党を立ち上げ
稲村支持を表明した22市長に対立候補を擁立するとしています。
今後も立花氏、N国から目が離せません。
日本のトランプ現象
今回の兵庫県知事選を総括すると
まさにオールドメディアの終焉の一言に尽きます。
石丸旋風の東京都知事選に始まり、
ネットの熱烈な支持を受けた高市早苗候補の自民党総裁選と
2024年を通してSNSとオールドメディア(既得権益)の戦いが繰り広げましたが、
どちらも惜しいところまで行ったものの勝ちきれませんでした。
兵庫県知事選は三度目の正直で、
SNSが勝ち切った歴史的快挙だったでしょう。
先日投開票され、トランプが返り咲いた
2024年アメリカ大統領選でも
全米マスコミはしきりにハリス優勢を主張し続けていました。
しかし、結果はトランプ圧勝。
Twitterでアカウントを凍結されていたトランプでしたが、
そのTwitterをイーロン・マスクが買収し、
Xとなってトランプのアカウントが復活、
トランプ陣営はSNSを積極的に活用した選挙戦を展開していました。
一方のハリスはテレビでしか情報発信を行いませんでした。
兵庫県の今回の騒動は
アメリカが数年かけて作ってきた「トランプ現象」の流れを
わずか数カ月で実現した出来事だったのではないでしょうか。
国民投票への影響
まさにこうしたマスメディアの転換、
SNSが選挙結果を左右する現象が2024年、世界的に起こったのです。
いろいろな不安要素を抱えながらも
これが新しい民主主義の形なのだろうと思います。
そしてこの流れは止められないと思います。
日本という国家において最大の課題であり、
最大の選挙は憲法改正の国民投票です。
しかしながら長らく国民の政治の無関心、投票率の低さ、
それに甘んじ、私腹を肥やした既存政党、メディアが日本を支配していました。
私は今回の一連の出来事を見て、
大手マスコミや議員の悪事が世に明るみになり
若者の投票率も上がって政治の関心が上がったと肯定的に捉えています。
政治家やメディアがいかに腐っていても、
選挙制度は常に平等である。
国民投票に向けて前向きな展開だったと思います。
国を変えるにはまず地方から、
もし立花氏が南あわじ市の市長にあった暁には
日本誕生の地、淡路島から
日本全土にこの流れを広げていってもらいたいと思います。
コメント