自民党総裁選2024。

こんばんは。
9月27日、自民党総裁選の投開票が行われ、
高市早苗候補との決選投票で大逆転し、石破茂新総裁が誕生しました。
総裁選に向けて記事を書き進めていたのですが、間に合わず…
今回の総裁選を振り返り総括したいと思います。

Shigeru Ishiba 20240607
石破茂新総裁
(出典:内閣官房内閣広報室
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岸田総理の退陣表明

8月14日、岸田総理が総裁選の不出馬を表明し、
ポスト岸田の動きが本格化しました。
岸田総理は最後まで出馬を目指したものの支持率の回復は望めず、
外交日程に区切りをつけたタイミングで発表に至りました。

支持率の低下の最大要因は安倍派による裏金問題であり、
外交も経済も岸田総理個人としての実績は
必ずしも悪くなかったとは思いますが、
派閥解散に追い込み、身内に敵を多く作りすぎたため
いずれにしても総裁再選は難しい状況だったでしょう。

総裁選の直前に解散し、総裁選を先延ばしにする方法もありましたが、
衆院の三補選に連敗するなど、裏金問題に対する逆風は強く、
現状の支持率では自民党を下野に追い込むだけになってしまいます。
ある意味で岸田総理は自身の野心ではなく、
良心的に幕引きを図ったと言えるのではないでしょうか?

国政進出が取り沙汰された小池百合子東京都知事も結局は
都知事選に出馬し再選、都知事の地位に留まりました。
自民党の味方になることもなければ敵になることもない。
ある意味で来年の選挙に向けて大きな脅威がなくなったとも言えます。

ポスト岸田の顔ぶれ

今回の総裁選はただ新しい総理大臣を決めるというだけでなく、
来年の国政選挙を勝ち抜く「選挙の顔」を決める重大な選挙となりました。
届出順に候補者を見ていきます。

高市早苗

Sanae Takaichi 20190617
(出典:内閣府

経済安保担当相(無派閥)
総務相、自民党政調会長など重要ポストを歴任。
前回に続いて2回目の総裁選で、初の女性総理を目指す。
安倍路線継承を訴え、憲法改正に積極的な保守派
対中国、北朝鮮の強硬派で保守層からの人気も高く、歯切れの良い発言に定評があります。
前回は岸田、河野に続く3位の得票数を得ましたが、
最大の後ろ盾だった安倍元総理が亡くなった今、
前回のように強力な支援が得られるのかが肝になりそう。
推薦人に裏金議員が多く、また法的処分は終わっているとする高市氏が
総理となれば人事への影響も考えられます。
「裏金内閣」と野党に足元をすくわれ、国会運営が停滞するという不安要素もあります。

小林鷹之

Takayuki Kobayashi 20171218
(出典:首相官邸

初代経済安保担当相(旧二階派)
自民党内の中堅、若手議員を中心に推薦人を確保し総裁選初出馬
「コバホーク」の愛称も報道で定着してきました。
その名の通りタカ派傾向で岸田内閣で初代経済安保担当相を務めました。
非世襲の政治家という面ではクリーンなイメージもありそうです。
ただ、裏金議員の処遇に対しては適材適所にと最も寛容的です。
自身も二階派出身ですが、旧安倍派は最大派閥のため、
議員票を得るためにも裏金議員を簡単に切り捨てていいのかという問題はあります。
49歳と若い候補は刷新感はあるものの、大臣経験は一度だけ、
推薦人の大半は当選回数の少ない若手で支援としては力不足、
他候補に比べ知名度が低く、選挙の顔となるのか問われます。

林芳正

官房長官(旧岸田派)
防衛相、経済財政相、農林水産相、文部科学相、外務大臣を歴任。
岸田内閣で官房長官として岸田総理を支えた。
英語やピアノが堪能
「イマジン」を弾き語り各国の要人を沸かせたこともあります。
総裁選の挑戦は野党時代だった2012年以来、2回目
入閣回数も多く、外交や内政と幅広い知識と経験を持ちますが、
内閣のスポークスマンとして官房長官を務めていることから
日本のEEZ内に設置された中国のブイ問題に対するヌルい発言など
宏池会(旧岸田派)に共通する「親中派」との声が根強く、
これから強まるであろう中国の圧力に対して
毅然とした態度で挑めるのか疑問視されています。

小泉進次郎

Shinjirō Koizumi
(出典:首相官邸

元環境大臣(無派閥)
父親が自民党をぶっ壊すと小泉劇場を巻き起こした
小泉純一郎元総理で圧倒的な知名度を誇ります。
その答弁に関しては小泉構文としてネットのおもちゃにされますが、
私生活では滝川クリステルと結婚し、
子供が誕生してからは2週間の育児休暇を取るなど主婦にも親しみを持たれており、
処理水放出の際には福島沖でサーフィンを楽しみ
水産物を食べて安全性をアピールし行動力を発揮しました。
若い時から総理候補に名が挙がっており、今回総裁選に初出馬しました。
43歳という若さと勢いで人気はあるものの
大臣経験といえば評判の悪いレジ袋有料化を行なった環境大臣のみ
経験不足は誰しもが指摘するところでしょう。
カナダのトルドー首相や北朝鮮の金正恩と同年代だとして
若さを売りにしようとしていますが、発言の一つ一つに具体性がありません。
後見人として同じ神奈川選挙区の菅元総理が付いているものの
政治家として個人のビジョンを見出せるのかが鍵になるでしょう。

上川陽子

外務大臣(旧岸田派)
少子化担当大臣、法務大臣を歴任。
特に安倍・菅政権時代は法務大臣を長きに渡って務め、
任期中には麻原彰晃はじめオウム事件の死刑囚の死刑執行を命じたことで有名。
得意の英語で臆することなく外務大臣としての手腕を発揮し、
岸田内閣の外交実績と共に評判も上がっていきました。
旧岸田派で外務大臣経験者という点で岸田総理とも近く
麻生副総理おばさん発言(おそらくわざと)で一気に知名度を上げ、
ポスト岸田候補に躍り出た感のある上川大臣が総裁選初出馬です。
林官房長官同様、中国に対する弱気な姿勢など
岸田外交の批判自体が現役閣僚の立場を弱くしている感があります。

加藤勝信

Katsunobu Katō 20201017 (cropped)
(出典:厚生労働省

拉致問題対策本部長、衆議院予算委員会筆頭理事(旧茂木派)
一億総活躍担当大臣、厚生労働大臣、自民党総務会長、官房長官を歴任。
安倍元総理と近く、安倍政権で官房副長官に起用され
2015年に一億総活躍担当大臣として初入閣。菅政権では官房長官を務めました。
今回が総裁選初出馬です。
堅実な立ち回りで、安倍・菅政権で引き立てられたましたが、
岸田政権からは閣僚や党役員などの要職を離れており、非主流派に追いやられています。
温厚な性格で政敵がいないという意味では
混沌とした自民党内をまとめるに相応しいと思われる可能性もありますが、
髪質から取られた「たわし」の愛称しかり、
候補者の中で最も地味で、選挙の顔になれるのか疑問符も付きます。

河野太郎

Tarō Kōno 20100712 (cropped)
(出典:首相官邸

デジタル大臣(麻生派)
行政改革担当大臣、外務大臣、防衛大臣を歴任。
「脱原発」を唱えるなど自民党の異端児の異名を取ります。
父親は、悪名高い河野談話を生んだ元衆議院議長の洋平氏。
しかし父親とは違い外務大臣時代には
中韓に強気で対応したことで保守層に一目置かれました。
歯に衣着せぬ発言とフランクなSNS活用で知られ、
ネット世代の若年層にも人気があり、
X(旧Twitter)フォロワー数は250万を超えます。
総裁選は前回に続き三回目の挑戦。前回は小石河連合で挑み、
一回目の投票でわずか一票差で岸田氏に次ぐ二位になりましたが、決選投票で敗れました。
順当にいけば前回2位の河野氏は望みがありそうですが、
自民党で唯一、解散しなかった麻生派に所属していることがどう出るか…

石破茂

元幹事長(無派閥)
防衛大臣、農林水産大臣、地方創生担当大臣を歴任。
安全保障政策に精通していることで知られ、
戦闘機や軍艦のプラモデル作りを趣味とし、鉄道、アイドルの造詣も深く、
ネット界隈では「ゲル」の愛称で知られています。
総裁選は今回で5度目
安倍元総理とは犬猿の仲で知られます。
世論調査でも常に人気が高いですが、
保守政党である自民党の中ではリベラル寄りの思想を持ち、
党内では群れるのを好まず必要とあらば党を批判する
異端児気質が党内の敵を多くしています。
過去には宮沢内閣において野党提出の内閣不信任案に賛成して離党したり、
復党後も麻生内閣末期に「麻生おろし」に積極的に関与したため麻生氏との関係も最悪です。
党をまとめられるかが全てでしょう。

茂木敏充

幹事長(旧茂木派)
経済産業大臣や経済再生担当大臣、外務大臣を歴任したほか、
党でも政務調査会長や選挙対策委員長などの重役を担いました。
非世襲の政治家で、政界では記憶力がよさで知られ、
安倍元総理は茂木氏を「同期で一番頭がいい」と評していました。
トランプ政権のアメリカとの難しい経済交渉を行い、
トランプ大統領からも「タフネゴシエイター」と呼ばれました。
岸田総理と麻生副総理、茂木幹事長は緊密に何度も会談し、
この状況は「三頭政治」と呼ばれましたが、
派閥とカネ問題の発覚から岸田総理が派閥解消を宣言し、
派閥維持派である麻生、茂木両氏との関係が崩れました。
幹事長であるため、岸田総理が出れば出馬しないとみられましたが、
岸田総理が総裁選不出馬を決めた事から今回、総裁選に初挑戦です。
自身の派閥だった旧茂木派に加え
麻生副総理とは盟友関係なので麻生派からの一定の支持はありそうです。

派閥解消の効果

9人という過去最多の立候補となり、
旧同一派閥から複数の候補者が出るなど乱立状態となりましたが、
良い悪いは別として
派閥解消の効果がハッキリ出た事象であると言えます。

ある意味で選挙結果が読みづらくなったとも言えます。
従来であれば各派閥から一人候補が出たので
派閥間での調整、派閥の規模などで自ずと有力候補が決まってきました。

順当にいけば前回、第二位の河野氏が有力と言えました。
しかし、前回は所属する麻生派の麻生副総理の反対を押し切っての立候補であり、
さらに麻生副総理の政敵でもある石破氏と手を組み、そこに小泉氏も相乗り
俗にいう「小石河連合」が組まれた結果の二位でした。

麻生氏は頭を下げたからと派閥のボスとして河野氏支持を決めましたが、
前回の事もあるので麻生派としては自主投票となってしまいました。
その上、今回は小石河それぞれが出馬し相対しましたが、
石破、小泉両氏が無派閥であるのに対して、自身は唯一存続を決めた麻生派所属であり、
派閥とカネ問題が岸田総理退陣の原因のため、河野氏は相対的に不利な情勢でした。
これは派閥のイメージがついてる他の候補も同様です。
一時期は次期総理候補として人気のあった河野氏ですが、
結果的には全体8位に沈んでしまいました。

序盤は人気が高く無派閥
石破氏、小泉氏がリードする展開となりました
石破氏は党員人気が高く、誰が総理に相応しいかという世論調査では毎回トップ。
地方票では最も多くの票を取るだろうと当初から予想されました。
しかし、リベラル寄りな石破氏は党内に敵が多く、
2012年の安倍元総理と争った総裁選でも議員票で逆転され敗れていました。
一方、小泉氏は政敵も少なく、
若い小泉氏しかこの難局を乗り切れないという声は根強くありました。
実際、議員票では最も多くの得票数を得ましたが、
テレビ討論で醜態を晒してしまい、地方票で大きく失速してしまいました。

小泉氏の代わりに前回3位の高市氏が票を伸ばしました。
初の女性総理はジェンダーフリーの時代に待望する声も大きく、
中国にも強気の姿勢を取ることで知られており、
ブイ設置や在中邦人に対する相次ぐ傷害事件など
対中感情が悪化するごとに保守層の高市氏支持の声は大きくなっていきました。
実際に一回目の投票ではトップになりました。
当初から過半数は取れずに決選投票になることが確実視されていたので
石破氏との決選投票なら高市氏が優位とみられました。
麻生派も決選投票では高市氏に投票を決めていましたし、
石破氏は裏金問題に対して最も強硬な姿勢を取っていたので、
最大派閥の旧安倍派の票は入らないと見られました。

しかし、石破氏が大逆転する結果となり、最後まで予測不能の展開となりました。
裏で動いたのが自身の政策を引き継がせたい岸田総理(岸田派)とも言われています。
菅元総理も決選投票では石破氏支持に動き、
麻生氏が一人キングメーカーから引きずり下ろされる形となりました。

立憲民主党の代表選の影響

今回、9月12日告示、27日投開票と過去最長の総裁選でした。
また、同時に第二党の立憲民主党代表選(7日告示、23日投開票)も行われた事から
選挙の判断材料はあるとして、
総理になった暁には早期解散すると明言していた小泉氏ですが
この長い選挙戦の最中、テレビで発言すればするほどボロが出てしまい自滅しました。

前回の総裁選でも岸田氏が一番乗りだったように、
一般的に総裁選は先に立候補する方が有利だと言われ、高市氏も真っ先に手を挙げました。
実際、高市氏は一回目の投票で一位になりました。
しかし、23日に立憲民主党代表選の投開票が行われ、
投開票で新代表に野田元総理が選ばれました。
野田氏は候補者の中では最も保守寄りで総理経験者として安定感があります。

今後、立憲民主が共産と袂を分かち寛容な保守路線を取った場合、
総理になっても靖国参拝を辞めないと公言する高市氏は相対的に強硬に映り
選挙で自民支持層の中道派が離れると警戒感が増したという見方もできます。
そして、立憲民主にとって推薦人に裏金議員が多い高市氏は与しやすい相手です。
そういう意味では石破氏は無派閥であり、
自民党の中では中道、リベラル寄りで一定の安定感もあります。
裏金問題でも攻めづらく、立憲民主にとってもやりづらい相手です。
最終的に立憲民主の新代表が自民党総裁選に影響を与えた可能性は高いと思います。

安倍元総理のライバル

石破氏にとっては5度目の挑戦悲願の総理大臣です。
目の上のたんこぶだった党内のライバルの安倍元総理は死に、
その影響力下にあった最大派閥の安倍派も裏金疑惑と共に追放されました。

対する立憲民主の野田新代表は安倍元総理の弔辞を読んだ
これまた安倍総理の野党ライバルでした。
野田元総理は民主党政権最後の総理で、自民党が政権を奪還した時の総裁が安倍氏でした。
まさに安倍元総理のライバル同士で論戦が行われることになります

自民党トップがリベラルで立憲民主党トップが保守という逆転現象は
まさに今のアメリカの共和党と民主党を見ているようです。
日本の政治が一つの転換期を迎えたことは明白でしょう。

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